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恋敵
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「嵐!」
夢じゃないかな。
目の前には嵐。
それに、嵐のご両親…。
そして???
「……一体これはどういうことだ。夢をみているのか。」
「塚本くん。夢じゃないよ。実は信じられないかもしれないんだけど、俺のお母さんは異世界人で、事故の時、二人は異世界に飛ばされていたんだよ。そして、俺は次元を渡る装置を開発して…。異世界に逃げたんだ。」
荒唐無稽な話だが………。
信じざるを得ない。
目の前で何もないところから発光とともに現れたのだから。
「よかった。生きていて…。嵐。」
思わず嵐を抱きしめ―――――ようとする。
私の知らない男が、さっと嵐を自分に寄せた。
「ランは私の婚約者だ。家族でもないのに触れるのは、だめだ。」
「婚約者ぁ?」
前髪をクシャっと指で絡めてくるくるくるくる回しながら、男を見た。
随分体格がいいな。
顔はまあ、男前だろう。
頭も悪くなさそうだ。
ちょっと憧れてる海外のスターにちょっと似てる。
「婚約、したのか。男と。」
嵐が恥ずかしそうに顔を赤くした。
「異世界は女の子が少なくって。男同士は当たり前みたいで。とても優しい人なんだよ。」
異世界では男同士でも子どもができるらしい。
なにそれ羨ましい。
私もその世界に生まれたかった。
嵐に、次元を超える装置を見せてもらった。
あまり渡り手を増やしたくないらしい。
初めは畳一畳分くらいの装置で一般住宅くらいの範囲を根こそぎ転移する装置だったようだが、だいぶ小型化して、範囲も特定できるようになったようだ。
「今は、父さん母さんのいる屋敷と塚本のいるところを座標にしてつなげたんだ。塚本製薬の場所は覚えてたから。
できればこの部屋が良いと思って。昔、父さんとお邪魔して知ってたからね。」
「こちらは嵐がいなくなって、弁護士の人を通じて色々あったんだよ。」
嵐の名声は戻った。
あの親子は追い出して、須藤家の墓は塚本家が管理しているし、屋敷も管理している。
こちらにもう、ずっといてくれるのだろうか。
……おそらくそうではないだろうけど。
「何でこちらにまた来たのか、聞いていい?」
嵐の婚約者の、向こうでは治せない『白血病疑い』。
そのために来たという。
「剣と魔法のファンタジーな異世界なのに、回復魔法はないんだな。」
「怪我は治せるのだけど、病気は難しいのよ。」
確かになんでもかんでも治せたら、異世界人は不老不死になるだろう。
嵐の母親の言葉がすんなり入った。
この男は恋敵。
だけど、嵐には幸せになって欲しい。
「分かった。いいよ。うちの系列で検査しよう。なんならここで治療までやってほしいくらいだけど…。1年くらいは見てもらわないといけないからな。」
「そんなには難しい。」
「まあ、まずは検査しよう。それじゃあ、今日は遅いから旧須藤家に案内するよ。ホテルとしてオープンしたけど、嵐たちが元々使っていた部屋は手つかずにしているんだ。我が家でくつろぐといいよ。」
元々、時間外で残業していたけど、話をしている間にすっかり夜になった。
運転手を呼んで、送り届けることにした。
父さんたちも呼んで、旧須藤家でみんなで夕飯を食べながら話をしよう。
きっと、父さんも喜ぶはずだから。
夢じゃないかな。
目の前には嵐。
それに、嵐のご両親…。
そして???
「……一体これはどういうことだ。夢をみているのか。」
「塚本くん。夢じゃないよ。実は信じられないかもしれないんだけど、俺のお母さんは異世界人で、事故の時、二人は異世界に飛ばされていたんだよ。そして、俺は次元を渡る装置を開発して…。異世界に逃げたんだ。」
荒唐無稽な話だが………。
信じざるを得ない。
目の前で何もないところから発光とともに現れたのだから。
「よかった。生きていて…。嵐。」
思わず嵐を抱きしめ―――――ようとする。
私の知らない男が、さっと嵐を自分に寄せた。
「ランは私の婚約者だ。家族でもないのに触れるのは、だめだ。」
「婚約者ぁ?」
前髪をクシャっと指で絡めてくるくるくるくる回しながら、男を見た。
随分体格がいいな。
顔はまあ、男前だろう。
頭も悪くなさそうだ。
ちょっと憧れてる海外のスターにちょっと似てる。
「婚約、したのか。男と。」
嵐が恥ずかしそうに顔を赤くした。
「異世界は女の子が少なくって。男同士は当たり前みたいで。とても優しい人なんだよ。」
異世界では男同士でも子どもができるらしい。
なにそれ羨ましい。
私もその世界に生まれたかった。
嵐に、次元を超える装置を見せてもらった。
あまり渡り手を増やしたくないらしい。
初めは畳一畳分くらいの装置で一般住宅くらいの範囲を根こそぎ転移する装置だったようだが、だいぶ小型化して、範囲も特定できるようになったようだ。
「今は、父さん母さんのいる屋敷と塚本のいるところを座標にしてつなげたんだ。塚本製薬の場所は覚えてたから。
できればこの部屋が良いと思って。昔、父さんとお邪魔して知ってたからね。」
「こちらは嵐がいなくなって、弁護士の人を通じて色々あったんだよ。」
嵐の名声は戻った。
あの親子は追い出して、須藤家の墓は塚本家が管理しているし、屋敷も管理している。
こちらにもう、ずっといてくれるのだろうか。
……おそらくそうではないだろうけど。
「何でこちらにまた来たのか、聞いていい?」
嵐の婚約者の、向こうでは治せない『白血病疑い』。
そのために来たという。
「剣と魔法のファンタジーな異世界なのに、回復魔法はないんだな。」
「怪我は治せるのだけど、病気は難しいのよ。」
確かになんでもかんでも治せたら、異世界人は不老不死になるだろう。
嵐の母親の言葉がすんなり入った。
この男は恋敵。
だけど、嵐には幸せになって欲しい。
「分かった。いいよ。うちの系列で検査しよう。なんならここで治療までやってほしいくらいだけど…。1年くらいは見てもらわないといけないからな。」
「そんなには難しい。」
「まあ、まずは検査しよう。それじゃあ、今日は遅いから旧須藤家に案内するよ。ホテルとしてオープンしたけど、嵐たちが元々使っていた部屋は手つかずにしているんだ。我が家でくつろぐといいよ。」
元々、時間外で残業していたけど、話をしている間にすっかり夜になった。
運転手を呼んで、送り届けることにした。
父さんたちも呼んで、旧須藤家でみんなで夕飯を食べながら話をしよう。
きっと、父さんも喜ぶはずだから。
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