63 / 87
ルピの両親、襲来
しおりを挟む
「ゴールド王国陛下に妃殿下。ご無沙汰しております。ようこそ、クリスタル帝国へ。」
「おお、噂には聞いていたが見違えるくらい美しい国になった。お二人が仲睦まじく治世に励まれている結果ですな。」
港へみんなで迎えに行くと、帝国に負けないくらい大きくて華やかな装飾の船からルピの両親が降り立った。
早速、王同士、キールとダラ陛下はがっつりとにこやかに握手を交わしている。
ルピによく似た風貌の陛下はまだ41歳と若い。
がっしりした体躯は体を大きく見せるけれど、決して太っているわけではなく、いまだ自らも剣の鍛錬を怠っていない結果である。
妃殿下はもう53歳になるとは思えない若々しい方で、花が咲いたようなつばの広い帽子に、上品なドレスをお召しだ。
髪の毛は茶色だけど、瞳の色は翡翠色で、ルピの瞳の色はお母さま譲りなのだろう。
「ご無沙汰しております、サークレット妃殿下。」
俺は、ズボンだけど淑女らしくカーテンシーをするような挨拶をした。
後ろではお母さまとアリステラがカーテンシーをして挨拶をしている。
「アリア…ではなくて、アルフォンスなのでしたね。オフィリア様もアルフォンス様も大変でしたね。今はお幸せそうで何よりです。」
「ありがとうございます。そして、こちらが公爵家から養女に迎えたアリステラです。夫の恩人のお嬢様で、寄る辺もなくされていましたから、引き取りました。」
「お初にお目にかかります。どうぞ、よろしくお願い致します。」
「素敵なお嬢さんね。…このようなお嬢様がうちのルピの妃になってくれたら何も言うことはなかったのですが。」
早速の先制にドキリとする。
妃殿下は気づいているはずだ。奥の方に控えている自分の息子と、その隣にいるアバロンに。
「こちらが出産された王子様ね。顔を見せて頂戴。まあ、なんて可愛い王子さまだこと。ルピが生まれた頃のことを思い出すわ。」
話しかけようとする二人を無視するように、サークレット様は俺の腕の中のオニキスに目をやって、会話を続けた。
「陛下、妃殿下。」
「おお、ルピも元気そうでなにより。共同事業の成果も上々で誇らしいよ。そちらが、話のあったアバロン様かい?
精霊王様を射止めるとは、私の息子もなかなかやりおる。」
ルピが溜まらず声をかけて、でも、返事をしたのは、陛下の方だった。
「陛下!!」
サークレットが声を張る。
「ここは寒うございますわ。早くお城へ伺いましょう。」
「…そ、そうだな。アバロン様は大事な体だしな!」
ピリピリしているのが、俺でも分かる。
お腹に赤ちゃんがいるのに、アバロン様は大丈夫だろうか。
こうなることが分かっていて、既成事実で押し切るために子を持つことを選んだのだから、ルピには責任もってどうにかしてあげてほしい。
「おお、噂には聞いていたが見違えるくらい美しい国になった。お二人が仲睦まじく治世に励まれている結果ですな。」
港へみんなで迎えに行くと、帝国に負けないくらい大きくて華やかな装飾の船からルピの両親が降り立った。
早速、王同士、キールとダラ陛下はがっつりとにこやかに握手を交わしている。
ルピによく似た風貌の陛下はまだ41歳と若い。
がっしりした体躯は体を大きく見せるけれど、決して太っているわけではなく、いまだ自らも剣の鍛錬を怠っていない結果である。
妃殿下はもう53歳になるとは思えない若々しい方で、花が咲いたようなつばの広い帽子に、上品なドレスをお召しだ。
髪の毛は茶色だけど、瞳の色は翡翠色で、ルピの瞳の色はお母さま譲りなのだろう。
「ご無沙汰しております、サークレット妃殿下。」
俺は、ズボンだけど淑女らしくカーテンシーをするような挨拶をした。
後ろではお母さまとアリステラがカーテンシーをして挨拶をしている。
「アリア…ではなくて、アルフォンスなのでしたね。オフィリア様もアルフォンス様も大変でしたね。今はお幸せそうで何よりです。」
「ありがとうございます。そして、こちらが公爵家から養女に迎えたアリステラです。夫の恩人のお嬢様で、寄る辺もなくされていましたから、引き取りました。」
「お初にお目にかかります。どうぞ、よろしくお願い致します。」
「素敵なお嬢さんね。…このようなお嬢様がうちのルピの妃になってくれたら何も言うことはなかったのですが。」
早速の先制にドキリとする。
妃殿下は気づいているはずだ。奥の方に控えている自分の息子と、その隣にいるアバロンに。
「こちらが出産された王子様ね。顔を見せて頂戴。まあ、なんて可愛い王子さまだこと。ルピが生まれた頃のことを思い出すわ。」
話しかけようとする二人を無視するように、サークレット様は俺の腕の中のオニキスに目をやって、会話を続けた。
「陛下、妃殿下。」
「おお、ルピも元気そうでなにより。共同事業の成果も上々で誇らしいよ。そちらが、話のあったアバロン様かい?
精霊王様を射止めるとは、私の息子もなかなかやりおる。」
ルピが溜まらず声をかけて、でも、返事をしたのは、陛下の方だった。
「陛下!!」
サークレットが声を張る。
「ここは寒うございますわ。早くお城へ伺いましょう。」
「…そ、そうだな。アバロン様は大事な体だしな!」
ピリピリしているのが、俺でも分かる。
お腹に赤ちゃんがいるのに、アバロン様は大丈夫だろうか。
こうなることが分かっていて、既成事実で押し切るために子を持つことを選んだのだから、ルピには責任もってどうにかしてあげてほしい。
3
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる