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魔狼のロウちゃん
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ぐるるるるるる。
冷たい牢の中で、がんじがらめにされて、狼の魔物は唸り声をあげていた。
やっとおいしい匂いがする場所に辿り着いたのに、この国の兵士に捕まってしまった。
兵士たちは俺一人に総動員で、その中で一番強いひげの男に取り押さえられた。
彼らは俺を殺したかったようだが、俺の毛皮は硬くて刃も通さない。
それで、俺はここに繋がれている。
剣で殺せなかったから、衰弱死させるつもりらしい。
悠長なことだ。
魔物は水も餌もなくても、1年くらいは命がもつのに。
捕まえられて3か月ほど。
無駄なようでも、俺のような魔物の強い力で辛抱強く鎖を引っ張っていれば、壊れるんだよ。
牢の中は暗いから、人間にはよく見えないだろうが、鎖にはよくみるとヒビが入っている。
朝。
俺が寝ているのを確認して、掃除が入る。それがチャンス。
ガチャッ。
牢が開いた音と人の気配。
俺は寝たふりをして待った。
「今日はいい天気だね。」
「そうですね。」
ユンスを連れて、お母さまと一緒に広い王家の庭を散歩する。
結婚して植えた花の種は、すくすくと成長している。
子どもが外歩きをする頃には、お花でいっぱいのお庭になったらいいなと思う。
バタバタ。
軍部の皆様がお城の中を走り回っている。
「何があったの?」
「妃殿下!妃殿下は早くお部屋へ!!! 捕えていた魔物が逃げたのです!」
「あの、刃がたたなかったという狼の魔物か!」
ユンスが腰の剣を抜いた。
「アルフォンス、部屋へ戻りましょ!あなたのお腹の子目当てできた魔物よ!」
お母様に手を引かれた瞬間。
鋭い気配が俺を射抜く。
お母様を後ろに隠し、バリアを張った。
「チィッ!!!」
衝撃が走り、影が離れて着地する。
銀色の毛並みのーーーーーーーーーーーーーおおかみ???
「くんくん、俺様は魔狼のロウ!魔物の王になる男だっ!オマエうまそうな匂い!食わせろ!」
頭の上でお耳がぴょこぴょこ。
顔はやんちゃな雰囲気で、ちいさなお鼻にキッと吊り目がちだけどつぶらなお目目。
身長は俺の胸くらい?
「かわいい!!!!!」
「アルフォンス!幼体でかわいくても魔物よっ!!?」
「わかっているよ、お母さま。みんな、大丈夫だよ!俺に任せて!」
ロウちゃん、かかっておいで?
ズガアアアアアアアアアアアアン!!
執務室で大人しく、アルフォンスが昨日焼いてくれたクッキーを齧りながら仕事をしていたら、爆発音とともに城が揺れた。
「この魔法は…。アルフォンスぅぅうううううううう!!!!!!!」
書類をばらまいて、キールは退出する。
なにがあった?
心当たりはないわけじゃない。
捕まえていた魔狼が逃げたのだろうか。
剣は聞かないし、回復魔法の転用で殺そうにも、速度も体力もあるから途中の活性化状態で反撃されたら余計に始末に負えない。
だから地下牢につないで、衰弱を待っていたのに。
アルフォンス。今、お前は普通の体じゃないんだから、無理はしないでくれ!
冷たい牢の中で、がんじがらめにされて、狼の魔物は唸り声をあげていた。
やっとおいしい匂いがする場所に辿り着いたのに、この国の兵士に捕まってしまった。
兵士たちは俺一人に総動員で、その中で一番強いひげの男に取り押さえられた。
彼らは俺を殺したかったようだが、俺の毛皮は硬くて刃も通さない。
それで、俺はここに繋がれている。
剣で殺せなかったから、衰弱死させるつもりらしい。
悠長なことだ。
魔物は水も餌もなくても、1年くらいは命がもつのに。
捕まえられて3か月ほど。
無駄なようでも、俺のような魔物の強い力で辛抱強く鎖を引っ張っていれば、壊れるんだよ。
牢の中は暗いから、人間にはよく見えないだろうが、鎖にはよくみるとヒビが入っている。
朝。
俺が寝ているのを確認して、掃除が入る。それがチャンス。
ガチャッ。
牢が開いた音と人の気配。
俺は寝たふりをして待った。
「今日はいい天気だね。」
「そうですね。」
ユンスを連れて、お母さまと一緒に広い王家の庭を散歩する。
結婚して植えた花の種は、すくすくと成長している。
子どもが外歩きをする頃には、お花でいっぱいのお庭になったらいいなと思う。
バタバタ。
軍部の皆様がお城の中を走り回っている。
「何があったの?」
「妃殿下!妃殿下は早くお部屋へ!!! 捕えていた魔物が逃げたのです!」
「あの、刃がたたなかったという狼の魔物か!」
ユンスが腰の剣を抜いた。
「アルフォンス、部屋へ戻りましょ!あなたのお腹の子目当てできた魔物よ!」
お母様に手を引かれた瞬間。
鋭い気配が俺を射抜く。
お母様を後ろに隠し、バリアを張った。
「チィッ!!!」
衝撃が走り、影が離れて着地する。
銀色の毛並みのーーーーーーーーーーーーーおおかみ???
「くんくん、俺様は魔狼のロウ!魔物の王になる男だっ!オマエうまそうな匂い!食わせろ!」
頭の上でお耳がぴょこぴょこ。
顔はやんちゃな雰囲気で、ちいさなお鼻にキッと吊り目がちだけどつぶらなお目目。
身長は俺の胸くらい?
「かわいい!!!!!」
「アルフォンス!幼体でかわいくても魔物よっ!!?」
「わかっているよ、お母さま。みんな、大丈夫だよ!俺に任せて!」
ロウちゃん、かかっておいで?
ズガアアアアアアアアアアアアン!!
執務室で大人しく、アルフォンスが昨日焼いてくれたクッキーを齧りながら仕事をしていたら、爆発音とともに城が揺れた。
「この魔法は…。アルフォンスぅぅうううううううう!!!!!!!」
書類をばらまいて、キールは退出する。
なにがあった?
心当たりはないわけじゃない。
捕まえていた魔狼が逃げたのだろうか。
剣は聞かないし、回復魔法の転用で殺そうにも、速度も体力もあるから途中の活性化状態で反撃されたら余計に始末に負えない。
だから地下牢につないで、衰弱を待っていたのに。
アルフォンス。今、お前は普通の体じゃないんだから、無理はしないでくれ!
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