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精霊王の罪
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精霊王は、美しい王子のことが忘れられず、夜更けに彼の国に一人で向かった。
まだ、この時代は精霊が見える者も多かったから、夜のほうが都合がいい。
彼の白い体や銀色の髪は、夜空に雲や星のように輝いた。
「スプリーム。」
声をかけると、スプリームは奇麗な目を大きくした。
「貴方様は……?」
「ウンディーネをありがとう。私は、精霊王だよ。」
「彼女は無事に帰れたのですね!本当によかった。」
屈託のない笑顔が眩しい。
「君に加護をあたえようと思う。君の国をあらゆる災害から守ってあげるよ。良い王になるんだよ。」
「精霊王さま。僕は王にはなりません。僕は末っ子なんです。上に6人、兄上がおります。でも、僕がいれば加護で国は守られるのですね。」
嬉しいです。と、彼は心の底から喜んだ。
「6人も兄君がいて、君だけが災害の研究をしていたのかい?」
「兄上は忙しいのです。役割分担ですよ。災害対策は、時間がかかりますし、成果もなかなか出ませんから。」
釈然としない。
精霊王は、こっそりと探りを入れた。
他の王子は、彼ほど民のことを思ってはいなかったし、面倒くさいことや、すぐに成果がでないこと、成果が出るかわからないことを全てスプリームに丸投げしていた。
成果が出れば、自分の手柄にするくせに。
そしてそのことに、スプリームはなんの疑問も思っていなかった。
腹立たしい。
このままでは、加護を与えても、彼は兄たちに使われて終わるのだ。
だから。
国王の枕元に立った。
「私は精霊王。お前の息子の一人の瞳に、虹色の虹彩が現れる。それは、精霊の加護の証。その王子を代々、国王に据えるのだ。順列は関係ない。精霊は姫を国王に嫁がせる。姫は友好の証であり、見張りである。加護持ちが未成年の時のみ、加護なしの治世を許す。」
「加護、とは……‥‥」
「あらゆる災害から守ってやろう。」
「おお!」
「だが、加護持ちの王子を追い出したり、加護のある王子以外を王太子にすれば、災いがあるぞ。」
「私の子のうちどの子が……。」
「それは、じきに分かるだろう。」
それは脅しだった。
しかし、スプリームに加護の瞳を与えて一月。
スプリームの取り巻く状況は変わらない。
「何故、スプリームを王太子にしない。」
「あの子の母親は側妃で位が低く、後継者順位は低いのです。」
スプリームは、王が侍女に乱暴して産ませた子だった。
この王のそういう資質も、精霊王には我慢がならなかった。
愛しい、愛しいスプリーム。
愛する者が別にいるスプリームに、愛を囁くことはできないが、何とかして彼を守ってあげたい。
彼が守りたい大切なこの国を、よくするためには。
「おまえが私の言うことを聞けないのなら、一人ずつ死んでいくだろう。私が殺したことをスプリームに言うのなら、おまえも殺す。あの優しい王子は、自分のせいで死んだと気に病むからね。」
王はまだこの時は、悪い夢だと思っていた。
だが、一月目に第一王子が死に
二月目に第二王子、
半年後にはスプリーム以外の全ての王子が死んでしまった。
優しいスプリームは、何も知らず、兄を思って泣いていたが、彼を恐ろしく思った王は、精霊王のことを言おうとして、その場で血を吐いて死んだ。
「僕が本当に王になってしまった。」
喪服で泣き崩れるスプリームの肩を精霊王は抱いた。
大好きなお父さま。お兄様。
僕は、あなた方の役にたてることが幸せだったのに。
王位などいらないから、みんなで幸せに、もっと一緒に生きたかった。
スプリームの綺麗な瞳から涙が零れ、彼の瞳に映る自分を見た瞬間。
精霊王は、罪悪感に苛まれ、闇に堕ち、自分の樹木は枯れ始めた。
まだ、この時代は精霊が見える者も多かったから、夜のほうが都合がいい。
彼の白い体や銀色の髪は、夜空に雲や星のように輝いた。
「スプリーム。」
声をかけると、スプリームは奇麗な目を大きくした。
「貴方様は……?」
「ウンディーネをありがとう。私は、精霊王だよ。」
「彼女は無事に帰れたのですね!本当によかった。」
屈託のない笑顔が眩しい。
「君に加護をあたえようと思う。君の国をあらゆる災害から守ってあげるよ。良い王になるんだよ。」
「精霊王さま。僕は王にはなりません。僕は末っ子なんです。上に6人、兄上がおります。でも、僕がいれば加護で国は守られるのですね。」
嬉しいです。と、彼は心の底から喜んだ。
「6人も兄君がいて、君だけが災害の研究をしていたのかい?」
「兄上は忙しいのです。役割分担ですよ。災害対策は、時間がかかりますし、成果もなかなか出ませんから。」
釈然としない。
精霊王は、こっそりと探りを入れた。
他の王子は、彼ほど民のことを思ってはいなかったし、面倒くさいことや、すぐに成果がでないこと、成果が出るかわからないことを全てスプリームに丸投げしていた。
成果が出れば、自分の手柄にするくせに。
そしてそのことに、スプリームはなんの疑問も思っていなかった。
腹立たしい。
このままでは、加護を与えても、彼は兄たちに使われて終わるのだ。
だから。
国王の枕元に立った。
「私は精霊王。お前の息子の一人の瞳に、虹色の虹彩が現れる。それは、精霊の加護の証。その王子を代々、国王に据えるのだ。順列は関係ない。精霊は姫を国王に嫁がせる。姫は友好の証であり、見張りである。加護持ちが未成年の時のみ、加護なしの治世を許す。」
「加護、とは……‥‥」
「あらゆる災害から守ってやろう。」
「おお!」
「だが、加護持ちの王子を追い出したり、加護のある王子以外を王太子にすれば、災いがあるぞ。」
「私の子のうちどの子が……。」
「それは、じきに分かるだろう。」
それは脅しだった。
しかし、スプリームに加護の瞳を与えて一月。
スプリームの取り巻く状況は変わらない。
「何故、スプリームを王太子にしない。」
「あの子の母親は側妃で位が低く、後継者順位は低いのです。」
スプリームは、王が侍女に乱暴して産ませた子だった。
この王のそういう資質も、精霊王には我慢がならなかった。
愛しい、愛しいスプリーム。
愛する者が別にいるスプリームに、愛を囁くことはできないが、何とかして彼を守ってあげたい。
彼が守りたい大切なこの国を、よくするためには。
「おまえが私の言うことを聞けないのなら、一人ずつ死んでいくだろう。私が殺したことをスプリームに言うのなら、おまえも殺す。あの優しい王子は、自分のせいで死んだと気に病むからね。」
王はまだこの時は、悪い夢だと思っていた。
だが、一月目に第一王子が死に
二月目に第二王子、
半年後にはスプリーム以外の全ての王子が死んでしまった。
優しいスプリームは、何も知らず、兄を思って泣いていたが、彼を恐ろしく思った王は、精霊王のことを言おうとして、その場で血を吐いて死んだ。
「僕が本当に王になってしまった。」
喪服で泣き崩れるスプリームの肩を精霊王は抱いた。
大好きなお父さま。お兄様。
僕は、あなた方の役にたてることが幸せだったのに。
王位などいらないから、みんなで幸せに、もっと一緒に生きたかった。
スプリームの綺麗な瞳から涙が零れ、彼の瞳に映る自分を見た瞬間。
精霊王は、罪悪感に苛まれ、闇に堕ち、自分の樹木は枯れ始めた。
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