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旦那様包囲網

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「辺境伯は魔王!陛下も魔王に堕ちた!もはや手先!」

「おっ、お前何を…っ!!」


陛下は騎士たちに取り押さえられ、地下牢へ引きずられるように追いやられた。


「ちょっと…殿下!魔王と言っても辺境伯は何も悪さをしてはいないではないですか!」

「だからこそ、あいつがいい子の振りをしているうちに殺すんだ!」

ドゥーブルはビリーの言葉を無視する。


「……そうだ、どうせあいつは俺の邪魔をする。あいつも悪の手先だ!そうに決まっている。あいつも殺せ!あいつはどこだ!」


「あいつとは誰ですか!」

「トロンの奴に決まってるだろ!だいたいおかしいと思ってたんだ。同じ母親から生まれたのにあんなに出来がいいなんて。魔王の力に決まってる!」


「……狂ってる…。」

「それなのにどうしてみんな殿下の言いなりなんだ?」


ドゥーブルの目は茶色のままだが、時折妖しく赤く光り、言いなりになっている者たちの目はうつろで表情がない…。


「もしかしたら殿下こそ…。」

「でも肌の色は普通だし、髪の色もそうだ。」

「もしかしたらなりかけなのかも…?それとも、私たちの知る定義が間違ってたのか…。」

「このままじゃいかん。なんで私たちが正気なのかはわからないが、トロン殿下を逃がしながら辺境伯の助けを得よう。殿下は嘘だと言っていたが、私は本当にあの方々は勇者たちだと思うから。」


辺境まで数日。

早馬を乗り継いで。


その間にも『辺境伯こそ魔王』という噂が広がり、辺境でも…。






「魔王はきえろーっ!」

「俺たちをよくもだましたなーっ!」

ガシャン!と外から投げられた石で屋敷の窓が割れた。


「どういうこと??確かに『魔王』って言われればそうだけど…。」

「ボクマオウダケド、ワルイマオウジャナイヨ。って可愛く首でも傾げればいいのか?というと、もうそういう段階じゃなさそうだ。」

ぴらっと旦那様が新聞を開いて見せる。

「辺境伯の正体は魔王…。陛下とトロン殿下を傀儡に、人の好い振りを装って潜伏し、国を襲うつもり………。ってこれ…!?」

「ドゥーブルが国王になった。殆どクーデターだ。」


「旦那様、いざという時は私たちも戦いますよ。」

「セバスティアン、レドモンド、レモネ、ブルース…。」



「一体何ごとなんだよ、これはよ!」

「ジル、ジルは無事!?」

「ぎゃあー!ガラスが割れてるぅ!!」

ブンと空間が歪む音がして、実家からお父様とお兄様たち!


「ギャッ!」

キッチンから何者かが侵入して転んだ音。


駆けつけてみると、そこにはドゥーブルの側近のはずのキシリトールとガンバリ。


「お前たちがどうしてここにっ!旦那様は悪い魔王じゃないぞ!お門違いもいいところだ!」


「すみません、うちの殿下がすみません!」




「無礼を承知でお願いいたします!」

少し高めの女性と男性の声。

床に頭をこすりつけるようにしてひれ伏す二人の背後から現れたのは、トロン殿下とカリナ嬢だった。


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