国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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繭の中

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「………ランド、グランド。」

懐かしい声。


優しい声にまさか、と瞼を開ける。



「お母様。」


金髪に菫色の瞳。たれ目がちな大きな目を不安げにして、お母様がそこにいた。



そんなはずはない。

自分は26歳のいい年をした大人だ。

この国は滅びて、母も亡くなったはずだ。

愛しいティアのため、生まれ変わるためにティアの血を飲んで、今は試練に耐えている最中のはずだ。




これは、夢?




「かわいそうに。魘されていたのよ。貴方の侍女が呼びに来たの。………怖い夢を見たのね。」


メディカル王国は王国と言っても小国で、王族と言ってもそれほど格式は高くなかった。
子どもが魘されれば王妃が自ら様子を見に来てくれるくらいには。

そうだったな、と思いだす。


「明日は13歳のお誕生日ね。国民も貴方の誕生日をお祝いしてくれるわ。だから、安心してお休み。」

そういうと、お母様は僕の瞼にキスをして、寝かせてくれた。


怖い夢を忘れさせる、安眠の魔法…。



どういうことだろう。


確か、13歳の誕生日にあいつらが攻めてきたのだ。


国民を守る代わりに、お父様もお母さまもお兄様も命を差し出した。


僕だけを逃がして…。





過去に巻き戻ったとでもいうのだろうか。


それとも、これは夢なのだろうか。


今までのことが夢で、こっちが現実なのだろうか。




だんだん、曖昧になっていく。








「おはよう、グランド。お誕生日おめでとう。今日はグランドが主役だからな、お兄様のブローチを貸してやろう。」

金髪で菫色の瞳の、お母様に似た色合いのスカイ兄さまは、このとき既に19歳になっていて、次期王になることが決まっていた。

婚約者はいないが、それに近い幼馴染の女の子がいて、仲が良かった。


ああ。その子は兵士に乱暴されそうになって、お兄様を偲んで死んでしまったのだ。

「ん?どうした。嬉しくないのか。暗い顔をして。」


「……いいえ。」



「グランドは緊張しているのね。大丈夫ですよ、お母様がおまじないをかけてあげます。」

お母様は魔法が得意だったな。


色んな魔法をお母さまから習ったんだっけ。

その後、生きていくのに、魔法はとても助かった。


「皆から祝いの品を貰う前に、私から誕生日プレゼントを贈ろう。マジックバックだよ。」
お父様が、包みを渡してくれる。

教育や施政には厳しくて、だけど優しいお父様。



「あ、ありがとうございます。」


「なんだ、驚かないのか。残念。もっと飛び上がって喜んでくれると思っていたのに。」

皆からの祝いの品はロビーに積まれているから、確認したらマジックバックに入れておきなさい。

そういって頭を撫でてくれた。



温かい。

この温もりが夢なのだろうか。
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