王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

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残酷王

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クリスタル帝国には、5人の王子と3人の王女がいた。

いた。

そう、過去形である。


正妃ガーネットは、公爵家の出身で第二王子と第四王子、第一王女の母親。

側妃メノウは、伯爵家の出身で、第一王子、第三王子、第三王女の母親。

側妃アレックスだけ男で、子爵家の令息だが、元々王の側近で、優れた騎士であり、参謀。そして、第五王子と第ニ王女の母親だった。


産業は発展したものの、酷い汚染で、食べるものは輸入に頼らざるを得ず、肺を患う者も多い中、この国ではあまり長くいきられなかった。

かといって、外に移住しようにも、移民目的の入国は、他国から拒否されていて、逃げ場がない。


率先して現場で指揮に当たっていた王が若くして夭折すると、そんな国でも王位を狙って争いが起きた。


最初に第二王子が毒で死んだ。

次に第一王子。



最後に生き残ったのは、王子の中で一番大人しく、本を読んで一人過ごしているような第五王子のキールだった。


キールは、ガーネットとメノウ、そして侍女の数名、その身内を処刑した。

そして、自分の母親も殺した。


自分の周りがうまく回るまで、身分に関係なく登用を続け、一方で容赦なく殺した。


ついた二つ名が『残酷王』。



だが、なぜ彼がそうしたのか。

誰も知らない。






「クエスト、終わったよ。」

帝国にある冒険者ギルドの支部。
そこにアルフォンスはいた。

「お疲れさま!」

移民してきたジェシカが、笑顔で迎えてくれる。

彼らは、俺を売らないから、安心できる。

「でも加護って凄いわね。大気汚染も水質汚染も、あっという間にきれいになっちゃって。万年霧の都と言われていたのが嘘のよう。」


「……俺自身も、本当に加護があるなんて、思っていなかったんだけどな。知っていたら、国を出ようとは思わなかったし。……本当に、なんでこうなっちゃったんだろう。俺はただ、平穏にお母様と暮らしていけたら幸せだったのに。断罪なんて、望まなかったのに。」

「ねぇ。」ジェシカが心配そうに、元気のない俺を見つめる。「お母様にとっては、破滅に追いやりたいくらい許せなかったのよ。愛する人を殺されて、あなたも殺されかねなかったのだから、当然だわ。それに、自分の子どもがバカにされて平気でいられる親はいないわよ。」

まあ、少し人間とは感覚や考え方が違うのかもしれないけど。

「……そうかな。」

「あなたは、優しすぎるのかもね。落ち着いたら、近いうち城に行きなさいよ?キール様ともちゃんと向き合いなさいね。」

ほっぺを両手で掴まれて、メッとされた。


そうだね、そうするよ。

俺のことはきっと加護目当てだったんだろうから、ちゃんと婚約解消してもらおう。

婚約解消しても、お母様はキールを気に入っているみたいだし、俺も友人ではいたいと思うから、加護は問題ないっていえば、分かってくれると思う。



「それじゃあ、ありがとう。」

ギルドを出て、宿に戻ろうとする。


そこへ、一人の女が立ち塞がった。



髪はボサボサ。
肌は荒れて。

見る影もない。


「プルミエ………!!」



「あなたのせいよ!」

プルミエは、ナイフを取り出すと、俺の胸を狙って突っ込んできた。
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