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魔王

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「う、うぁああああ…………!」

斬られた体から泡のように、霧のように黒いものがあふれ出て、しゅんと消えてゆく。



「うううう、いやだいやだいやだ!俺は王子だ!陛下の子だっ!俺が国王になるんだぁ!」

泣きわめきながら幼子のように騒ぐドゥーブル。

「ドゥーブル!」

「お兄さま!」


ああ、きっとこの人はレフト殿下なのだろう。
いつも優秀な兄弟に劣等感を抱き、権力を求め、称賛を求め………そしてそのために自ら兄弟を陥れた。

許せない人だけど、誰かが正しくこの人を愛していたならば変わったのかもしれない。
そしてそれは、劣等感を抱いている相手ではなく、母親か恋人…。

だけど…、自ら歪んでここまできてしまっては、誰が愛してくれるというのだろう。


「お兄さま……。貴方は、廃嫡になり、しょ、処刑されるでしょう……っ。もう、どうしようもありません…。」

「はっ…。いい気味だと思っているだろう!トロン、俺はお前を良いようにこき使ってきたからな…。」

「それでも兄でした。理屈じゃありません…。憎いこともありますけど、兄じゃないですか…。負の感情は自分を傷つけるだけです。何も生まれない…!」

「トロン…。」

旦那様はトロン殿下の肩に優しく手を置いた。



「…………っ、初めは…死にたくないってそれだけだった…、明らかに俺が一番劣っていて…。それがどうしてこうなったのかな。まあ、自業自得かな…。」


憑き物が落ちたような彼に向かって。



その時、槍が飛んできた。





「!!?」



「そんな綺麗に終わらせないわよ…!!!!!」


「く………はあっ!!!」

黒髪の女が、真っ赤な目で髪を振り乱し、ドゥーブルの命を奪った。




「外道!憎い憎い憎い!!!!!私の子を返せ!私の若さを返せ!私の夢を!私の体を元にもどせぇ!!!!!!!」


圧倒的な闇が噴出し、あたりを包む。
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