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シルフィー一家の後悔
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あぁ。なんていうことなんだ…。
まさかこんなことになるなんて。
加護ナシだと思って切り捨てていた長男は、実はこの世界の神だった。
こんなことなら、あの子を大事にしていたらよかった。
そうしていれば、神を生んだ家として、我がシルフィー家は順風満帆だっただろう。
仕えていた陛下は王妃とともに隠居して、新しくエース殿下が王位についた。
エース陛下は弟殿下を城から追い出し、神を敬いながらも、宗教国家としての国の在り方を変えた。
そして、我がシルフィー伯爵家は、今では貴族社会で立場を失っている………。
「シルフィー伯爵家よ。前夫人のラーファ様の忘れ形見の長男は神が顕現されたお姿だったらしいわ。」
「まぁ。ラーファ様も素晴らしい方だったもの。その子が素晴らしいのも当然ですわ。お美しくて気高くてお優しくて。女性の身で学園では生徒会長を務めあげ、魔導士としても優秀なお方で………。そんなお方を早逝させるほど虐げて。罰が当たったのですわ。」
「きっとラーファ様が素晴らしい方だったから、神が子として顕現したのでしょう。生きていれば神の御生母だったのですもの、実家のメイデン伯爵家も残念でしょうね。」
「あら、メイデン伯爵家はラーファ様を虐げておりましたのよ。」
「まぁ……それはそれは。」
「聞きまして?プラム殿下は神の怒りに触れた。シルフィー伯爵家とメイデン伯爵家もそうらしいですわ。」
「あたりまえですわね。」
「メイデン伯爵家は分かりませんけど……。シルフィー伯爵家は加護を消されたとか。」
「……まぁ怖い。でも因果応報ですわね。散々虐げて馬鹿にしてきた『加護ナシ』に自分たちがなったのですから。これで少しはもたざる者弱き者の気持ちが分かればいいのですが。」
うぅぅうううううっ!!!!
悔しい!
でもどうにもならない!!
「シルフィ伯爵!シンディ!!!」
怒りの孕んだ声の方を向けば、舅のメイデン伯爵。
「私たちの珠はラーファとアースレッドだった…ッ!シンディ、お前が私たちにラーファをあしざまに言わなければ…!お前に騙されなければ、私は元々長女であるラーファを後継にと考えていたのだぞっ!」
「な、なによっ!見る目がなかった自分たちが悪いんじゃない!自分たちは棚にあげて、今度は全部私のせいにしようというのね!」
「うるさい、阿婆擦れ!だいたい姉の婚約者を寝取るなど、頭がおかしい女め!」
「なによ!私は可愛らしく子どもらしく甘えてただけじゃないの!何が悪いって言うの!………お母様、お父様がひど……って、お母様はどこなの?」
「あんな女、お前の教育が悪かった責任をとらせて離縁したわッ!」
「なんですって!?」
「二人とも、たった今をもって我がメイデン伯爵家はシルフィ伯爵家と絶縁する!わかったな!」
物凄い剣幕で、メイデン伯爵はエース陛下の元へ向かった。
今更、メイデン伯爵家もシルフィ伯爵家も王家の覚えは悪い。
貴族として立身出世が期待できようはずもない。
成人した息子の就職口はなく、我が家は貴族たちから距離をとられた。
釣書を送っても息子は相手にされず、仕方なく打診した商家の娘にも色よい返事が得られない。
そのうち、『神に背いた領地』としてシルフィー伯爵領は囁かれるようになり、領民の何人かは逃げ出していった。
綺麗な湖を湛えた草原の街は、荒れ果てたブッシュの鬱蒼とした街に代わり、収入も激減。
爵位を返上し、平民となり。
知らない土地で生きていく。
加護もない人間に割のいい仕事はない。
貧しい暮らし。
私たちは貧民街の黴臭い小さな家に身を寄せ合う。
息子は王太子の側近どころか………貧民街で一生を終えるのか。
