王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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ルピの両親、襲来

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「ゴールド王国陛下に妃殿下。ご無沙汰しております。ようこそ、クリスタル帝国へ。」



「おお、噂には聞いていたが見違えるくらい美しい国になった。お二人が仲睦まじく治世に励まれている結果ですな。」

港へみんなで迎えに行くと、帝国に負けないくらい大きくて華やかな装飾の船からルピの両親が降り立った。

早速、王同士、キールとダラ陛下はがっつりとにこやかに握手を交わしている。

ルピによく似た風貌の陛下はまだ41歳と若い。
がっしりした体躯は体を大きく見せるけれど、決して太っているわけではなく、いまだ自らも剣の鍛錬を怠っていない結果である。


妃殿下はもう53歳になるとは思えない若々しい方で、花が咲いたようなつばの広い帽子に、上品なドレスをお召しだ。

髪の毛は茶色だけど、瞳の色は翡翠色で、ルピの瞳の色はお母さま譲りなのだろう。


「ご無沙汰しております、サークレット妃殿下。」
俺は、ズボンだけど淑女らしくカーテンシーをするような挨拶をした。
後ろではお母さまとアリステラがカーテンシーをして挨拶をしている。

「アリア…ではなくて、アルフォンスなのでしたね。オフィリア様もアルフォンス様も大変でしたね。今はお幸せそうで何よりです。」

「ありがとうございます。そして、こちらが公爵家から養女に迎えたアリステラです。夫の恩人のお嬢様で、寄る辺もなくされていましたから、引き取りました。」

「お初にお目にかかります。どうぞ、よろしくお願い致します。」

「素敵なお嬢さんね。…このようなお嬢様がうちのルピの妃になってくれたら何も言うことはなかったのですが。」


早速の先制にドキリとする。


妃殿下は気づいているはずだ。奥の方に控えている自分の息子と、その隣にいるアバロンに。


「こちらが出産された王子様ね。顔を見せて頂戴。まあ、なんて可愛い王子さまだこと。ルピが生まれた頃のことを思い出すわ。」


話しかけようとする二人を無視するように、サークレット様は俺の腕の中のオニキスに目をやって、会話を続けた。



「陛下、妃殿下。」


「おお、ルピも元気そうでなにより。共同事業の成果も上々で誇らしいよ。そちらが、話のあったアバロン様かい?
精霊王様を射止めるとは、私の息子もなかなかやりおる。」


ルピが溜まらず声をかけて、でも、返事をしたのは、陛下の方だった。


「陛下!!」

サークレットが声を張る。

「ここは寒うございますわ。早くお城へ伺いましょう。」



「…そ、そうだな。アバロン様は大事な体だしな!」




ピリピリしているのが、俺でも分かる。

お腹に赤ちゃんがいるのに、アバロン様は大丈夫だろうか。



こうなることが分かっていて、既成事実で押し切るために子を持つことを選んだのだから、ルピには責任もってどうにかしてあげてほしい。



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