王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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これは横恋慕なのか

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【既に懐妊している。】


衝撃の発言から、披露宴パーティーはざわついたまま始まった。

世界で最も科学が発展し、影響力も強いが、酷い公害で、最も嫌厭されていた国でもあった帝国は、精霊の加護を得て、押しも押されぬ世界の有力国となった。

これまでは、食料というライフラインを他国に委ねていたが、今後はそうではない。

世界の勢力図が変わる。
均衡が破れる。


しかも、精霊の加護は、今後も続くのだ。

アルフォンス妃の懐妊によって。



幸せそうに並ぶ彼らに、参列者の各国の代表たちは、早速、我先に良い関係を結ぼうと挨拶をする。

たまに一瞬不機嫌そうになる新郎を、花嫁が肘で小突き、うまくコントロールしていた。





婚約式の段階で世界に中継されていたから既に処女でないことは知っていたけれど。

ルピ王子は、各国の要人と談話するキール王とアルフォンス妃を遠目に見ながらワインを煽った。

こんな短期間で孕ませるほど、あの男はあの細い腰を抱いたのか。

あの滑らかそうな白い肌に触れて、慎ましやかに隠れたそこを暴いて。

あの清らかな彼をいいように何度も何度も。


彼がキール王を見る視線も、キール王が彼を見る視線も甘い。

だが、彼を最初に見初めたのは自分だ。

幸せそうな彼を連れ去る事はできない。

でも、少し歯車が違っていたら。

そう思うと、やりきれない。

これは、横恋慕というやつなのだろうか。


「ルピ王子ではありませんか。」


聞き覚えのある声がして振り返ると、そこにはプルミエたちの母親がいた。

自業自得とはいえ、国があんなふうになって、真っ先に逃げ出した女。

夫は息子に処刑され、息子と娘も亡くなったと聞いているのに、喪に服さず派手な姿でこんなところへいるなんて。

ああ、こんな女だからか。

ルピ王子は眉をひそめた。


「これはマルシェ様。プルミエたちのことは残念でしたね。」

「仕方ありませんわ。あの恐ろしい男に睨まれたら、死しかないですもの。」

マルシェは、パチンと扇子を開くと、ルピ王子に耳うちした。


「アルフォンスも、今はいいでしょう。でも、いつ飽きられるか分かりませんし、どこでアレの気に障るか分かりませんわ。」

かわいそうに、いつか殺されてしまうかも……。

あんな危険な男につかまって。

今は浮かれて、相手のことがよくわかってないのですわ。

初めての相手って、最初は嫌々でも、なんだか素敵に見えてくるものですもの。


「アルフォンスがそんなことになったら、私が助ける!」

「王子は、元々あの子を好いていましたものね。でもその時、間に合うかしら。ねえ、あの子もあなたのことをよく思っていたのですよ。どうか、あの子を助けてあげて。血が繋がらないけど義理の娘だったのですもの。こうなったら、あの子だけでも幸せになってほしいわ! ね?」


マルシェは、切なげに微笑んだ。

かつて夫を唆して、王位につけた時のように。
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