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へ、平民…っ!?
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「ずいぶん久しぶりだね。シュトローム。」
ふふんと謎の上から目線でドリアは前に出た。
腕にはマリアがぶら下がっている。
「ドリアさま…………」
シュトロームは彼らを見据える。
背筋を伸ばし、まっすぐと。
シュトロームの後ろには、マリーナ公爵家とセチア王国、マリーナ王国がある。
「お前が男と逢い引きしていたことは調べがついているんだ!頻繁に公爵家に家紋のない馬車が止まっていた!それに、学校を休学し、婚約者としての務めを果たさない!休学するような弱さでは、将来の妃に相応しくない!よって私はシュトロームとの婚約を破棄し、その間私を支えてくれたマリア=フール令嬢と婚約したい!よろしいですよね?父上!」
各国の貴賓の中から父親のパスタを見つけ、ドリアが吠える。
「えっ………?好きにしたらいいんじゃ、ないかな?」
パスタの目はきょろきょろと空をさまよう。
勝ち誇ったような顔になる二人だが、パスタの後ろから気品漂う黒の正装を着て、威厳あるたたずまいの少年が現れた。
「久しぶりですね、兄上?」
「グラタン。相変わらず地味だな!兄を祝いにわざわざ来たのか?だがお前にはまだこのような祝宴は早い。」
「ふふっ、面白いですね。相変わらず奇想天外な人だ。人と物の見方が違う。だから、婚約者の家に来たセチア王国の兄からの遣いを間男だなんて勘違いをするのです。大体、兄上の浮気が先でしょう?自分の浮気を棚に上げて。休学だって、兄上の暴行が原因の休養でしょう?あんなに素敵で可憐なシュトロームをないがしろにして…。兄上こそ果たして婚約者の務めを果たしたのか…。」
「…………お前、シュトロームが好きだったのか?いいんじゃないか?」
「兄上。………いえ、ドリア。種明かしをしましょう。プリ=ン=セチア王太子殿下、クレア=シェル=マリーナ陛下並びにグレン=シェル=マリーナ王太子殿下。それでは、始めさせていただきます。各々、我が国の汚点のせいで仰りたいこともあろうと思いますが、私からまずは参ります。」
「???グラタン??」
「兄上の愚行は今に始まったことにあらず。着眼点のみで実行力のない、努力を厭い、常に私に公務や課題を押し付けてきた。そればかりか、留学先のマリーナ王国の学園でも、貴方は課題の押し付けやテストのすり替えを行いましたね?」
「私がそんなことをするわけないだろう。私は天才だぞ?ははぁ、お前は王太子の座を狙って…!!」
「兄上についていた影は留学先には同行しておりません。ご存じなかったでしょうが、留学先では父上の影がついておりました。ゆえに、父上はやっと真実を知ったのですよ。」
マリーナ陛下が続ける。息子で彼に瓜二つの王太子のグレンは、陛下の隣で冷ややかな笑みを浮かべて立つ。
姉や弟が既に嫁いでいて良かったと思う一方、そのせいでこの馬鹿の婚約者をしなければならなかった従弟を思うと、はらわたが煮えくり返っていたが、顔には出さない。
叔母と父がこの件について話し合っていた頃は、丁度外交で長期間ノーザン王国に出向いていたため、救えなかった自分にも腹が立っている。
「わが国でも、学園内を調査した。すると、我が国の汚点…いや汚物ともいえるあばずれの男爵令嬢の色香に惑わされた愚かな王子が、事もあろうに我が国の王族で婚約者であるシュトローム………私の可愛い可愛い大事な甥を虐げていることが判明した。しかも、暴力を振るうなど言語道断!」
「かわいそうに、生き別れの兄を頼って我が国に来た時は、痣だらけででした。全く同じ王族、いや男として信じられませんね。」
プリ殿下も続けた。
「あなたの頭では理解できなかったのかもしれませんが、チーズ王国の経済の発展は、マリーナ王国の協力があって成り立っているのです。そして、その中核を担っているのは、マリーナ王国では公爵家。シュトローム様のご両親です。それを、あなたは、虐げたのですよ?どうなるか、まだ分かりませんか?」
「そ……。それはっ…。」
グラタンの気迫にのまれる。
「あなたの愚かな行いを清算し、国民への負担を最小限にするため、父は退位しました。即位したのは私。あなたは、廃嫡。実はあなたは、今、平民です。」
