王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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閑話 食いしん坊デート

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朝餉が終わって、アバロンを捕まえる。

「今日、一緒に街を回りませんか?」

ぱああっと表情が明るくなる。

だがすぐに、ハッとなって、キリリと引き締めた。 

そういうところもかわいい。






どうしよう。何を着ていけばいいんだろうか。

アルフォンスに相談したら、市井の者が着るようなもので、品のいい黄色のシャツとモスグリーンのベストにパンツを貸してくれた。

城の応接間でルピは待ってくれていたが、いつものきらびやかな装いとは違っても、彼の輝いていること!


豊かな金髪に、白いシャツと合わせた緑が縁取られた黄色の上下が映える。


「私たち、ふたりとも緑と黄色を持っているから、自分の色に合わせたら、お互いの色になるんですね。」

と微笑まれて、照れくさかった。




帝国は工業が盛んで、変わった機械や建物が多い。

馬車も走ってはいるが、蒸気で走る列車もあって大迫力だ。

その代わり公害が酷く、汚染が進み、霧が晴れなかったが、キールは加護だよりにかまけず、対策を講じているようで、今では大気や水に直接煙や汚水を垂れ流すことはない。

不浄な地は浄化され、緑化活動も進んでいる。


公害で病になった者も、きちんと国が無償で治療しているようで、好感を持てた。



とはいえ、長く公害に苦しんだ国。

市井の繁華街は、地下やガラスのドームに覆われた中にある。



清浄化した中で、咲き乱れる花々。

その街づくりの技術に、ルピは感嘆していた。


「ルピの国も公害問題があるのかい?」

「まだないですが、いずれはどこの国でも起こるでしょう。この技術は参考になります。」

「君の国はどんな国なのかな……。」


「アバロンを連れていけたらいいんですが。」


「加護のないところまで、あちこち私が行くことは…。」

「わかっていますよ。ゴールド王国は、金が採れます。芸術が盛んで、織物の産地。世界のファッションブランドもうちにあるんですよ。美しい国です。」

あなたはいませんが。


「まあ、おいしいもの、食べて回りましょう!」



夕陽を見ながら、二人で串焼きを齧り、麦で出来た酒を飲む。


「こっちも美味しいですよ。」

彼の食べかけのシーフードの串焼き。


間接キス。



………精霊界に帰らなくちゃ、いけない。
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