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ド貧乏の伯爵家
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国境沿いを魔物の棲み処で囲まれているフリー王国。
自然豊か!風光明媚!といえば聞こえはいいが、ド田舎である。
国境沿いがそんな状況なので、外交もままならず、鎖国をしていないのにどの国も近寄らない。
「もしかして魔王が住んでいるんじゃないの?」
「最終ダンジョンに最も近い国www」
と諸外国に言われているのも知っている…。
仕方ないので国内で経済を循環させるわけだが、我がブリッジ伯爵家の領地は国境沿いの湿地帯……。
開拓もできず、これといった特産もない。なんもない。
なので、我が領では税金を格安にし、領主が貸家を経営することで領民を呼び込み、冒険者の受け皿となっているのだ。
薄利多売で回せたらいいが、国に納める税金もあるわけで……。
そんなわけで我がブリッジ伯爵家の三兄弟も、貴族が通う学園にすら通わず、ひたすら冒険者稼業で金策に走っているのである!
「うぉりゃあ!」
魔物のスポーンスポットを見つけ、相棒を振るうと、魔物は一撃で倒れていく。
相棒は湿地で蓮根掘りの時に偶然見つけた金ピカの剣だ。
売り飛ばそうと思ったが、何故か俺以外が持つと重たいらしく、売れなかったので自分で使っている。
『だぁかぁらあ!!そんなふうに力任せに振らないでッ!我は聖剣なんだぞッ!………だいたいジルコンときたら…ちっとも魔王討伐の旅に出てくれないし、レンコン掘りとそのへんの雑魚切るのに我を使うし…。いつも言ってるけど勇者なんだから早く魔王を』
他の誰にも聞こえていないらしいが、自分を聖剣と言い張る煩い剣だ。
「はいはい。スポーン美味しいです。」
「ジルコーン、そろそろ上がるかぁ?」
ずしーんずしーんと音を立てながらやってきたのはすぐ上の兄のシトリンだ。
190cmはあろうかという長身で鍛え抜かれたマッチョな躰。
金髪は短く切りそろえられ、清潔感溢れ、凛々しいハンサムな顔立ち!
冒険者ギルドのある隣の辺境伯領にいけば、女の子たちにモッテモテの兄…。
そんな兄が自分の背を大きく上回るようなオークキングを担いでやってくる。
返り血塗れで。
「おやシトリンも終わり?私も狩り尽くしてしまわないうちに終わろうかと。」
亡き母譲りの真っ赤な髪一括りに結んだ長髪の長男が、魔法で一撃脳天を貫かれたワイバーンを宙に浮かせて歩いてくる。
クンツァイト兄さんは、シトリン兄さんとは真逆で回復魔法や攻撃魔法が得意。
全部独学でこれだけの魔法使いなのだから、学園に行けてたら、きっと優秀な成績を修めて、今頃きっとお城で働いていたと思うんだけど…。
うちの無能が入学金や授業料を払えないばっかりに。
後継者なんだし、ツァイ兄さんだけでも通わせればよかったのにさ。
そんなんだから、うちはずっと貧乏なんだと思う。
因みにツァイ兄さんはシトリン兄さんよりはやや中性的な麗しい顔立ちで、これまたモテモテなのだ。
「うん、兄さん。俺ももう終わるよ。だけどスポーン美味しいからちょっとだけ待ってて。」
ばしんばしんと倒していく。
「うげぇ…ヘルハウンドじゃん……。おま……。」
「美味しいでーす♪」
「ほんと、うちの可愛いジルコンは黙ってれば、どこの貴族令嬢よりも一番可愛いのになぁ。小柄だしピンクブロンドに大きな瞳は翠でまるで花の妖精さんのようだし、華奢で体だって程よく柔らかいのにどうしてこうなったんだろうね…。」
「ツァイ兄。どこの貴族令嬢よりもってのは言いすぎじゃないのか?」
「国一番の美女って言われてる王太子の婚約者な?こないだ辺境伯領にお忍びで来ててナンパされた。辺境だったらバレないって思ってるんだろうな。間近で見たけどうちのジルコンの方が10倍可愛い。」
「うっわー。次期王妃がそれってないわー。」
むっかー!
可愛い可愛い言うなし!気にしてるんだからなっ!
