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時は残酷
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「ふふっ。私の美しさに圧倒されているのかい!?」
魔王がシナを作る。
アルフォンスは気がついた。
ここには鏡がない。
もしかしたら、魔王は自分の老いを気付いていないのか。
若い時間が長く、何百年も生きる魔物も、それでもいつか年を取る。
片隅には蜘蛛の魔物の青年がガタガタ震えている。
魔王が恐ろしくて、色が褪せたことなど気づかせられず、鏡を除いたのはあの蜘蛛の彼なのかもしれない。
「クロウ。やれるね?クロウが魔王になるなら、クロウが倒すんだよ。」
「こちらへの守りは私たち自分でやりますから。」
「うん、やる。」
クロウは拳に力を込め、両手に剣を持った。
落ち着いている。
怖くない。
「ふふふ、裏切り者め。まずはお前から食ってやろう。」
魔王は、その背から7枚の翼を生やし、7本の触手を生やした。
触手は、アルフォンスたちやクロウに向かってくる。
無詠唱バリア展開!
アルフォンスが自分たちを守るようにバリアをはった。
腕の中のオニキスは眠っている。
守らなきゃ。
食べさせてなるものか。
「ストップ!」
「凍結!」
「 」
アリステラとルピがそれぞれの魔法で触手の動きを止め、キールが切り刻んで魔法で壊死させる。
「私やオフィリアの出番はなさそうだね。」
「アバロンは大事な体なのですから、大人しく守られてくださいね。」
ルピが頼もしい。
「ちいっ!」
触手の痛み。
ひとりひとりがかなり強い。
食べれば相当強くなれるだろうが、隙がない。
「どっちを見てるっ!」
風の魔法で移動速度をあげ、羽を生やしたクロウは、雷を乗せた剣で頭上から魔王を斬り裂いた。
「ギャアアアア!馬鹿なっ!はやいっ!」
食べるためにまとめて連れてきたせいで、広範囲魔法を使うのは躊躇われた。しかし、そうもいってはいられない。
ズズズッと、魔王が男に変わる。
「グレネードっ。フレイムヘル!!」
魔王の手から、豪炎が放たれ、一面に弾けた。
「くくっ。」
目の前に狼はいない。焼けたか。
獲物はバリアで無事のようだ。
しかし、時の魔法を持つ若い女といい、かなりの粒揃い。
美味しくいただこう。
カツンカツンと近づく。
背後から一閃。
「ギャアアアアッ!!!?」
クロウの雷の爪と風の爪が魔王の肉を裂き、くい込み、肉を千切った。
「はうわ、あわ、っ」
魔王の体の中で雷と暴風が吹き荒れる。
よろめきながら、ルピの出した氷柱にぶつかって、魔王はさらに叫んだ。
「なんでっ、これが私?! 嘘だっ。」
魔王の背後で千切れた肉をクロウは食べる。
これでクロウは完全に上位。
「魔王。美貌なんていつか失うものだ。誰にでも老いはくる。」
憐れだな。アルフォンスは呟いた。
「嫌だああ!! 私は誰よりも美しいんだ!」
「アルフォンス(アバロン)(アリステラ)の方が美しい!」
「くそお、くそう!こうなったらその時の娘を食ってやる! 時の魔法で永遠の若さを!」
「いやあああ!!」
「アリステラ!」
クロウが助けようと手をのばした瞬間。
アリステラの時の魔法が弾けた。
「ギャアアアアッ!」
いやだ、いやだと呟く魔王の髪は白く。
時の魔法で更に老いが進み。
ただ年を取って本性の醜さが姿に現れる。
そして、クロウが雷で焼き切って。
焦げて炭になって、魔王だったものは消えた。
「やったね。クロウ。魔王になった。」
「ありがとう。」
「おめでとうございます。」
クロウはアリステラに微笑んだ。
「魔王さま………」
震えながら出てきた蜘蛛の子は、クロウにうやうやしく頭を下げる。
「君の名前は?」
「アラクネ……と言います。」
「アラクネ。俺は暴力で従わせないよ。みんなにとって良い治世をするからね。みんなを大事にする。ただ、人間を食べるのは禁止! 人間は、人間よりうんと美味しい食べ物を作るよ。あれを食べたら、みんな人間なんて食べたくなくなるはずさ!」
ニカッと笑う新しい魔王に、アラクネは涙した。
これで、虐げられる恐怖政治が終わるのだ。
白い馬に乗った白い服の狼の王子さま。
スラムに現れる。
「きゃあ!新しい魔王様よ! 素晴らしいわね。」
「俺たち下々にも気を配ってくださって。魔物の国も変わるぞ!」
ふうん。
狼の女は、他人事のように聞いていた。
だが、魔王の馬は、彼女の家の前で止まる。
「ただいま、母さん。迎えに来たよ。」
「ろう? お前、ロウなのかい!?」
二人は暫く抱き合って泣いた。
その後、魔物の国は発展し、人間の友好国になった。
賢王と称えられた彼の傍らには、人間の妃がいて。
不思議なことに魔物と同じように若さを保ち、彼と同じように生きたという。
それは、これから未来の話。
魔王がシナを作る。
アルフォンスは気がついた。
ここには鏡がない。
もしかしたら、魔王は自分の老いを気付いていないのか。
若い時間が長く、何百年も生きる魔物も、それでもいつか年を取る。
片隅には蜘蛛の魔物の青年がガタガタ震えている。
魔王が恐ろしくて、色が褪せたことなど気づかせられず、鏡を除いたのはあの蜘蛛の彼なのかもしれない。
「クロウ。やれるね?クロウが魔王になるなら、クロウが倒すんだよ。」
「こちらへの守りは私たち自分でやりますから。」
「うん、やる。」
クロウは拳に力を込め、両手に剣を持った。
落ち着いている。
怖くない。
「ふふふ、裏切り者め。まずはお前から食ってやろう。」
魔王は、その背から7枚の翼を生やし、7本の触手を生やした。
触手は、アルフォンスたちやクロウに向かってくる。
無詠唱バリア展開!