「どうしてこんなことに…………。」
後悔しても、こぼれた水は盆には戻らない。
まさかこんなことになるなんて。
加護ナシだと思って切り捨てていた長男は、実はこの世界の神だった。
こんなことなら、あの子を大事にしていたらよかった。
そうしていれば、神を生んだ家として、我がシルフィー家は順風満帆だっただろう。
仕えていた陛下は王妃とともに隠居して、新しくエース殿下が王位についた。
エース陛下は弟殿下を城から追い出し、神を敬いながらも、宗教国家としての国の在り方を変えた。
そして、我がシルフィー伯爵家は、今では貴族社会で立場を失っている………。
「シルフィー伯爵家よ。前夫人のラーファ様の忘れ形見の長男は神が顕現されたお姿だったらしいわ。」
「まぁ。ラーファ様も素晴らしい方だったもの。その子が素晴らしいのも当然ですわ。お美しくて気高くてお優しくて。女性の身で学園では生徒会長を務めあげ、魔導士としても優秀なお方で………。そんなお方を早逝させるほど虐げて。罰が当たったのですわ。」
「きっとラーファ様が素晴らしい方だったから、神が子として顕現したのでしょう。生きていれば神の御生母だったのですもの、実家のメイデン伯爵家も残念でしょうね。」
「あら、メイデン伯爵家はラーファ様を虐げておりましたのよ。」
「まぁ……それはそれは。」
「聞きまして?プラム殿下は神の怒りに触れた。シルフィー伯爵家とメイデン伯爵家もそうらしいですわ。」
「あたりまえですわね。」
「メイデン伯爵家は分かりませんけど……。シルフィー伯爵家は加護を消されたとか。」
「……まぁ怖い。でも因果応報ですわね。散々虐げて馬鹿にしてきた『加護ナシ』に自分たちがなったのですから。これで少しはもたざる者弱き者の気持ちが分かればいいのですが。」
うぅぅうううううっ!!!!
悔しい!
でもどうにもならない!!
「シルフィ伯爵!シンディ!!!」
怒りの孕んだ声の方を向けば、舅のメイデン伯爵。
「私たちの珠はラーファとアースレッドだった…ッ!シンディ、お前が私たちにラーファをあしざまに言わなければ…!お前に騙されなければ、私は元々長女であるラーファを後継にと考えていたのだぞっ!」
「な、なによっ!見る目がなかった自分たちが悪いんじゃない!自分たちは棚にあげて、今度は全部私のせいにしようというのね!」
「うるさい、阿婆擦れ!だいたい姉の婚約者を寝取るなど、頭がおかしい女め!」
「なによ!私は可愛らしく子どもらしく甘えてただけじゃないの!何が悪いって言うの!………お母様、お父様がひど……って、お母様はどこなの?」
「あんな女、お前の教育が悪かった責任をとらせて離縁したわッ!」
「なんですって!?」
「二人とも、たった今をもって我がメイデン伯爵家はシルフィ伯爵家と絶縁する!わかったな!」
物凄い剣幕で、メイデン伯爵はエース陛下の元へ向かった。
今更、メイデン伯爵家もシルフィ伯爵家も王家の覚えは悪い。
貴族として立身出世が期待できようはずもない。
成人した息子の就職口はなく、我が家は貴族たちから距離をとられた。
釣書を送っても息子は相手にされず、仕方なく打診した商家の娘にも色よい返事が得られない。
そのうち、『神に背いた領地』としてシルフィー伯爵領は囁かれるようになり、領民の何人かは逃げ出していった。
綺麗な湖を湛えた草原の街は、荒れ果てたブッシュの鬱蒼とした街に代わり、収入も激減。
爵位を返上し、平民となり。
知らない土地で生きていく。
加護もない人間に割のいい仕事はない。
貧しい暮らし。
私たちは貧民街の黴臭い小さな家に身を寄せ合う。
息子は王太子の側近どころか………貧民街で一生を終えるのか。
「どうしてこんなことに…………。」
後悔しても、こぼれた水は盆には戻らない。
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