天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
50 / 90

へ、平民…っ!?

しおりを挟む
「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」

アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。

「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
 この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
 この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
 優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
 まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」

その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。

「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」

例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。

「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
 あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
 ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
 そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
 他にも条件がありますわ」
「条件?」

アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。

「まず、『下級魔法師』について。
 基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
 この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」

「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
 そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
 何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」

「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
 しかし中等魔法からはそうはいきません。
 10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
 ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」

そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……

「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」

「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
 単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」

改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……

「そして『上級魔法師』。
 お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
 貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」

高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。

「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
 あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
 得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」

ふむ、そういうものなのか。

「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
 これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」

いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
 という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
 おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
 ふわぁー……
 話終わったのー?」

「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
 まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」

「アリスリーチェ様!
 次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
 『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
 女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
 アナタもしかして色々とダメなのでは?」

そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

愛しの妻は黒の魔王!?

ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」 ――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。 皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。 身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。 魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。 表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます! 11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転生×召喚

135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。 周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。 これはオマケの子イベント?! 既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。 主人公総受けです、ご注意ください。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...