14 / 87
気分転換をしませんか
しおりを挟む
「アリア妃。城の中を散歩しませんか。」
ユンスに誘われて、頷いた。
「午後からは、結婚式の衣装を決めるので、お昼ごはんの前には戻りましょう。」
城の中は広い。
側妃がいることも多いから、妃のための離宮も2つあるらしい。
今はそのうちひとつをお母様が使っていて、もうひとつは使っていない。
「キールは、一番位が低い、子爵家の令息が産んだ子だったので、離宮で育ったんですよ。」
ちょうど、オフィリア様がお使いの宮ですね。
「お母様は男性だったんですね。」
「キールは母親似ですよ。性格も。元々、前王の学生時代の同級生で、側近だったようです。本当に愛していたのは、キールのお母様だったんじゃないですかね。側近として抜擢したかと思ったら、娶って。」
「キールが殺したんですよね……。」
「前王が亡くなった時。急だったので、後継者争いがおきました。」
産まれた順なら、側妃の産んだ第一王子。だが、正妃にも第二王子がいる。
分かりやすく、資質に差があればよかったのですが、みな優秀で。
結局、侍女も実家も巻き込んで、派閥で争いになった。
「ここは、図書室。」
ステンドグラスに彩られたそこは、教会のように神聖で、天井までハードカバーの本が並ぶ。
「キールは、一人でいることが多い、物静かな子で、よくここで本を読んでいました。人の本性が見えるから、あまり他の人といたくなかったのでしょう。」
なんだか、分かる気がする。
「そんな中、起きたお家騒動。第二王妃の産んだ第一王子が死にました。犯人は分からない。だけど、第二王妃は、第一王妃の仕業だと思って、第二王子を殺しました。」
「そんなことしたら………!」
「そう、二人の王妃は互いの子を殺し合った。そして、キールの妹姫も殺された。後継者争いに加わらないよう、次はキールを殺すぞという脅しです。」
妹が殺されて、こんな状況で。
キールはどんな思いだっただろう。
「キールの母親のアレックスは決断しました。どちらも国母にするわけにはいかない。そして、キール以外の子を全て排除して、キールを王に立たせると、自分も含めて、キールに後始末させたのです。」
辛いときにこんな話をして、すみません。
ユンスは頭を下げた。
「最後にこちらを。」
植物が育ちにくかったこの国で、透明なガラスに囲まれた巨大な温室。
中央には石碑。
そして、色とりどりの花が咲いている。
「けして、キールは非情ではありません。本性が見えてしまうから。身内で殺し合ったから。人の改心が信じられず、即決してしまうのです。優しすぎるあなたとなら、バランスがとれると思います。キールを宜しくお願いします。」
じっと奥を見ると、キールが石碑の前に居て。
花を捧げて祈っている。
ああ。
そうか。
ここはお墓なんだ。
「キール。」
名前を呼ぶと、驚いた顔をして振り向く。
「一緒に祈らせて。」
二人で祈った。
死んだ人は返ってこない。
ならば、罪を背負ったまま。
王になったのならば、国を良くしよう。
「ユンス、いい仕事するわあ。ようやくうちの子も幸せになれそうね。」
温室に紛れ込んだオフィリアが、木の上から二人を見下ろす。
「それじゃあ、私も母親らしく、お父さまにお願いしに行かなくちゃ。」
クロノス王国の王には、精霊姫が嫁ぐとの約束がある。
精霊にとって約束は大事。
盟約の書き換えをしに行かなくちゃ。
ユンスに誘われて、頷いた。
「午後からは、結婚式の衣装を決めるので、お昼ごはんの前には戻りましょう。」
城の中は広い。
側妃がいることも多いから、妃のための離宮も2つあるらしい。
今はそのうちひとつをお母様が使っていて、もうひとつは使っていない。
「キールは、一番位が低い、子爵家の令息が産んだ子だったので、離宮で育ったんですよ。」
ちょうど、オフィリア様がお使いの宮ですね。
「お母様は男性だったんですね。」
「キールは母親似ですよ。性格も。元々、前王の学生時代の同級生で、側近だったようです。本当に愛していたのは、キールのお母様だったんじゃないですかね。側近として抜擢したかと思ったら、娶って。」
「キールが殺したんですよね……。」
「前王が亡くなった時。急だったので、後継者争いがおきました。」
産まれた順なら、側妃の産んだ第一王子。だが、正妃にも第二王子がいる。
分かりやすく、資質に差があればよかったのですが、みな優秀で。
結局、侍女も実家も巻き込んで、派閥で争いになった。
「ここは、図書室。」
ステンドグラスに彩られたそこは、教会のように神聖で、天井までハードカバーの本が並ぶ。
「キールは、一人でいることが多い、物静かな子で、よくここで本を読んでいました。人の本性が見えるから、あまり他の人といたくなかったのでしょう。」
なんだか、分かる気がする。
「そんな中、起きたお家騒動。第二王妃の産んだ第一王子が死にました。犯人は分からない。だけど、第二王妃は、第一王妃の仕業だと思って、第二王子を殺しました。」
「そんなことしたら………!」
「そう、二人の王妃は互いの子を殺し合った。そして、キールの妹姫も殺された。後継者争いに加わらないよう、次はキールを殺すぞという脅しです。」
妹が殺されて、こんな状況で。
キールはどんな思いだっただろう。
「キールの母親のアレックスは決断しました。どちらも国母にするわけにはいかない。そして、キール以外の子を全て排除して、キールを王に立たせると、自分も含めて、キールに後始末させたのです。」
辛いときにこんな話をして、すみません。
ユンスは頭を下げた。
「最後にこちらを。」
植物が育ちにくかったこの国で、透明なガラスに囲まれた巨大な温室。
中央には石碑。
そして、色とりどりの花が咲いている。
「けして、キールは非情ではありません。本性が見えてしまうから。身内で殺し合ったから。人の改心が信じられず、即決してしまうのです。優しすぎるあなたとなら、バランスがとれると思います。キールを宜しくお願いします。」
じっと奥を見ると、キールが石碑の前に居て。
花を捧げて祈っている。
ああ。
そうか。
ここはお墓なんだ。
「キール。」
名前を呼ぶと、驚いた顔をして振り向く。
「一緒に祈らせて。」
二人で祈った。
死んだ人は返ってこない。
ならば、罪を背負ったまま。
王になったのならば、国を良くしよう。
「ユンス、いい仕事するわあ。ようやくうちの子も幸せになれそうね。」
温室に紛れ込んだオフィリアが、木の上から二人を見下ろす。
「それじゃあ、私も母親らしく、お父さまにお願いしに行かなくちゃ。」
クロノス王国の王には、精霊姫が嫁ぐとの約束がある。
精霊にとって約束は大事。
盟約の書き換えをしに行かなくちゃ。
10
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる