王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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うちの妃が大物過ぎる

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「それって、俺に契約獣になれってことだよね?」

ロウは、その場にあぐらで座り込み、かわいらしく首をぐりんと傾げた。



アルフォンスはなんてことを言うんだ。
甘すぎるにもほどがある。

相手は子どもでもモンスター。魔物だぞ?

魔王の座を手に入れるため、進化するために俺たちの子を食おうとやってきた侵入者。



つかつか、とキールはアルフォンスの傍へ走る。


「アルフォンス!いくらなんでも甘すぎだ!」


「そうだよ、少しずつ食べさせてもらって俺の方がいつか強くなったら、いうことなんて聞かないで、丸のみにしてやるぞ。」


ケケケと、ロウは鋭い牙を見せて笑った。




「大丈夫だよ、たとえ君の方が俺より強い個体になったとしても、相性というものがある。もし今、君よりうんと俺が弱いとしても、俺は君を殺そうと思えば殺せるからね。裏切るなら好きにすればいいと思うよ?」

無詠唱で発動させられる俺が、君の周りから空気を奪ってしまったら。
果たしてどうなるでしょうか。

それに、誰にも言わないけど俺の魔力量なら、この国の人間全員にバリアを張っても平気だし、常時バリアつきで暮らしていても平気なの。



アルフォンスの笑顔に、ロウが真っ青になる。

「けいやく……する……っ。」


「ありがとう、いい子だね。ロウ。」

ブリーダーがペットにやるようにわしわしと毛並みを撫でて、アルフォンスは契約をした。

「お前に、クロウという名を授ける。」




「おおお…。」

将軍たちが感嘆の声を上げる中、魔狼の体が光って、契約が完了した。



「ふふふ。クロウかわいい~~~~。早速お風呂に入れて、毛並みをふっわふわにしてあげるね!将来魔王になるんだったら、立派ないい王様になれるように勉強するといいよ!」


「……アルフォンス、もしかして犬が飼いたかったのか?」


「だってかわいいじゃない!」

というのは半分本気、半分冗談で。

「キールにあれだけすぐに処刑するなって言ってるんだから、お手本を見せようと思ったの。どうしたってずっと魔物に狙われるんだもの。それなら、『人間と仲良くやってくれる魔王』をこちらで育成しちゃえばいいんじゃないかって思ってね。ただ、襲ってくるのを倒すだけより、よっぽど平和的で堅実でしょ。それに、この子の鼻があれば、不意打ちの心配もないし。」


子狼に嫉妬する夫をなだめるようにキスをする。




うちの妃が大物過ぎる。







「あっ。」


唇を離して、キールは素っ頓狂な声をあげた。


「どうしたの?」


「ルピが来るぞ。手紙で連絡があった。2年、うちに住んで勉強するって。賑やかになる。」

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