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プロローグ
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新婚初夜―――――――。
それは貴族同士の政略結婚であっても、訪れる夜。
恋愛結婚とは異なり、甘い空気は流れないかもしれないが、貴族として後継を産むため、妻として役目を果たすため。
それは貴族同士の政略結婚であっても、訪れる夜。
愛せない夫であったとしても、貴族の令嬢は、実家のため、己の尊厳を賭けて夫に身を任せるのだ。
ピンクブロンドに翠の瞳。
伯爵家とは名ばかりで、領地収入が極めて少ない辺境も辺境の貧乏貴族の令嬢であるジルコニア=ブリッジ伯爵令嬢は、貧乏ゆえに社交界にも足を踏み入れず、貴族が通う学園に通ったこともない、『隠された令嬢』。
王太子の婚約者に選ばれた高位貴族のご令嬢をはるかに上回る甘い美貌。
長い睫毛に大きい瞳。小柄な体は簡単に折れそうで、腰も細い。
その彼女は純白のウエディングドレスのまま、今日夫になったルシフル=サターン辺境伯に組み敷かれる。
「………っ。ドレスを脱がさないで下さいっ…。子どもの頃の事故で体に傷があるのですっ。」
するりと脱がされる下着。
思わずドレスの上から股を押さえた。
(やべぇえええ!!!俺が男だってバレるじゃねぇかよー!!!)
そう。ジルコニア=ブリッジは、戸籍は女性だが男だった。
娘が欲しい父親が、母親譲りの顔立ちで生まれた末っ子を女性として届け出たのだ。
そのせいで、避けられない政略結婚を受ける羽目に――――――。
やむを得ず辺境伯に嫁いだものの、男だとバレるわけにはいかない。
謀ったなと国を挙げての大問題になるし、そもそも離縁される。
そうなったら貧しい実家への支援どころか、賠償金を請求されてしまう。
「ふふ、私は気にしないよ。魔物が多い領地だから傷なんて当たり前だよね。」
旦那様は多少顔色の悪い色白の肌だが、銀色の長いまっすぐなサラサラヘアーとルビー色の瞳が妖しく艶めかしい。
じりじりとベッドの上で詰め寄られる。
くそう!男バレを防ぐためにも床は俺が主導権を握るつもりだったのにっ!
「………んんっ。」
唇を奪われたかと思ったら、舌が入り、自分のそれを絡めとられた。
息が苦しい。
でも、なんだか……気持ちいい…かも。
唾液が混ざり合い、卑猥な音を立てた。
力が抜ける。
そう、思ったら。
足首を掴まれた。
「花嫁が男でも私は構わないぞ?国一番の美人という触書に嘘はないし、それに…」
ずももも、と魔力が高まる気配がして。
目の前の綺麗な旦那様の頭に大きな山羊のような角が二本生えた。
「え」
「私は『魔王』だからな。男を孕ませることだって私にはできる。だから何も問題ない。」
ぺろりと舌なめずりをする音がした。
部屋の隅の荷ほどきしていない箱が暴れている。
俺が嫁入りに持ち込んだ『自称聖剣』だ。
そういえば、魔王を退治に行け、退治に行けってずっと言ってたっけ…。
まじかー。
本当に魔王っていたんか…。
えぇ…………
どうやら俺は魔王に嫁いだらしい。
男(自称聖剣によれば、しかも勇者?)なのに…。
それは貴族同士の政略結婚であっても、訪れる夜。
恋愛結婚とは異なり、甘い空気は流れないかもしれないが、貴族として後継を産むため、妻として役目を果たすため。
それは貴族同士の政略結婚であっても、訪れる夜。
愛せない夫であったとしても、貴族の令嬢は、実家のため、己の尊厳を賭けて夫に身を任せるのだ。
ピンクブロンドに翠の瞳。
伯爵家とは名ばかりで、領地収入が極めて少ない辺境も辺境の貧乏貴族の令嬢であるジルコニア=ブリッジ伯爵令嬢は、貧乏ゆえに社交界にも足を踏み入れず、貴族が通う学園に通ったこともない、『隠された令嬢』。
王太子の婚約者に選ばれた高位貴族のご令嬢をはるかに上回る甘い美貌。
長い睫毛に大きい瞳。小柄な体は簡単に折れそうで、腰も細い。
その彼女は純白のウエディングドレスのまま、今日夫になったルシフル=サターン辺境伯に組み敷かれる。
「………っ。ドレスを脱がさないで下さいっ…。子どもの頃の事故で体に傷があるのですっ。」
するりと脱がされる下着。
思わずドレスの上から股を押さえた。
(やべぇえええ!!!俺が男だってバレるじゃねぇかよー!!!)
そう。ジルコニア=ブリッジは、戸籍は女性だが男だった。
娘が欲しい父親が、母親譲りの顔立ちで生まれた末っ子を女性として届け出たのだ。
そのせいで、避けられない政略結婚を受ける羽目に――――――。
やむを得ず辺境伯に嫁いだものの、男だとバレるわけにはいかない。
謀ったなと国を挙げての大問題になるし、そもそも離縁される。
そうなったら貧しい実家への支援どころか、賠償金を請求されてしまう。
「ふふ、私は気にしないよ。魔物が多い領地だから傷なんて当たり前だよね。」
旦那様は多少顔色の悪い色白の肌だが、銀色の長いまっすぐなサラサラヘアーとルビー色の瞳が妖しく艶めかしい。
じりじりとベッドの上で詰め寄られる。
くそう!男バレを防ぐためにも床は俺が主導権を握るつもりだったのにっ!
「………んんっ。」
唇を奪われたかと思ったら、舌が入り、自分のそれを絡めとられた。
息が苦しい。
でも、なんだか……気持ちいい…かも。
唾液が混ざり合い、卑猥な音を立てた。
力が抜ける。
そう、思ったら。
足首を掴まれた。
「花嫁が男でも私は構わないぞ?国一番の美人という触書に嘘はないし、それに…」
ずももも、と魔力が高まる気配がして。
目の前の綺麗な旦那様の頭に大きな山羊のような角が二本生えた。
「え」
「私は『魔王』だからな。男を孕ませることだって私にはできる。だから何も問題ない。」
ぺろりと舌なめずりをする音がした。
部屋の隅の荷ほどきしていない箱が暴れている。
俺が嫁入りに持ち込んだ『自称聖剣』だ。
そういえば、魔王を退治に行け、退治に行けってずっと言ってたっけ…。
まじかー。
本当に魔王っていたんか…。
えぇ…………
どうやら俺は魔王に嫁いだらしい。
男(自称聖剣によれば、しかも勇者?)なのに…。
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