王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
5 / 87

断罪の婚約式2

しおりを挟む
いったいこれはどういうことだ?
精霊の加護など、御伽話ではなかったのか?

王はたじろいだ。


第一王子だったのに、虹色の虹彩を持たなかった。

両親が亡くなった時。
勉学も剣も劣っていなかったのに、目の色だけで、弟が王になった。

どこから連れてきたか分からない美貌だけの女を妻にして、王たるにふさわしくない振る舞いだと思った。


治世なら、自分だって同じようにやれる。


だから、弟に毒を――――――。



「精霊はおりますわ。あなた、王子なのだから、教育は受けたでしょうに。ただの作り話だと信じなかったのでしょう?だから、夫も私が精霊の姫だと説明できなかったのよ。あなたに散々、私の出自を責められて、あの人は、『やんごとなき姫君だから、問題ない』とは説明してはいたけど。」


「あああ……。」

「父上!?」
「あなた?」

頭を抱える王に、妃と二人の子どもが駈け寄る。


「あなたの治世で変わりなく回っていると思っていたかしら?私とアリアがまだこの国にいたから、加護が続いていただけだわ。私は、彼を奪ったあなた方を許せない。この国はどうなってもいいの。さようなら?」








「えっ! お母様?加護って……。そうしたら、国の人たちはどうなるの!」
動揺した俺を、キールが止める。


「加護なんてなくても、うまくやれると前王を殺したのだろう?加護はうちがもらうから、頑張ればいい。普通に、台風や地震、津波から工夫して民を守ればいい。今までのように楽にはいかない。鉱石を採掘すれば崩壊するかもしれないし、作物は害虫や病気でやられることもある。海に出てもシケや荒波にのまれて船が沈没することもあるだろう。だが、それは普通に起こることだ。」


それはそうかもしれないけど。
でも……っ。


泣きそうになっている俺に優しく触れる。

「本当にアリアは優しいな。大体、精霊王の孫でその実力があれば、正統な王位継承者として、いつでも王位を取り戻せたものを。」

「だって、王位なんてどうでもいい。国のみんなが幸せなら!」

聞いたかい!

国中に、世界中に発信されている。


「加護もなく、今まで加護だよりで碌な対策もなく。ドラゴンを倒せない頼りない武力しかない。もう、守ってくれるアルフォンスはいない。本来の王になるべき者を排除した結果だ。これを見た他国はどう思うだろうね!?」

クックッとキールとお母様が嗤う。

ひいい、と王は蹲っている。


「さて、ここで市井の様子を中継しようか。」


『アルフォンス様こそ、我らの王!人殺しで役立たずの王は引っ込め!』

『王の人でなし!王太子の穀潰し!』

『弟を殺して王位を奪うような父親だから、子どもたちも皆性悪なんだな!』


ああ……。アルフォンスは町で人気者だったから。

ジェシカたちが民衆を煽っているようだ。


「なによ、何よっ!」
プルミエが信じられないという顔で、俺を睨む。

俺のせいじゃないよ。

「わ、私は、どうすれば………。」


「王位をアリアに返せば、妃の国なのだから、我が帝国に併合しよう。そうすれば、加護も失わないだろう。返さないなら、私は、この国の良民の面倒を見よう。移民を受け入れる。」


「それは……いずれにしても……っ。陛下!我が国を攻めないと!約束したではないですかっ!!!」


「攻めてはいないだろう?」


それで!?


と、キールは詰め寄る。


「もう!!やめて! お母様も、もう信じられない……!」


シルフィの翼を生やし、宙に浮く。


「俺はお前の妃にはならない!」


竜巻を起こし、俺は去る。


風の噂で国の衰退とプルミエの破談を聞いた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

処理中です...