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国際会議とパーティー3
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「……まあ! あれが!」
「とても魔物とは思えませんわ!」
各国の要人たちが注目する中、城に現れたのは白銀の艶やかな耳と尾に、光沢のある白に金糸の縁取りの入ったスーツと毛皮のようなもこもこマントを羽織った、若く精悍な青年王と、彼にエスコートされた美貌の貴婦人、そしてその後ろに控える白い耳と狐の尾を持つ黒のスーツの洗練された3人だった。
人間の王族貴族と同様に、エレガントな雰囲気で、挨拶をする。
「魔物の国、ユートピアの王・クロウ=プラチナと申します。よろしくお願いいたします。」
「まぁ、あなた。娘のデビュタントで確か…。」
「はい、数年前、こちらに留学しておりまして。」
人間のように穏やかで品のいいクロウに、各国も安心したのかほだされていく。
特にクロウとシロの二人はとてもかっこよく、参加者の女性陣に評判がいい。
「クロウは、前の魔王を倒すために帝国で修業をしていたんだよ。」
「その節は息子がお世話になりました。こんな立派にしていただいて…。」
クロウのお母さんが泣いて、俺はハンカチを差し上げた。
「今の魔物の世界は、知能があり、会話ができる魔物については、人間と殆ど変わりません。人間の世界を参考に法律を作り、組織を作って取り締まっています。人間を襲うことも禁止にしました。」
「クロウさん、でもまだ世界には魔物の襲撃があるようだが。」
「人間にも近類種がいますでしょう?人間と猿くらいの差が、会話ができる魔物と、そうでない魔物との間にはあります。こちらも人間にご迷惑をかけないよう、境界からそちらへ行かぬよう注意はしていますが、どうしてもまだ漏れがあるようです。また、人間に悪人がいるように、魔物にも悪人がおります。そういった者たちの仕業でしょう。徐々にではありますが、どうにかしていく予定です。」
俺とキールは、立派になったクロウに目を細めて、安心してみていた。
ダンスも、テーブルマナーも完璧。
ともに連れてきた母親も、シロという狐の彼も、相当練習したのだろう。
彼らが上品で文化的な行動ができたから、これで、魔物=みんな怖い、下品、野蛮というイメージは払しょくできたはずだ。
安心してみていたら。
『ぐぇ、グェエエエエエエエッ!! キュイイイイイイイイイ!』
「キャアアアアアアアアアアア!」
「どうなっているんだ!?」
「やっぱり、魔物の国となんてうまくいかないのよ!」
「帝国のせいだ!」
突然会場に、龍が現れた。
「クロウ! 魔物のことはお前が自分でやれっ!」
俺はクロウに命ずる。
「オッケー、アルフォンス!」
クロウは腰から剣を抜き、雷を付与する。
「シロはお母さんと他のみんなを隔離して!」
「わかった!」
「……お前、目の焦点があってないな。興奮させられてるのか。悪いな、ちょっと痛いぞ。」
『グェエエエエエエエエ!』
羽ばたき、会場が風で揺れる。
俺は魔物の王。
こんなの、すぐに。
すぐに片づけられないで、何が王か。
クロウは、風の抵抗に負けないよう、自分でも風を出して打ち消すと、跳ねた。
一瞬で、脳天に衝撃を入れ、竜が倒れる。
「皆さますみませんでした。すぐに…。」
「やっぱり、みんなを襲わせる気だったんだろう!」
「油断させてっ…!」
「魔物とはやっていけない!」
打って変わって、悪い言葉が浴びせられる。
「くっ……。」
「クロウ、もういいよ。帰ろう。」
シロに背を撫でられて。
「お待ちください。」
その時、凛とした女性の声が響いた。
「アリステラ!」
「アルフォンス妃殿下、国境からの怪しい動きはありませんでしたが、こちらへのドラゴンの襲撃が見えましたので、はせ参じました。」
恭しく、騎士の礼をする。
「アリステラ…。綺麗になった。」
「話はあと。」アリステラは周囲の王族貴族に向き直る。「このドラゴンに時の魔法をかけ、来た方向に戻します。それが、クロウ達によるものか、はたまた真犯人は別にいるのか。ユンス、あなたの映像魔法を貸してください。このドラゴンを映像で追って、みなさまにそのままお見せしたいわ。」
片隅に控えていたユンスがオッケーのサインを出す。