「へ、へいみん・・・・!!!?」
ドリアはあんぐりと口を開けて叫んだ。
ふふんと謎の上から目線でドリアは前に出た。
腕にはマリアがぶら下がっている。
「ドリアさま…………」
シュトロームは彼らを見据える。
背筋を伸ばし、まっすぐと。
シュトロームの後ろには、マリーナ公爵家とセチア王国、マリーナ王国がある。
「お前が男と逢い引きしていたことは調べがついているんだ!頻繁に公爵家に家紋のない馬車が止まっていた!それに、学校を休学し、婚約者としての務めを果たさない!休学するような弱さでは、将来の妃に相応しくない!よって私はシュトロームとの婚約を破棄し、その間私を支えてくれたマリア=フール令嬢と婚約したい!よろしいですよね?父上!」
各国の貴賓の中から父親のパスタを見つけ、ドリアが吠える。
「えっ………?好きにしたらいいんじゃ、ないかな?」
パスタの目はきょろきょろと空をさまよう。
勝ち誇ったような顔になる二人だが、パスタの後ろから気品漂う黒の正装を着て、威厳あるたたずまいの少年が現れた。
「久しぶりですね、兄上?」
「グラタン。相変わらず地味だな!兄を祝いにわざわざ来たのか?だがお前にはまだこのような祝宴は早い。」
「ふふっ、面白いですね。相変わらず奇想天外な人だ。人と物の見方が違う。だから、婚約者の家に来たセチア王国の兄からの遣いを間男だなんて勘違いをするのです。大体、兄上の浮気が先でしょう?自分の浮気を棚に上げて。休学だって、兄上の暴行が原因の休養でしょう?あんなに素敵で可憐なシュトロームをないがしろにして…。兄上こそ果たして婚約者の務めを果たしたのか…。」
「…………お前、シュトロームが好きだったのか?いいんじゃないか?」
「兄上。………いえ、ドリア。種明かしをしましょう。プリ=ン=セチア王太子殿下、クレア=シェル=マリーナ陛下並びにグレン=シェル=マリーナ王太子殿下。それでは、始めさせていただきます。各々、我が国の汚点のせいで仰りたいこともあろうと思いますが、私からまずは参ります。」
「???グラタン??」
「兄上の愚行は今に始まったことにあらず。着眼点のみで実行力のない、努力を厭い、常に私に公務や課題を押し付けてきた。そればかりか、留学先のマリーナ王国の学園でも、貴方は課題の押し付けやテストのすり替えを行いましたね?」
「私がそんなことをするわけないだろう。私は天才だぞ?ははぁ、お前は王太子の座を狙って…!!」
「兄上についていた影は留学先には同行しておりません。ご存じなかったでしょうが、留学先では父上の影がついておりました。ゆえに、父上はやっと真実を知ったのですよ。」
マリーナ陛下が続ける。息子で彼に瓜二つの王太子のグレンは、陛下の隣で冷ややかな笑みを浮かべて立つ。
姉や弟が既に嫁いでいて良かったと思う一方、そのせいでこの馬鹿の婚約者をしなければならなかった従弟を思うと、はらわたが煮えくり返っていたが、顔には出さない。
叔母と父がこの件について話し合っていた頃は、丁度外交で長期間ノーザン王国に出向いていたため、救えなかった自分にも腹が立っている。
「わが国でも、学園内を調査した。すると、我が国の汚点…いや汚物ともいえるあばずれの男爵令嬢の色香に惑わされた愚かな王子が、事もあろうに我が国の王族で婚約者であるシュトローム………私の可愛い可愛い大事な甥を虐げていることが判明した。しかも、暴力を振るうなど言語道断!」
「かわいそうに、生き別れの兄を頼って我が国に来た時は、痣だらけででした。全く同じ王族、いや男として信じられませんね。」
プリ殿下も続けた。
「あなたの頭では理解できなかったのかもしれませんが、チーズ王国の経済の発展は、マリーナ王国の協力があって成り立っているのです。そして、その中核を担っているのは、マリーナ王国では公爵家。シュトローム様のご両親です。それを、あなたは、虐げたのですよ?どうなるか、まだ分かりませんか?」
「そ……。それはっ…。」
グラタンの気迫にのまれる。
「あなたの愚かな行いを清算し、国民への負担を最小限にするため、父は退位しました。即位したのは私。あなたは、廃嫡。実はあなたは、今、平民です。」
「へ、へいみん・・・・!!!?」
ドリアはあんぐりと口を開けて叫んだ。
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