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辺境伯への嫁入り

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「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。あああっぁぁぁぁぁ。ジルぅぅううう!」

厳かな教会。

このあたりで一番立派な辺境伯領の教会で、俺は結婚式を挙げている。

バージンロードをともに歩く父がうるさい。
恥ずかしい。
普通にしてたらイケおじのはずなのだが、涙と鼻水でとんでもないことになっているぞ。


パイプオルガンの音がかき消されて、参列者が何とも言えない顔をしているじゃないか。



「ブリッジ伯爵家のお嬢さんって本当に存在したのね…。」

「国一番の美人だって本当だったんだな。そういえば伯爵の奥さんも相当の美人だったか…。」

「あんなに嘆き悲しんで。ずっと手元に置いておくはずだった愛娘をとられて悲しいのだろう。」

「あれだけ夜会で自慢していれば……。自業自得だよなあ。」


めっちゃ小声の会話だけど、俺は耳がいいから聞こえちゃうんだよな。
参列者は俺のことをイマジナリー娘だと思っていたようだ。



辺境伯には両親はいない。
若くして一人になり、爵位を継いだらしい。
というのは、誰も詳しいことを知らないからだ。
まったくミステリアスな方である。

ゆっくりとバージンロードを進んだ先に、この世の者とは思えない美貌の伯爵が前に立つ。

あれほど弱弱しそうな顔色なのに、何故か強者感がある。


「病める時も健やかなるときも…。」


俺はどこか上の空で。

この顔となら男だけどイケるかもしれないなと思っていた。


邸に行ったらまずはトイレに行って…。
ナカを綺麗にして、潤滑油で慣らして………。


そんな不埒なことを考えながら神の前でする誓いのキスは、神様に叱られてしまうだろうか。





結婚式の後は馬車で辺境伯の屋敷に移動し、披露宴では夫の隣でヒール履いてドレス姿でエンドレス淑女の微笑マジ疲れた。
なにかは口にしたと思うけど、何を飲み食いしたのかも覚えていない。

屋敷の使用人はめっちゃ多いと思う。
ウチはいなかったから、使用人の名前と顔を覚えるの………頑張ろうと思う。

あとウチ以外の近所の貴族家の顔と名前な………。


通された自分の部屋には既に荷物が置いてあって、大きな天蓋付きのベッドはすごく気持ちよさそうにふんわりしている。

ヒールを脱いで、ベッドに腰掛け、足をマッサージしていると、睡魔が襲ってきた。



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