王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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いつまでもあなたとともに前編

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「フワはしばらく見ないうちに大人になったなぁ。」


「…そんなこと、ない。」


一緒にお風呂に入って、僕の毛並みを嬉しそうにブラッシングするオニキス。

お互いの裸だって見慣れている。

今更、隠すことなんてないくらい。


オニキスは、僕に欲情したことなんてない。

本当に僕のことをお嫁さんにしたいって思っているのかな。



オニキスの腕はずいぶん太くなったし、胸や足の筋肉もたくましくなった。

あちこち見える刀傷の後は、訓練の痕。

その気になれば治せるんだそうだけど。男らしくてかっこいいから直さないんだって。
意味が分からない。


「…ねえ、オニキスは本当に僕のことをお嫁さんにしたいって思ってるの?」


「そうだよ。なんだか、お姉さまが産むお兄様の子の誰かが、自分のお嫁さんなんだって、思っちゃったんだ。生まれたフワの顔を見て、この子だって思ったんだよ。運命だって。そのままユートピアでは生きられない命だって聞いて、そのまま連れて帰って来たんだ。」

「その割には、こんなふうに一緒にお風呂に入ってくっついていても、僕に欲情してくれたことないじゃない。」


「…してほしいなら、するよ?」


「嘘。そんなふうにコントロールできるものじゃないんでしょ。」


「俺は自制心が人より強いんだよ。だって、フワ、まだ発情期来ていないでしょ?発情期もまだの子に欲情するわけにはいかないよ。」


「……そんなのっ、詭弁だっ。」




僕の服もヘアスタイルも、ずっとオニキスが決めてる。

僕はオニキスのお人形なんでしょ。


僕が違う姿になっても、僕を愛してくれる?



「もう僕、オニキスのお人形をやめるんだから。今日はオニキスと寝ない!」


枕を持って、僕はお義父さまとお義母さまの部屋に向かった。








「ふわ?」


つんとする。

もう僕は、オニキスの思い通りにならないぞ。

腰まで伸ばした長い髪を襟足で切った。


「行ってきます!」




学園へ向かう馬車の中で、本当に彼が自分を愛してくれるなら、きっとどんな髪型でも愛してくれる。

今夜も変わらず抱きしめてくれれば。

と、思っていた。



どくん。



どくん。



なんだろう、今日は鼓動が激しい。


熱っぽくなってきたかも。


風邪かなあ。

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