思う存分稼いだので、スポーンを壊して狩は終わった。
冒険者ギルドで自宅用のお肉以外を換金したら、ようやく帰宅である。
「すまんっ!ジルコン、辺境伯家の嫁に行ってくれぇ!!!」
「は!?」
帰宅したら玄関には、土下座している父(無能)がいた。
自然豊か!風光明媚!といえば聞こえはいいが、ド田舎である。
国境沿いがそんな状況なので、外交もままならず、鎖国をしていないのにどの国も近寄らない。
「もしかして魔王が住んでいるんじゃないの?」
「最終ダンジョンに最も近い国www」
と諸外国に言われているのも知っている…。
仕方ないので国内で経済を循環させるわけだが、我がブリッジ伯爵家の領地は国境沿いの湿地帯……。
開拓もできず、これといった特産もない。なんもない。
なので、我が領では税金を格安にし、領主が貸家を経営することで領民を呼び込み、冒険者の受け皿となっているのだ。
薄利多売で回せたらいいが、国に納める税金もあるわけで……。
そんなわけで我がブリッジ伯爵家の三兄弟も、貴族が通う学園にすら通わず、ひたすら冒険者稼業で金策に走っているのである!
「うぉりゃあ!」
魔物のスポーンスポットを見つけ、相棒を振るうと、魔物は一撃で倒れていく。
相棒は湿地で蓮根掘りの時に偶然見つけた金ピカの剣だ。
売り飛ばそうと思ったが、何故か俺以外が持つと重たいらしく、売れなかったので自分で使っている。
『だぁかぁらあ!!そんなふうに力任せに振らないでッ!我は聖剣なんだぞッ!………だいたいジルコンときたら…ちっとも魔王討伐の旅に出てくれないし、レンコン掘りとそのへんの雑魚切るのに我を使うし…。いつも言ってるけど勇者なんだから早く魔王を』
他の誰にも聞こえていないらしいが、自分を聖剣と言い張る煩い剣だ。
「はいはい。スポーン美味しいです。」
「ジルコーン、そろそろ上がるかぁ?」
ずしーんずしーんと音を立てながらやってきたのはすぐ上の兄のシトリンだ。
190cmはあろうかという長身で鍛え抜かれたマッチョな躰。
金髪は短く切りそろえられ、清潔感溢れ、凛々しいハンサムな顔立ち!
冒険者ギルドのある隣の辺境伯領にいけば、女の子たちにモッテモテの兄…。
そんな兄が自分の背を大きく上回るようなオークキングを担いでやってくる。
返り血塗れで。
「おやシトリンも終わり?私も狩り尽くしてしまわないうちに終わろうかと。」
亡き母譲りの真っ赤な髪一括りに結んだ長髪の長男が、魔法で一撃脳天を貫かれたワイバーンを宙に浮かせて歩いてくる。
クンツァイト兄さんは、シトリン兄さんとは真逆で回復魔法や攻撃魔法が得意。
全部独学でこれだけの魔法使いなのだから、学園に行けてたら、きっと優秀な成績を修めて、今頃きっとお城で働いていたと思うんだけど…。
うちの無能が入学金や授業料を払えないばっかりに。
後継者なんだし、ツァイ兄さんだけでも通わせればよかったのにさ。
そんなんだから、うちはずっと貧乏なんだと思う。
因みにツァイ兄さんはシトリン兄さんよりはやや中性的な麗しい顔立ちで、これまたモテモテなのだ。
「うん、兄さん。俺ももう終わるよ。だけどスポーン美味しいからちょっとだけ待ってて。」
ばしんばしんと倒していく。
「うげぇ…ヘルハウンドじゃん……。おま……。」
「美味しいでーす♪」
「ほんと、うちの可愛いジルコンは黙ってれば、どこの貴族令嬢よりも一番可愛いのになぁ。小柄だしピンクブロンドに大きな瞳は翠でまるで花の妖精さんのようだし、華奢で体だって程よく柔らかいのにどうしてこうなったんだろうね…。」
「ツァイ兄。どこの貴族令嬢よりもってのは言いすぎじゃないのか?」
「国一番の美女って言われてる王太子の婚約者な?こないだ辺境伯領にお忍びで来ててナンパされた。辺境だったらバレないって思ってるんだろうな。間近で見たけどうちのジルコンの方が10倍可愛い。」
「うっわー。次期王妃がそれってないわー。」
むっかー!
可愛い可愛い言うなし!気にしてるんだからなっ!
思う存分稼いだので、スポーンを壊して狩は終わった。
冒険者ギルドで自宅用のお肉以外を換金したら、ようやく帰宅である。
「すまんっ!ジルコン、辺境伯家の嫁に行ってくれぇ!!!」
「は!?」
帰宅したら玄関には、土下座している父(無能)がいた。
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