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断罪の婚約式2
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いったいこれはどういうことだ?
精霊の加護など、御伽話ではなかったのか?
王はたじろいだ。
第一王子だったのに、虹色の虹彩を持たなかった。
両親が亡くなった時。
勉学も剣も劣っていなかったのに、目の色だけで、弟が王になった。
どこから連れてきたか分からない美貌だけの女を妻にして、王たるにふさわしくない振る舞いだと思った。
治世なら、自分だって同じようにやれる。
だから、弟に毒を――――――。
「精霊はおりますわ。あなた、王子なのだから、教育は受けたでしょうに。ただの作り話だと信じなかったのでしょう?だから、夫も私が精霊の姫だと説明できなかったのよ。あなたに散々、私の出自を責められて、あの人は、『やんごとなき姫君だから、問題ない』とは説明してはいたけど。」
「あああ……。」
「父上!?」
「あなた?」
頭を抱える王に、妃と二人の子どもが駈け寄る。
「あなたの治世で変わりなく回っていると思っていたかしら?私とアリアがまだこの国にいたから、加護が続いていただけだわ。私は、彼を奪ったあなた方を許せない。この国はどうなってもいいの。さようなら?」
「えっ! お母様?加護って……。そうしたら、国の人たちはどうなるの!」
動揺した俺を、キールが止める。
「加護なんてなくても、うまくやれると前王を殺したのだろう?加護はうちがもらうから、頑張ればいい。普通に、台風や地震、津波から工夫して民を守ればいい。今までのように楽にはいかない。鉱石を採掘すれば崩壊するかもしれないし、作物は害虫や病気でやられることもある。海に出てもシケや荒波にのまれて船が沈没することもあるだろう。だが、それは普通に起こることだ。」
それはそうかもしれないけど。
でも……っ。
泣きそうになっている俺に優しく触れる。
「本当にアリアは優しいな。大体、精霊王の孫でその実力があれば、正統な王位継承者として、いつでも王位を取り戻せたものを。」
「だって、王位なんてどうでもいい。国のみんなが幸せなら!」
聞いたかい!
国中に、世界中に発信されている。
「加護もなく、今まで加護だよりで碌な対策もなく。ドラゴンを倒せない頼りない武力しかない。もう、守ってくれるアルフォンスはいない。本来の王になるべき者を排除した結果だ。これを見た他国はどう思うだろうね!?」
クックッとキールとお母様が嗤う。
ひいい、と王は蹲っている。
「さて、ここで市井の様子を中継しようか。」
『アルフォンス様こそ、我らの王!人殺しで役立たずの王は引っ込め!』
『王の人でなし!王太子の穀潰し!』
『弟を殺して王位を奪うような父親だから、子どもたちも皆性悪なんだな!』
ああ……。アルフォンスは町で人気者だったから。
ジェシカたちが民衆を煽っているようだ。
「なによ、何よっ!」
プルミエが信じられないという顔で、俺を睨む。
俺のせいじゃないよ。
「わ、私は、どうすれば………。」
「王位をアリアに返せば、妃の国なのだから、我が帝国に併合しよう。そうすれば、加護も失わないだろう。返さないなら、私は、この国の良民の面倒を見よう。移民を受け入れる。」
「それは……いずれにしても……っ。陛下!我が国を攻めないと!約束したではないですかっ!!!」
「攻めてはいないだろう?」
それで!?
と、キールは詰め寄る。
「もう!!やめて! お母様も、もう信じられない……!」
シルフィの翼を生やし、宙に浮く。
「俺はお前の妃にはならない!」
竜巻を起こし、俺は去る。
風の噂で国の衰退とプルミエの破談を聞いた。
精霊の加護など、御伽話ではなかったのか?
王はたじろいだ。
第一王子だったのに、虹色の虹彩を持たなかった。
両親が亡くなった時。
勉学も剣も劣っていなかったのに、目の色だけで、弟が王になった。
どこから連れてきたか分からない美貌だけの女を妻にして、王たるにふさわしくない振る舞いだと思った。
治世なら、自分だって同じようにやれる。
だから、弟に毒を――――――。
「精霊はおりますわ。あなた、王子なのだから、教育は受けたでしょうに。ただの作り話だと信じなかったのでしょう?だから、夫も私が精霊の姫だと説明できなかったのよ。あなたに散々、私の出自を責められて、あの人は、『やんごとなき姫君だから、問題ない』とは説明してはいたけど。」
「あああ……。」
「父上!?」
「あなた?」
頭を抱える王に、妃と二人の子どもが駈け寄る。
「あなたの治世で変わりなく回っていると思っていたかしら?私とアリアがまだこの国にいたから、加護が続いていただけだわ。私は、彼を奪ったあなた方を許せない。この国はどうなってもいいの。さようなら?」
「えっ! お母様?加護って……。そうしたら、国の人たちはどうなるの!」
動揺した俺を、キールが止める。
「加護なんてなくても、うまくやれると前王を殺したのだろう?加護はうちがもらうから、頑張ればいい。普通に、台風や地震、津波から工夫して民を守ればいい。今までのように楽にはいかない。鉱石を採掘すれば崩壊するかもしれないし、作物は害虫や病気でやられることもある。海に出てもシケや荒波にのまれて船が沈没することもあるだろう。だが、それは普通に起こることだ。」
それはそうかもしれないけど。
でも……っ。
泣きそうになっている俺に優しく触れる。
「本当にアリアは優しいな。大体、精霊王の孫でその実力があれば、正統な王位継承者として、いつでも王位を取り戻せたものを。」
「だって、王位なんてどうでもいい。国のみんなが幸せなら!」
聞いたかい!
国中に、世界中に発信されている。
「加護もなく、今まで加護だよりで碌な対策もなく。ドラゴンを倒せない頼りない武力しかない。もう、守ってくれるアルフォンスはいない。本来の王になるべき者を排除した結果だ。これを見た他国はどう思うだろうね!?」
クックッとキールとお母様が嗤う。
ひいい、と王は蹲っている。
「さて、ここで市井の様子を中継しようか。」
『アルフォンス様こそ、我らの王!人殺しで役立たずの王は引っ込め!』
『王の人でなし!王太子の穀潰し!』
『弟を殺して王位を奪うような父親だから、子どもたちも皆性悪なんだな!』
ああ……。アルフォンスは町で人気者だったから。
ジェシカたちが民衆を煽っているようだ。
「なによ、何よっ!」
プルミエが信じられないという顔で、俺を睨む。
俺のせいじゃないよ。
「わ、私は、どうすれば………。」
「王位をアリアに返せば、妃の国なのだから、我が帝国に併合しよう。そうすれば、加護も失わないだろう。返さないなら、私は、この国の良民の面倒を見よう。移民を受け入れる。」
「それは……いずれにしても……っ。陛下!我が国を攻めないと!約束したではないですかっ!!!」
「攻めてはいないだろう?」
それで!?
と、キールは詰め寄る。
「もう!!やめて! お母様も、もう信じられない……!」
シルフィの翼を生やし、宙に浮く。
「俺はお前の妃にはならない!」
竜巻を起こし、俺は去る。
風の噂で国の衰退とプルミエの破談を聞いた。
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