王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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花嫁と昔の男

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マルシェ様から渡された睡眠薬を混ぜたジュースを飲ませると、眠気に襲われたアルフォンスは、殆どの意識を手放した。

「アルフォンス。連れて行ってあげるからね。」


「どちらへでしょうか?」


背後から冷ややかな声が聞こえる。


アルフォンスの侍従。

キール王の乳兄弟。ユンス。



「ん?何があった?」

「ほら見ろ、早速出番だぞ。」

そうこうしている間に、キール王たちが帰ってきた。




部屋を移し、アルフォンスを寝かせて人払いをする。

この間、参列者には楽団の演奏などを愉しんで貰っている。



「あなたは、本当に彼を愛していますか?」

アルフォンスの母親も来て、皆に取り囲まれる中、ルピは勇気を出して、キールに訴えた。

「私は、あなたより先に彼に婚約を申し込んだ男です。だが、それは叶わなかった。」

「だから、彼を拐おうと?」

「全くそういう気持ちがないわけではありません。ですが、私はもう彼を手に入れるつもりはありません。彼にとって私は、友人でしょうからね。」

「ならなぜ?何をしようとしていた?」

「プルミエの母親が来ています。」

「招待した覚えはない。」

「あれも王族。紛れ込んだのでしょう。私に彼を拐うよう指示してきました。ご丁寧に逃走ルートの手配まで。あれは執念深い。唆されたふりをして、ルートとは別の場所に出産まで彼を隠しておこうと。」

「なるほど。確かにお前は嘘は言っていないようだ。」
キールは、ルピの本性を善と見た。

それに大国の王太子らしい、しっかりした男だ。

かの悪女にとっては計算外だったろう。


「ならば。むしろ女の罠にかかってしまったらどうだろう。」


「精霊王!!」

何を言うんだ、アルフォンスは強くても妊娠超初期だぞ。

「そういうやつは、大概特等席で顛末を直接見たがる。私がアルフォンスになろう。少しとうはたっているかもしれないが、私は同じ顔だろう?」

「確かに、暗闇では分からないかもしれませんね。それでは、私はアルフォンスについていますから。殿方たちは、やっちゃって下さいな。」

オフィリアは、眠るアルフォンスの髪を撫でた。


「ルピ。お前とは俺も友人になれそうだ。アルフォンスを愛する者同士、共同戦線で行くぞ!」

「怪しい行動をとったことを怒らないのですか?」

「何を言う。」
キール王の笑顔に、ルピは安心した。
噂は所詮、噂。
この人は悪い人ではない。

「宜しくお願いします。」

手と手をがっしり組む。


「キール様、初友人おめでとうございます。」
ユンスが一言余計なことを言った。


さあ、お姫様が寝ている間に、最後の始末をつけよう。
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