56 / 87
クロウとアリステラ
しおりを挟む
本当に夢じゃないかしら。
アリステラは、夢見心地だった。
パーティーが終わり、アリステラはそのまま城へ泊まった。
きれいなネグリジェを着せられて。
素敵なお部屋で眠った。
私の着ていた服は、お妃様………じゃなくてお母様が姫のフリをしていた時の服だった。
なんでも取っておくものだね。と微笑んで。
でも私のためのものを揃えるからと言われて、今日は朝から目を白黒させている。
「あわわわ、荷物の整理くらいは自分でやりますっ。これ以上の品は私には勿体ないです……!」
「何言っているの、アリステラ。俺だってもう少し持っていたよ。アリステラの物は申し訳ないけど殆ど使えないから、思い出の物をしまって分けていてね。残りは処分して、買い直さなきゃ。」
男性だけどお姫様育ちのお母様は、テキパキと指示をする。
「君は俺の恩人の娘だし、今はかわいい娘なんだから、今まで苦労した分も、色々やってあげたいんだよ。」
へい……お父さまも止めてくださらない。
「でも、いつもこんなに甘やかされていたら、私、だめな子になりそうです。揃えたら暫くはやめて下さいませ。」
なんかもう、諦めた。
「アルフォンス! 鏡台はここでいいのか?」
クロウ様の声。
鏡台が大きすぎて、彼の姿が見えない。
一人で持ってるの?
なんて力持ちなのかしら。
「ありがとう、クロウ。そこのベッドの向かいに置いてくれる?」
お母様の指示で、分かったと、ズシンと鏡台が設置される。
そして、その。
彼の姿を見て。
私は、固まってしまったのだ。
銀色の髪の頭の上に生えた耳は、ピョコピョコ動き、ズボンに開けた穴からは、フサフサした尻尾が、グルグル動いている。
そういえば、昨日握ったその手のひらは、ぽってりした感触があり、今思えば、剣ダコにしては柔らかかった。
私は、多分、顔に出してしまった。
彼は傷ついたような顔をして、黙って部屋を出ていった。
彼は、狼の魔物だったのだ。
「ごめん、アリステラ。色々麻痺してた。先に説明するべきだったね。」
「そうだな、突然。驚くのは当たり前だ。」
どうしよう。
彼を傷つけてしまった。
そのことが悲しくて泣く私に、新しい両親は話をしてくれた。
お母様のお腹の赤ちゃんが魔王に狙われていること。
その魔王を倒して、魔物と人間がともに暮らしていける世界を作るために、新しい魔王として、クロウ様を育てていること。
クロウ様は魔物の世界では迫害されて生きてきて、向こうに残してきたお母様や友だちのために魔王を目指していること。
「クロウは魔物だけど、優しくていい子だよ。それは、分かってくれているんだろう?」
アルフォンスお母様は、私の頭を撫でた。
分かってる。
私を助けてくれた王子さま。
自分も虐められていたから、私を助けてくれたのだ。
「この時間なら、庭だと思うよ。」
お父さま、ありがとう。
私は庭へ急いだ。
アリステラは、夢見心地だった。
パーティーが終わり、アリステラはそのまま城へ泊まった。
きれいなネグリジェを着せられて。
素敵なお部屋で眠った。
私の着ていた服は、お妃様………じゃなくてお母様が姫のフリをしていた時の服だった。
なんでも取っておくものだね。と微笑んで。
でも私のためのものを揃えるからと言われて、今日は朝から目を白黒させている。
「あわわわ、荷物の整理くらいは自分でやりますっ。これ以上の品は私には勿体ないです……!」
「何言っているの、アリステラ。俺だってもう少し持っていたよ。アリステラの物は申し訳ないけど殆ど使えないから、思い出の物をしまって分けていてね。残りは処分して、買い直さなきゃ。」
男性だけどお姫様育ちのお母様は、テキパキと指示をする。
「君は俺の恩人の娘だし、今はかわいい娘なんだから、今まで苦労した分も、色々やってあげたいんだよ。」
へい……お父さまも止めてくださらない。
「でも、いつもこんなに甘やかされていたら、私、だめな子になりそうです。揃えたら暫くはやめて下さいませ。」
なんかもう、諦めた。
「アルフォンス! 鏡台はここでいいのか?」
クロウ様の声。
鏡台が大きすぎて、彼の姿が見えない。
一人で持ってるの?
なんて力持ちなのかしら。
「ありがとう、クロウ。そこのベッドの向かいに置いてくれる?」
お母様の指示で、分かったと、ズシンと鏡台が設置される。
そして、その。
彼の姿を見て。
私は、固まってしまったのだ。
銀色の髪の頭の上に生えた耳は、ピョコピョコ動き、ズボンに開けた穴からは、フサフサした尻尾が、グルグル動いている。
そういえば、昨日握ったその手のひらは、ぽってりした感触があり、今思えば、剣ダコにしては柔らかかった。
私は、多分、顔に出してしまった。
彼は傷ついたような顔をして、黙って部屋を出ていった。
彼は、狼の魔物だったのだ。
「ごめん、アリステラ。色々麻痺してた。先に説明するべきだったね。」
「そうだな、突然。驚くのは当たり前だ。」
どうしよう。
彼を傷つけてしまった。
そのことが悲しくて泣く私に、新しい両親は話をしてくれた。
お母様のお腹の赤ちゃんが魔王に狙われていること。
その魔王を倒して、魔物と人間がともに暮らしていける世界を作るために、新しい魔王として、クロウ様を育てていること。
クロウ様は魔物の世界では迫害されて生きてきて、向こうに残してきたお母様や友だちのために魔王を目指していること。
「クロウは魔物だけど、優しくていい子だよ。それは、分かってくれているんだろう?」
アルフォンスお母様は、私の頭を撫でた。
分かってる。
私を助けてくれた王子さま。
自分も虐められていたから、私を助けてくれたのだ。
「この時間なら、庭だと思うよ。」
お父さま、ありがとう。
私は庭へ急いだ。
2
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる