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竜神になりたかった男

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「は……。」


「アーサー…。まさかお前が……。」


静まり返る中、アーサーは大きな黒い竜に変化する。


「まさか、ここでバレるなんてな!骨なんか残さず処分しとくんだった!」

アーサーは権力欲の塊だった。
竜神の卵を攫い、自分の番として、自分の好みに育てて、甘やかして、自分だけを愛するように、依存するように、次代の竜神を育てるつもりだった。

竜神とその番には毒でも盛って、少しずつ弱らせて殺せばいい。
竜の力は竜には効かない。
竜の涙や血をもってしても、仲間を助けることはできない。



本当は自分が竜神になりたかったが、種の違いだけはどうにもならないから、竜神の番として君臨するつもりだった。


卵の場所が分からなくなり、竜神のために探しに行くという体で人間の国に降りた。


見つけた子を、ようやく手に入れられるところだったのに…。




「お前はやはり殺しておくんだった!」




グランドを踏み殺そうとしたとき、弱っているはずの竜神が動いた。


純白の竜神とその番は、可愛いシャイナのため、自分たちから子を奪った本当の犯人から子の愛しい人を守るためにアーサーを噛んだ。


「う…、ぐぅぅああ。」

アーサーは身をよじって振り払い、竜の国を逃げるように飛び立っていった。





「お父さん!お母さん!」

体力を使って、どぉんと大きな音を立て、床を揺らし、倒れた両親にティアが縋る。

「シャイナ。お前が無事で、それがなにより…。」

「お前の大切な人を紹介しておくれ。」



グランドは、竜神の前に膝をついた。

「グランドと申します。」


「………グランド。私たちはできれば、そなたを我が子の伴侶として認めたい。だが、今のままでは寿命が違いすぎる。試練を受けるつもりはあるか?」

「私たちは長くない。だからこの子の伴侶には、長く寄り添ってもらいたい。」



グランドはもちろん、と首を縦に振った。


「では、この子の血を飲むのだ。本当なら私の血を飲ませるところだが、この状態だ。よからぬものが混じっているかもしれん。」

「僕の――血?」

「そうとも。竜神の血を飲めば、体が作り替わる。竜神に近しい存在になれる。ただし…。」


作り替わるのに、相当の苦しみを伴う。

命を落とす可能性もあるが、どうする?
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