国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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新婚編

あまいあまい

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温暖な南の島にある奥深い山には、太古からある巨木の密集する森がある。

豊かな水源に恵まれ、鳥たちが囀り、生き物の楽園と呼べるその森は、足を踏み入れたら最後、出ることはかなわないと言われる。


方向感覚が狂い、気が付けば元の場所に帰ってしまうそこに入り込んで、目的地に進めた者は聞いたことがない。


人々が畏れ、立ち寄らない、魔の森である。





しかしそここそが、御伽噺となった竜たちの住処。

竜は普段人間の姿をとり、たまに人に紛れているという。

色とりどりの体の色をした竜たちが、竜神を頂に持ちながら、幸せに暮らしている。



そして、そこでは若い次代の竜神と、彼を愛する元人間の青年が、今日も愛を囁いている。





「私たちの卵、だいぶ大きくなったね。」

生まれたときは鶏の卵くらいだったものが、今では両手で抱きかかえるほどになっている。

「えへへ…。グランド様に似た子だったらいいなぁって思います。」

お城の庭で日差しを浴びながら、シャイナは笑っている。


ダスティ、が良い名前でなかったから、そこから少しもじってつけられた『ティア』という可愛い名前はグランドがつけたものだったが、親がつけてくれた名前がいいだろうと、グランドも『シャイナ』と呼ぶようになった。

輝くばかりの笑顔と美しさは、まさにシャイナ。



シャイナは、人間の世界では鱗塗れの肌が汚い、化け物、醜いと罵られた子だったが、成人して完全に人型をとれるようになれば、絶世の美女とはかくやと言わんばかりの美人になった。

もっとも、グランドは鱗があっても美人だと思っていたが。


2人で寄り添いながら、ずっと愛しい卵を見つめて撫でているその様子を、シャイナの両親であるルフレとラスターは眩しく見つめる。


「竜の卵ってどのくらいで生まれるんだろうね。寿命が長いから、卵の時間も長いのかな。」



「もうすぐだよ。」

ルフレに肩を抱かれたラスターが声をかけた。

「シャイナもこのくらいだった。攫われたのは、殻を割る直前だったからね。今晩にも孵るかも。」


「わぁ!そうなんですか!」

赤ちゃん、やっと会えるね。

シャイナは喜びが隠せない。



その晩は卵の前に飲み物やら軽食やらを用意して、ルフレもラスターも毛布にくるまって待機。



深夜三時にぴし、っとひびがはいって、ゆっくり、赤ちゃんが産まれてきた。




ミルクティー色の柔らかい髪の色をした可愛い赤ちゃんは、確かに竜で、かわいい鱗がついている。


「可愛い…。僕の、僕たちのあかちゃん…。」

「初めまして、私たちが君のパパとママだよ。」


「みー」


「ああ、なんてかわいい鳴き声だろう。私がじいじだよ。」

「私がばあばだ。ああ、なんて可愛い。」



両親や祖父母に囲まれて、祝福されて生まれてきた。



それがとても嬉しくて嬉し泣きしたのを、グランドはキスで甘やかした。


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