24 / 87
これは横恋慕なのか
しおりを挟む
【既に懐妊している。】
衝撃の発言から、披露宴パーティーはざわついたまま始まった。
世界で最も科学が発展し、影響力も強いが、酷い公害で、最も嫌厭されていた国でもあった帝国は、精霊の加護を得て、押しも押されぬ世界の有力国となった。
これまでは、食料というライフラインを他国に委ねていたが、今後はそうではない。
世界の勢力図が変わる。
均衡が破れる。
しかも、精霊の加護は、今後も続くのだ。
アルフォンス妃の懐妊によって。
幸せそうに並ぶ彼らに、参列者の各国の代表たちは、早速、我先に良い関係を結ぼうと挨拶をする。
たまに一瞬不機嫌そうになる新郎を、花嫁が肘で小突き、うまくコントロールしていた。
婚約式の段階で世界に中継されていたから既に処女でないことは知っていたけれど。
ルピ王子は、各国の要人と談話するキール王とアルフォンス妃を遠目に見ながらワインを煽った。
こんな短期間で孕ませるほど、あの男はあの細い腰を抱いたのか。
あの滑らかそうな白い肌に触れて、慎ましやかに隠れたそこを暴いて。
あの清らかな彼をいいように何度も何度も。
彼がキール王を見る視線も、キール王が彼を見る視線も甘い。
だが、彼を最初に見初めたのは自分だ。
幸せそうな彼を連れ去る事はできない。
でも、少し歯車が違っていたら。
そう思うと、やりきれない。
これは、横恋慕というやつなのだろうか。
「ルピ王子ではありませんか。」
聞き覚えのある声がして振り返ると、そこにはプルミエたちの母親がいた。
自業自得とはいえ、国があんなふうになって、真っ先に逃げ出した女。
夫は息子に処刑され、息子と娘も亡くなったと聞いているのに、喪に服さず派手な姿でこんなところへいるなんて。
ああ、こんな女だからか。
ルピ王子は眉をひそめた。
「これはマルシェ様。プルミエたちのことは残念でしたね。」
「仕方ありませんわ。あの恐ろしい男に睨まれたら、死しかないですもの。」
マルシェは、パチンと扇子を開くと、ルピ王子に耳うちした。
「アルフォンスも、今はいいでしょう。でも、いつ飽きられるか分かりませんし、どこでアレの気に障るか分かりませんわ。」
かわいそうに、いつか殺されてしまうかも……。
あんな危険な男につかまって。
今は浮かれて、相手のことがよくわかってないのですわ。
初めての相手って、最初は嫌々でも、なんだか素敵に見えてくるものですもの。
「アルフォンスがそんなことになったら、私が助ける!」
「王子は、元々あの子を好いていましたものね。でもその時、間に合うかしら。ねえ、あの子もあなたのことをよく思っていたのですよ。どうか、あの子を助けてあげて。血が繋がらないけど義理の娘だったのですもの。こうなったら、あの子だけでも幸せになってほしいわ! ね?」
マルシェは、切なげに微笑んだ。
かつて夫を唆して、王位につけた時のように。
衝撃の発言から、披露宴パーティーはざわついたまま始まった。
世界で最も科学が発展し、影響力も強いが、酷い公害で、最も嫌厭されていた国でもあった帝国は、精霊の加護を得て、押しも押されぬ世界の有力国となった。
これまでは、食料というライフラインを他国に委ねていたが、今後はそうではない。
世界の勢力図が変わる。
均衡が破れる。
しかも、精霊の加護は、今後も続くのだ。
アルフォンス妃の懐妊によって。
幸せそうに並ぶ彼らに、参列者の各国の代表たちは、早速、我先に良い関係を結ぼうと挨拶をする。
たまに一瞬不機嫌そうになる新郎を、花嫁が肘で小突き、うまくコントロールしていた。
婚約式の段階で世界に中継されていたから既に処女でないことは知っていたけれど。
ルピ王子は、各国の要人と談話するキール王とアルフォンス妃を遠目に見ながらワインを煽った。
こんな短期間で孕ませるほど、あの男はあの細い腰を抱いたのか。
あの滑らかそうな白い肌に触れて、慎ましやかに隠れたそこを暴いて。
あの清らかな彼をいいように何度も何度も。
彼がキール王を見る視線も、キール王が彼を見る視線も甘い。
だが、彼を最初に見初めたのは自分だ。
幸せそうな彼を連れ去る事はできない。
でも、少し歯車が違っていたら。
そう思うと、やりきれない。
これは、横恋慕というやつなのだろうか。
「ルピ王子ではありませんか。」
聞き覚えのある声がして振り返ると、そこにはプルミエたちの母親がいた。
自業自得とはいえ、国があんなふうになって、真っ先に逃げ出した女。
夫は息子に処刑され、息子と娘も亡くなったと聞いているのに、喪に服さず派手な姿でこんなところへいるなんて。
ああ、こんな女だからか。
ルピ王子は眉をひそめた。
「これはマルシェ様。プルミエたちのことは残念でしたね。」
「仕方ありませんわ。あの恐ろしい男に睨まれたら、死しかないですもの。」
マルシェは、パチンと扇子を開くと、ルピ王子に耳うちした。
「アルフォンスも、今はいいでしょう。でも、いつ飽きられるか分かりませんし、どこでアレの気に障るか分かりませんわ。」
かわいそうに、いつか殺されてしまうかも……。
あんな危険な男につかまって。
今は浮かれて、相手のことがよくわかってないのですわ。
初めての相手って、最初は嫌々でも、なんだか素敵に見えてくるものですもの。
「アルフォンスがそんなことになったら、私が助ける!」
「王子は、元々あの子を好いていましたものね。でもその時、間に合うかしら。ねえ、あの子もあなたのことをよく思っていたのですよ。どうか、あの子を助けてあげて。血が繋がらないけど義理の娘だったのですもの。こうなったら、あの子だけでも幸せになってほしいわ! ね?」
マルシェは、切なげに微笑んだ。
かつて夫を唆して、王位につけた時のように。
2
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる