上 下
39 / 42

人を呪わば穴二つ

しおりを挟む
白銀の髪が光を反射して、光り輝く。

柔らかな髪はふわりと風に揺れて。

ふくふくとした手足はすらりと伸び、丸みを帯びた愛らしい顔立ちもすっきりとした美貌になった。



母親のマザーアースもそれは美しい神だった。
父親のルナもそれはもう、神々が溺愛した存在だった。


美貌の二人から生まれたアースは、母親似であるものの、父親が持つ神秘的な魅力も兼ね備えていた。

幼い頃、同じころ合いの幼神たちの中で、最も慕われ、将来はどんなに素晴らしくなるだろうと期待されていたアース。

何故か一人だけ成長せず、背丈も心も皆に取り残されていく。

可愛らしい幼神の姿のまま。


だから、その姿にしたならば。



この世で一番美しい神はボクのはずだったのに。


「あれ?マーキュリー縮んだ?」

「違うよ、アースが本来の姿になったんだ。アースはちゃんと大人になれていたんだよ。」


「あっ、やだ、くすぐったい。においをかいじゃいやだ。あ、お父様とお母様も見てるのにっ。」


目の前でボクの大好きなマーキュリーがアースとイチャイチャしてる…。

イチャイチャしてるぅうううう!!



「さあ。お前にはもう未来はない。残り少ない僅かな時を迎えるとよい。」

ガイア様の声が響く。

手が通り過ぎただけで、何かが抜けていった。

それはたぶん、神としての力。

「わずかな時?ボク、いっぱい反省します。それに、ボクのことお嫁さんにしたいって人がいるなら外に出てもいいんですよね?だってほら、ボクは可愛いし、人気者だし、それに罰なら受けたし。もう僕には何の力もないんだから。それだけで大した罰ですよね!ガイア様はみんなを子どもとして可愛がってくれてるんだから、ボクのことだってかわいいんでしょう?本当は罰したくないんですよね!」


「お前は何も分かっていない。まあ……。」


――――――――――――え。



そう、言われた瞬間。



もうボクは鳥かごの牢の中にいた。




錆のような髪。薄汚れた体。しわくちゃの手。かつての美貌はどこにもない。

そうだ。

ボクは何回も何回も何回も人のモノを欲しがって。人を陥れようとして。傷つけようとして。それで何度もチャンスをもらったのに、何度も何度も繰り返して。

寿命と引き換えに『特別な分身』を何回も一人で産んで。

それが罪を犯さなければ、ボクは許されたのに。

新しい若い体で生きることが許されたのに!






「あぁああ―――――――――――――あぁ…。」

ボクが蹴り飛ばした醜い罪人。

それが自分だった。



この姿では、騙せる相手もいない。



もうガイア様に見捨てられて。



この鳥籠の中で醜い姿で、残り僅かな生を生きるしか、ないのだ。
皆に反面教師として後ろ指を刺され、見世物のように見られながら。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

【完結】かつて勇者だった者

関鷹親
BL
勇者として妹と共に異世界に召喚された春輝は、負傷した妹の治療を条件に魔王を討伐する旅へと出る。 周りからやっかみにあいながらも、魔王を打ち倒し凱旋するが、待ち受けていたのは思いがけない悲劇だった──。 絶望する春輝の元に死んだはずの魔王が現れ、共に王国を滅ぼそうと囁かれ、その手を取ってしまう。 利害関係から始まる関係は、徐々にお互いの心の隙間を埋め執着愛へと育っていく。 《おっさん魔王×青年勇者》 *ダークファンタジー色強めです。 誤字脱字等の修正ができてないです!すみません!

会社を辞めて騎士団長を拾う

あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。 その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか? 女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾
BL
日本に住む青年九条 翠 (くじょう すい)はナサニエル帝国第3皇子 ルーカスとして、第2の生を受ける。 前世は家族とも疎遠で、あまり良い思い出もない。そんな翠がルーカスとして生き、様々な人に愛され恋をして新しい人生を歩んでいく話。  恋愛はルーカスが学園に入ってから主に進めていこうと思います。 初めて書いたので語彙も少なく、拙いですが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。誤字脱字があれば教えて頂けると嬉しいです!定期的に投稿出来るように頑張ります。 ※強姦表現や虐待表現があります。 ⚠️注意⚠️ この世界の赤子が話し出すのは1歳程ですごく早く、現実とは異なります。 人物紹介の瞳の色の後ろにある( )は、宝石✨️の名前で️す。良ければ調べてみてください!色のイメージがつきやすくなるかも?しれないです!

『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話

真義あさひ
BL
尽くし男の永遠の片想い話。でも幸福。 ど田舎村出身の青年ユキレラは、結婚を翌月に控えた彼氏を義妹アデラに寝取られた。 確かにユキレラの物を何でも欲しがる妹だったが、まさかの婚約者まで奪われてはさすがに許せない。 絶縁状を叩きつけたその足でど田舎村を飛び出したユキレラは、王都を目指す。 そして夢いっぱいでやってきた王都に到着当日、酒場で安い酒を飲み過ぎて気づいたら翌朝、同じ寝台の中には裸の美少年が。 「えっ、嘘……これもしかして未成年じゃ……?」 冷や汗ダラダラでパニクっていたユキレラの前で、今まさに美少年が眠りから目覚めようとしていた。 ※「王弟カズンの冒険前夜」の番外編、「家出少年ルシウスNEXT」の続編 「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」のメインキャラたちの子孫が主人公です

【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います

ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。 それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。 王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。 いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?

甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?

秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。 蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。 絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された 「僕と手を組まない?」 その手をとったことがすべての始まり。 気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。 王子×大学生 ――――――――― ※男性も妊娠できる世界となっています

処理中です...