国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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スカイとレモネ編

ウエストリバー帝国

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「ほぅ。リチャードが竜と…。」

王の間で、ウエストリバー帝国の陛下はララ=ウエストリアはほくそ笑んだ。
帝国に戻り、父親であるウエストリア侯爵に竜のことを報告した。

そしてすぐさま、侯爵は陛下との謁見をセッティングしたのである。



ウエストリバー帝国は、科学研究が発達し、工場が立ち並ぶ。
しかし、最近では国を覆う霧が晴れず、国民は咳が止まらず、病が蔓延している。
それは、平民、特にスラムや下層の国民に特に現れた。

おそらく、この霧が影響しているだろう。

工場が排出するものが悪いのかもしれない。


そこまでは分かっているから、富裕層や王族貴族は窓を閉め切り、工場とは距離をおいて、なるべく郊外で生活している。

だが、それでも健康被害は少なからずある。


第一王子は、害を出さないような製造工程を研究しており、第二王子は汚染を浄化する研究をしている。
そして、第三王子は、国民を癒したいと、反対を押し切って【呪われた地】へ留学したのだ。


「まさか呪われた地に竜がいるとは。しかも、リチャードと恋仲とはな。ふふっ……。」



「ノースリーブ王国が逃がした竜の子かもしれませんね。竜は警戒します。飛べるので、捕えようとしても難しいでしょう。婚姻を許すふりをして、捕えましょう。王子妃にする必要はありません。」

「陛下、その竜の鱗は金でしたわ。竜の姿は黄金の竜でしょう。装飾品としても素晴らしいでしょうし、我が国の権威もますます高まるというものですわ。」

絶対に、あれとリチャードを結婚させるものか。ララのお腹の中では薄暗い思いが渦巻く。



「竜の涙は万能薬。血は不老不死の薬。従わせればその戦力は計り知れぬ。捕えて、傀儡にしてしまうか。リチャードが連れてくる日が楽しみだ。」



くっく、と謁見の間で低い笑いが響く。









「お父さん、お母さん。僕は愛する人を見つけました。」

帰宅したスカイは、キラキラした笑顔で両親の下へ走った。

丁度、夕ご飯の支度をしてる最中。


竜神の住まいには、使用人みたいな人たちはいるが、みんなで用意してみんなで食べる。

それは、両親が望んだことだ。


「愛する人?おめでとう。それで、誰なの?」


「人間なの。お父さんの故郷に留学に来ている人で…、お父さんがお母さんにしてくれたみたいに、彼も人間を辞めてくれるって!お父さんみたいに、薬の研究をしているの!きっとお父さんとも話があうと思う!」


シャイナとグランドは顔をみあわせ、困惑混じりに眉を寄せた。


「………スカイが思っているほど、簡単なことじゃないんだよ。お父さんは成功したけど、もう少しで危なかったんだから。お母さんは、本当はお父さんにそんな危険なことをしてほしくなかった。だけど、そうするしか結ばれる方法はなくて、お母さんも祈りながら体が造り替わっている最中のお父さんの側にずっといたんだ。」

両親の話と結果だけを見て、夢をみている子どもに釘を刺す。

「私の場合、既に両親も兄弟も亡くなっていたからね。人間を辞めたって捨てるものはなかった。だけど、その子はどうなんだい?あれは、本当に人間だったときの縁を捨てられる人じゃないと失敗する可能性が高いと思うよ。もし、それで彼が儚くなってしまっても、スカイは後悔しない?」

別に息子の恋を否定しているわけではない。
けれど、経験から…。すべてをきちんと理解した上で、覚悟してのことならとグランドは思った。


しかし恋で頭が沸騰しているスカイには、二人の言葉が自分たちを受け入れないものだと感じてしまった。



「…………お父さんもお母さんも、応援してくれないの?もう、いい!!僕、もうこの家に帰らないから!」


「ちょっと、スカイ!」

両親が止める間もなく、スカイは黄金の竜になって飛び立つ。



「うわぁ!」

風圧で、食堂に向かっていたプラチナが尻もちをついた。


「兄さん何があったの!?」



――――――両親から顛末を聞いたプラチナは、すぐさま白銀の竜になって飛び出した。
向かう先は、人間の街ではない。






(イエローさんに伝えなきゃ…!)



賢い弟は、ずっとそばで二人を見てきた。

近くにいすぎて兄は気づかないだけ。

兄は両親のなれそめに憧れていた。
だから……。



プラチナは、こんなふうに飛び出した兄が幸せになれるとは、とても思えなかった。

その行為が兄の望むことじゃなかったとしても、お節介だとしても、そう行動せずにはいられなかった。


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