アルフォンスが自分たちを守るようにバリアをはった。
腕の中のオニキスは眠っている。
守らなきゃ。
食べさせてなるものか。
「ストップ!」
「凍結!」
「 」
アリステラとルピがそれぞれの魔法で触手の動きを止め、キールが切り刻んで魔法で壊死させる。
「私やオフィリアの出番はなさそうだね。」
「アバロンは大事な体なのですから、大人しく守られてくださいね。」
ルピが頼もしい。
「ちいっ!」
触手の痛み。
ひとりひとりがかなり強い。
食べれば相当強くなれるだろうが、隙がない。
「どっちを見てるっ!」
風の魔法で移動速度をあげ、羽を生やしたクロウは、雷を乗せた剣で頭上から魔王を斬り裂いた。
「ギャアアアア!馬鹿なっ!はやいっ!」
食べるためにまとめて連れてきたせいで、広範囲魔法を使うのは躊躇われた。しかし、そうもいってはいられない。
ズズズッと、魔王が男に変わる。
「グレネードっ。フレイムヘル!!」
魔王の手から、豪炎が放たれ、一面に弾けた。
「くくっ。」
目の前に狼はいない。焼けたか。
獲物はバリアで無事のようだ。
しかし、時の魔法を持つ若い女といい、かなりの粒揃い。
美味しくいただこう。
カツンカツンと近づく。
背後から一閃。
「ギャアアアアッ!!!?」
クロウの雷の爪と風の爪が魔王の肉を裂き、くい込み、肉を千切った。
「はうわ、あわ、っ」
魔王の体の中で雷と暴風が吹き荒れる。
よろめきながら、ルピの出した氷柱にぶつかって、魔王はさらに叫んだ。
「なんでっ、これが私?! 嘘だっ。」
魔王の背後で千切れた肉をクロウは食べる。
これでクロウは完全に上位。
「魔王。美貌なんていつか失うものだ。誰にでも老いはくる。」
憐れだな。アルフォンスは呟いた。
「嫌だああ!! 私は誰よりも美しいんだ!」
「アルフォンス(アバロン)(アリステラ)の方が美しい!」
「くそお、くそう!こうなったらその時の娘を食ってやる! 時の魔法で永遠の若さを!」
「いやあああ!!」
「アリステラ!」
クロウが助けようと手をのばした瞬間。
アリステラの時の魔法が弾けた。
「ギャアアアアッ!」
いやだ、いやだと呟く魔王の髪は白く。
時の魔法で更に老いが進み。
ただ年を取って本性の醜さが姿に現れる。
そして、クロウが雷で焼き切って。
焦げて炭になって、魔王だったものは消えた。
「やったね。クロウ。魔王になった。」
「ありがとう。」
「おめでとうございます。」
クロウはアリステラに微笑んだ。
「魔王さま………」
震えながら出てきた蜘蛛の子は、クロウにうやうやしく頭を下げる。
「君の名前は?」
「アラクネ……と言います。」
「アラクネ。俺は暴力で従わせないよ。みんなにとって良い治世をするからね。みんなを大事にする。ただ、人間を食べるのは禁止! 人間は、人間よりうんと美味しい食べ物を作るよ。あれを食べたら、みんな人間なんて食べたくなくなるはずさ!」
ニカッと笑う新しい魔王に、アラクネは涙した。
これで、虐げられる恐怖政治が終わるのだ。
白い馬に乗った白い服の狼の王子さま。
スラムに現れる。
「きゃあ!新しい魔王様よ! 素晴らしいわね。」
「俺たち下々にも気を配ってくださって。魔物の国も変わるぞ!」
ふうん。
狼の女は、他人事のように聞いていた。
だが、魔王の馬は、彼女の家の前で止まる。
「ただいま、母さん。迎えに来たよ。」
「ろう? お前、ロウなのかい!?」
二人は暫く抱き合って泣いた。
その後、魔物の国は発展し、人間の友好国になった。
賢王と称えられた彼の傍らには、人間の妃がいて。
不思議なことに魔物と同じように若さを保ち、彼と同じように生きたという。
それは、これから未来の話。
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