あのとき、あなたに私は助けてもらったわ。
そして今がある。
今度は私が貴方を助ける番。
「とても魔物とは思えませんわ!」
各国の要人たちが注目する中、城に現れたのは白銀の艶やかな耳と尾に、光沢のある白に金糸の縁取りの入ったスーツと毛皮のようなもこもこマントを羽織った、若く精悍な青年王と、彼にエスコートされた美貌の貴婦人、そしてその後ろに控える白い耳と狐の尾を持つ黒のスーツの洗練された3人だった。
人間の王族貴族と同様に、エレガントな雰囲気で、挨拶をする。
「魔物の国、ユートピアの王・クロウ=プラチナと申します。よろしくお願いいたします。」
「まぁ、あなた。娘のデビュタントで確か…。」
「はい、数年前、こちらに留学しておりまして。」
人間のように穏やかで品のいいクロウに、各国も安心したのかほだされていく。
特にクロウとシロの二人はとてもかっこよく、参加者の女性陣に評判がいい。
「クロウは、前の魔王を倒すために帝国で修業をしていたんだよ。」
「その節は息子がお世話になりました。こんな立派にしていただいて…。」
クロウのお母さんが泣いて、俺はハンカチを差し上げた。
「今の魔物の世界は、知能があり、会話ができる魔物については、人間と殆ど変わりません。人間の世界を参考に法律を作り、組織を作って取り締まっています。人間を襲うことも禁止にしました。」
「クロウさん、でもまだ世界には魔物の襲撃があるようだが。」
「人間にも近類種がいますでしょう?人間と猿くらいの差が、会話ができる魔物と、そうでない魔物との間にはあります。こちらも人間にご迷惑をかけないよう、境界からそちらへ行かぬよう注意はしていますが、どうしてもまだ漏れがあるようです。また、人間に悪人がいるように、魔物にも悪人がおります。そういった者たちの仕業でしょう。徐々にではありますが、どうにかしていく予定です。」
俺とキールは、立派になったクロウに目を細めて、安心してみていた。
ダンスも、テーブルマナーも完璧。
ともに連れてきた母親も、シロという狐の彼も、相当練習したのだろう。
彼らが上品で文化的な行動ができたから、これで、魔物=みんな怖い、下品、野蛮というイメージは払しょくできたはずだ。
安心してみていたら。
『ぐぇ、グェエエエエエエエッ!! キュイイイイイイイイイ!』
「キャアアアアアアアアアアア!」
「どうなっているんだ!?」
「やっぱり、魔物の国となんてうまくいかないのよ!」
「帝国のせいだ!」
突然会場に、龍が現れた。
「クロウ! 魔物のことはお前が自分でやれっ!」
俺はクロウに命ずる。
「オッケー、アルフォンス!」
クロウは腰から剣を抜き、雷を付与する。
「シロはお母さんと他のみんなを隔離して!」
「わかった!」
「……お前、目の焦点があってないな。興奮させられてるのか。悪いな、ちょっと痛いぞ。」
『グェエエエエエエエエ!』
羽ばたき、会場が風で揺れる。
俺は魔物の王。
こんなの、すぐに。
すぐに片づけられないで、何が王か。
クロウは、風の抵抗に負けないよう、自分でも風を出して打ち消すと、跳ねた。
一瞬で、脳天に衝撃を入れ、竜が倒れる。
「皆さますみませんでした。すぐに…。」
「やっぱり、みんなを襲わせる気だったんだろう!」
「油断させてっ…!」
「魔物とはやっていけない!」
打って変わって、悪い言葉が浴びせられる。
「くっ……。」
「クロウ、もういいよ。帰ろう。」
シロに背を撫でられて。
「お待ちください。」
その時、凛とした女性の声が響いた。
「アリステラ!」
「アルフォンス妃殿下、国境からの怪しい動きはありませんでしたが、こちらへのドラゴンの襲撃が見えましたので、はせ参じました。」
恭しく、騎士の礼をする。
「アリステラ…。綺麗になった。」
「話はあと。」アリステラは周囲の王族貴族に向き直る。「このドラゴンに時の魔法をかけ、来た方向に戻します。それが、クロウ達によるものか、はたまた真犯人は別にいるのか。ユンス、あなたの映像魔法を貸してください。このドラゴンを映像で追って、みなさまにそのままお見せしたいわ。」
片隅に控えていたユンスがオッケーのサインを出す。
あのとき、あなたに私は助けてもらったわ。
そして今がある。
今度は私が貴方を助ける番。
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