国で一番醜い子は竜神の雛でした。僕は幸せになれますか?

竜鳴躍

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僕は醜い子

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どうして僕だけ、こんな風なのか分からない。


顔にも体にも、全身に固い鱗のようなものが生えているの。


銀色の髪の毛は刃みたい。

金色の目は猫みたい。


僕は国で一番醜い子。




醜いからきっと捨てられたんだって。



「ダスティ!ダスティ!もう仕事は終わったのか?巻き割りが終わったら草むしりをやっておくれ。」

「はい!」




僕は、教会で育った。

他の孤児と一緒に育ったけど、『汚い=ダスティ』なんて名前を付けられて。

ああ、でもそのとおりだもの。

みんな、僕がなんかしらの先天的な皮膚病だという。僕もそうだと思う。
移るかもしれないから、僕はいつも肌を隠している。


手には手袋、顔にはヴェールを被って。



薪を薪置き場に積んで、僕は草むしりを始める。

孤児の子どもたちは楽しそうに遊んでいる。

子どもはずっとここで暮らすわけじゃない。

みんなそれぞれ、どこかにもらわれていった。

僕は醜いから、引き取り手は現れず、だからこうして成人しても教会で下働きをしているのだ。


醜いけど、体は強い。身長も伸びて、180㎝くらいはある。力もあるから、役に立てる。

それはいいことだ。





ぐっと力を入れて、根っこから引っこ抜く。

だいぶこのへんの雑草を抜くことができた。

「……っしょ。と「ティア。」」


ん?


顔をあげると、僕の大好きな人がそこにはいた。


「ティアはいつも一所懸命だね。えらいね。はい、お土産。」


行商人のお兄さんのグランド様。

僕がまだ小さい頃から出入りしている人。

ミルクティー色の髪とたれ目気味の瞳が優し気な素敵な人。

僕より頭一つ分くらい小さいけど、絞まった躰はバランスがとれてカッコイイ。

それに、こんな僕にも優しくしてくれる。

素敵な人。


「なんですか?」


手渡しされた包みを広げると、そこには甘いお菓子。きらきらしてて、星みたい。


「お砂糖の御菓子だよ。金平糖っていうんだって。疲れたときにお食べ。」


「ありがとうございます!」



「じゃあ、私は司祭に品物を納品してくるね。しばらくこの町に滞在しているから、また来るよ。」

そういって大きな荷物をしょっていく姿を、僕は見えなくなるまで追い続けた。









皮膚に何か鱗のようなものがあるからなんだというのだろう。

私にもっと力があれば、彼をすぐに連れだせたのに。

確かに肌に異物はあるが、彼はものすごく愛嬌のある可愛らしい顔をしていると思う。

でも、今回こそ。


「司祭さま、これが今回の分です。これで、司祭様がおっしゃった1000ダリラですよね。あなた方がダスティと呼んでいる彼を、引き取らせてください!」


この司祭は、孤児を人身売買している。
悪いことだと思うが、私には力がない。

だから、お金を稼いで、分割払いで彼を買う。

だって、みんなに汚い、醜いと罵られて、見ていられない。あんなに可愛らしい良い子が。

きれいな服を着せて、甘やかしてあげたい。教育をうけさせてやりたい。


司祭はじっとお金をみて、つきかえした。



「!?」


「いやああ、残念ですな。つい先ほどあの子がほしいと、とある大金持ちの方が一括で2000ダリラ支払いになりましてね。」



「君もあの子を欲しかったのかね?まあ、なかなか見る目がある。だが、残念だったな。あれは私のものだ。あの子は金になる。」

奥から葉巻を咥えた柄の悪い男が現れた。



――――――見世物小屋のオーナーじゃないか。

グランドはぐっと拳を握る。




あの子が不幸せになるのは許せない。

私があの子を守る。守らねば。







その頃、仕事を終えた僕は、金平糖を一粒口に入れてその甘さに感動しながら、グランドさんにまた会えるのを楽しみにしていた。
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