国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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海の見える街

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ノースリーブ王国に接するシャーク王国を抜け、険しい山の山頂まで飛ぶ。


「グランド様、僕、飛ぶのに慣れてきたみたいです!上の方はちょっと息苦しいし、なんか寒い気がするけど。」

私の魔法で私とティアの体をコーティングして、寒さや息苦しさから守り、移動の間、私はティアに抱っこされる。

守りたい、好きな相手に抱っこされるというのは、男としてこう情けないものはあるが、仕方ない。

竜であるティアは力があり、私より体が大きいのだから。



山頂についたら、体を休めるところを探す。

追っ手に見つからないように、日中は森の中で休み、夜になったら飛んで、この国から遠く離れた国に行けば、少しは安心できるはずだ。




ティアが竜だからだろう。
森の中で、不思議と魔物や獣は襲ってこなかった。

ティアと一緒だと虫さえ寄ってこない。


だが、魚を釣ればちゃんと釣れた。


山奥で生活しても問題はないのかもしれない。

だけれど、私は彼にそんな生活をさせたかったのではない。

人並みに学び、友達を作り、普通の暮らし。

広い世界を見せてやりたいと思っていた。



それは、私の生まれゆえなのかもしれない…。




私はノースリーブ王国に戦争で滅ぼされた亡国の王子だった。

国と言っても小さな小さな、それはもうのどかな小国で。

豊かとは言い難いけど、幸せな国が私は好きだった。

父も母も兄も亡くなり、たった一人生き残って。それでも、かつての国民が幸せに暮らしているのを願いながら、行商人として国を回った。

行商人を始めた頃は、13歳くらいだった。

私は教育を受けていたし、王族に生まれて栄養状態も良かったから、大人を装えば、不思議と大人に見えた。


正体を隠し、たった一人。生き残った後ろめたさを感じながら、一般人になったのに普通の暮らしに馴染むことができない。

誰にも、心の内を明かすことができない辛さ。



そんな毎日で、あるとき行商で通りかかった教会に、ティアがいた。

同じ年頃の子どもたちが鬼ごっこをしたりして遊んでいる中、ぽつんと仲間外れにされていた、小さな布の塊。


「どうしたの?」


声をかけると、ティアは驚いて私を見た。


「おじさん、そいつに近寄るとビョーキ移るから、近寄らないほうがいいよ!」

「肌に鱗がはえてて、気持ち悪いの!」

「汚い子だから、ダスティって言うんだよ!」


遠くから子どもたちが囃し立てるように言う。


そのうち、教師に呼ばれて、子どもたちは屋外で勉強を始めた。



ティアはいかない。


「君はいかないの?」


「うん、僕。病気だから。勉強はね、貰われていく子がするの。僕は汚いからどこにももらわれない。だから、いいの…。」



「………あの子たちや周りの人が憎くはない?」


「どうして?僕は、生きていられる。育ててもらえているだけ良いと思う。僕、もらわれないから、ずっとここだから、もう少し大きくなったら教会の仕事を手伝うんだ。外に出たり、人と会うのは出来ないと思うから、お掃除とかそういうの、出来たらきっと少しはご恩が返せるんじゃないかって。」


あの時、君の心のまばゆさに惹かれたんだ。

8つも年下の子どもに惹かれるなんてね。




「はふ、はふ。」



焚き木で焼いた川魚をティアが頬張る。

「落ち着いてお食べ。足りなかったら私の分も食べればいい。君は成長期だからね。」



そういうと、ティアはしゅんとなった。


「これ以上、大きくなるのはいいです…。だって、可愛くないし…。」


「大きくてもティアは可愛いよ。そんなこと気にしないで。元気がない方が心配だよ。」

ほほ笑むと、はにかむように笑った。



そのふっくらした唇にキスがしたい。


私がそんな邪な思いをもっていることを、この純粋な子にはまだ知られたくないな。


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