国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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新婚編

久しぶりの人間の街

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「嬉しいです、光栄ですっ!グランド様と一緒に商売できるなんて!」

「ごめんね、ちょっと馴染みのところあちこち回っちゃうけど。」


イエローと人間界に降りて、商売をしていた場所を回りながら、各地の特産や、どの町が何を欲しがっているか教えていく。

こちらから仕入れるのは、加工品や調度品。

竜が山で育てた蚕で作ったシルクの織物は、とても高く売れる。

スカイへ玩具も買っていこう。



私は、本来ならばとっくの昔に卸すはずだったキャビアの缶詰を卸すために、なじみの店へ来た。



「あぁ!久しぶり!最近見なかったからどうしたのかって思ってたんだよ!」

初老の店主は、豪快に私の肩をたたいた。


「これ、キャビアの缶詰。」


「ありがとう、これ人気なんだ。」


缶詰を受け取った店主が、身を乗り出す。



「そういえば、おかしな噂が独り歩きしてるが、どうなんだ。」


「噂?」

「グランド、お前最近新聞読んでないのか?どうかしてるぞ。ノースリーブ王国が滅びたのは分かるか?」


「それは知っている。だが、まだ行ってない。最後に回ろうと思って…。」


「あの国に竜がいたらしいんだが、どうやら迫害してたらしい。竜の怒りとやらで、国中がぼろぼろになって王族や貴族たち、あと教会の司教だかなんだかが死んだ。ところが、旧メディカル王国は無事だったようなんだ。迫害された竜をお前が助けていたからその地区だけ救われたんだって、噂になってる。それで、今あの国は…国と言っていいのか分からんが、国として機能してなくてな。お前を王にしたらいいんじゃないかって。お前、探されているぞ?」


自分の故郷の人たちが無事なのはホッとした。

だが、どういうことだ。


「近隣国は併合しないのか?」

「竜の怒りを買って滅ぼされたような国、恐ろしくて併合できるわけないだろう?今、あの国は酷い有様らしい。まあ、忠告する。あの国にはもう近づかないほうがいいよ。」








店を出て、イエローと物陰で話をする。

「……国が滅んだのはルフレ様経由で聞いていたが、どういうことだろう。」

「ルフレ様はいくら憎いからってそんなことしない。命令も出さないよ。アーサーだろうな。あいつは竜神様に成り代わりたがってた。あいつ自身もあの国に潜入していたから思うところもあったんじゃない?シャイナ様は自分のものだと思っていたのだろうし。」

成程。最初に浜辺で会った直後のことだと考えれば、旧メディカル王国が無事だったのは分かる。

私が手を引いたから、そのご褒美、ということなのだろう。



「どうする?行く?」


「ちょっと支援物資を買って、持っていこうと思う。」


「うん、変装して行こう。いざとなれば俺がついているから大丈夫だよ。離れないでね。」




2人は市場へ再び向かった。
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