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海と山の向こう側
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フリー王国の外……。
海と山、森林の向こう側には、広く開けた大陸や島々があり、豊かな国々がある。
その国際社会の中で、「フリー王国」のことは噂になっていた。
かつて大陸に名を轟かせていた古の王国・ウェイ王国。
魔王の侵攻により滅んだ王国の末裔が、よりによって魔王の発生源となった閉ざされた田舎に興した小さな王国。
国際社会の重要な会議や夜会に呼ばれず、狭い狭い世界の中で暮らしていて、愚か者だと疎んじられていた。
「ふふっ。代替わりしたみたいですわねぇ。国際社会へご挨拶したいそうですので、今度の国際会議にもおよびしていますが、ほほほほ。あのド田舎から来られればいいですけど。会議は明日ですわ…!文が届くのも時間がかかる場所ですもの?ようやく今頃届いたころでしょう?」
「またいつものように、結局は不参加でしょうよ、姉さん。」
煌びやかな城の中で、キラキラと輝くような美貌。
桃色の髪の若き王族は、同じような顔立ちの姉にそう言いながら、くすくすと笑った。
ウェイ王国が滅び、「勇者」により魔物の討伐が落ち着いた頃。
隣国であり王族同士が親族であったジュエリー王国がウェイ王国を吸収し、大国となった。
それについて、誰も咎める者もなく、今やジュエリー王国は世界一の大国である。
何故咎める者がいなかったのか。
それは、「勇者」がジュエリー王国の王子だったからだった。
王国としてはみそっかすの王子でも、それが「勇者」として名を轟かせるのであれば好都合で。
なお都合がいいことに、そのいらない王子は名声を本国にもたらして消息を絶ってしまった。
おそらく魔王と相打ちにでもなったに違いない。
桃色の髪でも、当時、王家の色としてあがめられていた金が混じった色合いの王子だったが、正義感が強く、面倒くさい王族だった。
二人は明日の国際会議でまたフリー王国を馬鹿にできることを楽しみに、眠りにつき―――。
そして、会議の日の朝を迎えた。
大陸中の様々な国から王族やその代理である重鎮らが集まってくる。
みな、昨日には到着し、王都にある高級ホテルへ滞在している。
そこから豪華な馬車で彼らは現れた。
もうすぐ始まる時間―――――――
やはりウェイ王国は不参加……。
そう誰もが思った時……。
ぶるるるるるるる。
「なっ、なんだあれはっ!?」
「う、うわぁああああ!!!化け物だっ!!!」
ジュエリー王国の王城。会議が行われる宮殿の真上に、巨大な空飛ぶ船が浮かび、その風圧で木々は揺れ、人々は吹き飛ばされそうになる。
「申し訳ありません。」
「ひっ!!?」
真っ赤な髪の美しい男が突然現れ、紳士の礼をとった。
「私たちはフリー王国からの参加者です。こちらは遠いもので、飛空艇で駆けつけたのですが…。残念ながら降りられる場所がなく。そのまま上空に浮かんでいてもよいでしょうか。」
「えっ!!?あなたは一体どうやって急に現れたのですか!?」
「転移魔法です。飛空艇も転移魔法を搭載していますので、ここまで途中はショートカットしました。本当は全員転移魔法で来てもよかったのですけど…、我が主がどうしても現在の国力を示しておきたいとのことでしたので、飛空艇で駆けつけた次第です。」
(どういうことなの?あの国はなんにもない、文明の遅れた魔物の巣じゃなかったの???!)
(しかもあんな麗しい方見たことがないわ!)
会場がざわつき、馬鹿にするはずのフリー王国は、もはや目玉だった。
海と山、森林の向こう側には、広く開けた大陸や島々があり、豊かな国々がある。
その国際社会の中で、「フリー王国」のことは噂になっていた。
かつて大陸に名を轟かせていた古の王国・ウェイ王国。
魔王の侵攻により滅んだ王国の末裔が、よりによって魔王の発生源となった閉ざされた田舎に興した小さな王国。
国際社会の重要な会議や夜会に呼ばれず、狭い狭い世界の中で暮らしていて、愚か者だと疎んじられていた。
「ふふっ。代替わりしたみたいですわねぇ。国際社会へご挨拶したいそうですので、今度の国際会議にもおよびしていますが、ほほほほ。あのド田舎から来られればいいですけど。会議は明日ですわ…!文が届くのも時間がかかる場所ですもの?ようやく今頃届いたころでしょう?」
「またいつものように、結局は不参加でしょうよ、姉さん。」
煌びやかな城の中で、キラキラと輝くような美貌。
桃色の髪の若き王族は、同じような顔立ちの姉にそう言いながら、くすくすと笑った。
ウェイ王国が滅び、「勇者」により魔物の討伐が落ち着いた頃。
隣国であり王族同士が親族であったジュエリー王国がウェイ王国を吸収し、大国となった。
それについて、誰も咎める者もなく、今やジュエリー王国は世界一の大国である。
何故咎める者がいなかったのか。
それは、「勇者」がジュエリー王国の王子だったからだった。
王国としてはみそっかすの王子でも、それが「勇者」として名を轟かせるのであれば好都合で。
なお都合がいいことに、そのいらない王子は名声を本国にもたらして消息を絶ってしまった。
おそらく魔王と相打ちにでもなったに違いない。
桃色の髪でも、当時、王家の色としてあがめられていた金が混じった色合いの王子だったが、正義感が強く、面倒くさい王族だった。
二人は明日の国際会議でまたフリー王国を馬鹿にできることを楽しみに、眠りにつき―――。
そして、会議の日の朝を迎えた。
大陸中の様々な国から王族やその代理である重鎮らが集まってくる。
みな、昨日には到着し、王都にある高級ホテルへ滞在している。
そこから豪華な馬車で彼らは現れた。
もうすぐ始まる時間―――――――
やはりウェイ王国は不参加……。
そう誰もが思った時……。
ぶるるるるるるる。
「なっ、なんだあれはっ!?」
「う、うわぁああああ!!!化け物だっ!!!」
ジュエリー王国の王城。会議が行われる宮殿の真上に、巨大な空飛ぶ船が浮かび、その風圧で木々は揺れ、人々は吹き飛ばされそうになる。
「申し訳ありません。」
「ひっ!!?」
真っ赤な髪の美しい男が突然現れ、紳士の礼をとった。
「私たちはフリー王国からの参加者です。こちらは遠いもので、飛空艇で駆けつけたのですが…。残念ながら降りられる場所がなく。そのまま上空に浮かんでいてもよいでしょうか。」
「えっ!!?あなたは一体どうやって急に現れたのですか!?」
「転移魔法です。飛空艇も転移魔法を搭載していますので、ここまで途中はショートカットしました。本当は全員転移魔法で来てもよかったのですけど…、我が主がどうしても現在の国力を示しておきたいとのことでしたので、飛空艇で駆けつけた次第です。」
(どういうことなの?あの国はなんにもない、文明の遅れた魔物の巣じゃなかったの???!)
(しかもあんな麗しい方見たことがないわ!)
会場がざわつき、馬鹿にするはずのフリー王国は、もはや目玉だった。
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