天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
44 / 90

攻め会

しおりを挟む
 3年生は自由登校となり、光琉は仕事が忙しく、度々学校を休むようになった。

 と言っても毎朝迎えに来て学校まで送ってくれるし、帰りは光琉が来れない日も、香坂家の運転手さんが迎えに来てくれる。

「日向、絶対に1人にならないって約束して」

 学校に着き、車を降りてから光琉に抱きしめられフェロモンを付けてもらう。俺の家の前と、毎朝2回付けてくれるのが嬉しい。と実はこっそり思っている。

「分かってる」
「それ、毎日やってて飽きないのか?」

 毎朝俺を玄関で待っていてくれる宇都宮からしたら、鬱陶しくて仕方ないかもしれないけど。

「光琉も気を付けてな」
「うん。行ってくるね」
「うん…」

 離れ離れになるのが寂しい。

 光琉とは付き合う前からずっと一緒にいて…そりゃあ休みの日とか会わない日もあったけど、学校で一緒にいない日なんてなかったら。

「ごめんね? 明日は学校休まずに済むと思うから」
「うん…」

 ダメだって分かっているのに、光琉の服を掴む手を離せない。 

「あぁ~! 日向が可愛すぎる!!」

 もう一度抱きしめてほしくて光琉に念を送ると、気持ちが通じて抱きしめてくれた。

「日向、そろそろチャイムなるぞ」
「先が思いやられるな」
「大学では学部が違って離れることも増えるのになぁ」

 と、いつの間にか近くにいた一樹と宇都宮が話しているけど、聞こえないふり。

「はいはい。もうピヨちゃん行くよ~」
「はぁい…」

 俺の頬に手を当て額にキスをしてから、行ってくるねと光琉が車に乗り込んでしまった。

「気を付けてな」

 道中もだけど、大人の女性とかオメガとかにも…。

 あーあ、行っちゃった。

「オメガもフェロモンが付けられたらいいのに」

 つい口走ってしまった言葉に、宇都宮が答えてくれる。

「付けられるぞ?」
「え!? そうなのか?」

 って…そりゃそうか。オメガのフェロモンにも匂いがあるんだから。

「でも薬飲んでたら分かんないじゃん」
「まぁな」
「期待させんなよな」

 しかも番になったら番相手にしか匂いも……それ以前の問題があったわ。

「あのさ。オメガのフェロモンってアルファみたいに威嚇? できるのか?」

 一樹、俺も今それに気が付いたよ。

「匂いがつくだけだな」
「だよな。威嚇ができたらいいのに」

 光琉が惑わされることなんてないって分かってる。でも、心配なんだ。

「ピヨちゃんさ、運命の番なのに心配しすぎ」
「………あっ……」

 世のオメガが心配する、番のアルファの運命の番。俺、その心配をする必要なかったんだった。

「あはは~」
「本当にさ、お前ら恵まれてる自覚を持てよな」
「ごめんごめん」
「光琉も光琉で毎朝俺に威嚇してくるし。なら任せるなって話しだよ」

 宇都宮に威嚇してたんだ。それは全く気付かなかったわ。

「それより日向。高校卒業したら同棲するんだよな?」
「その予定。でも俺、まだ光琉のご両親に挨拶してないんだよな」

 番うってことは先に結婚があるってこと。その逆も然り。それに俺達は結婚の約束もしているわけで…

「番う前だしそうなるだろ」
「? でも俺の親には挨拶してくれたぞ?」

 そういうのって先に挨拶するもんじゃないのか?

「いや、当たり前だから。もし俺が光琉でも同じようにする」

 なぜ?

「分かった! いくら家族でも番う前のオメガを自分以外のアルファに会わせたくないんだ!」

 1人で会うんじゃなく光琉もいるのに? アルファって心配性だよな。

「なんでピヨちゃんより一樹の方が理解が早いんだよ」
「日向がこれだからな。周りがしっかりしちゃうんだって」
「なるほど。それは言えてるな」

 軽くディスられてる気もするが。

「でだ。話し戻すけど、家決まったのか?」
「あ、うん。大学の近くにした」

 イコール高校の近くってことだけど、大学の正門に近い場所に決めたんだ。

「賃貸?」
「えっと…」
「そんな訳ないだろ。な、ピヨちゃん?」
「光琉が……買っちゃった」
「は!?」

 うん。そりゃ一樹も驚くよな。俺も驚いたし。

 俺、煩すぎなければどこでもって希望を出しちゃったから…ここなら煩くないでしょ? ってマンションの最上階を買ったらしい。

「遊びに行きたい!」
「いいけど」
「あー、光琉の許可をとってからにしろよ。多分一樹は大丈夫だと思うけど。嫌な顔はされるだろうな」
「おっけ」

 なんで?

「………ピヨちゃん。アルファのこともう少し勉強しような」

 そういえば家に一樹がよく来るって前に話したら、光琉、嫌そうな顔してたかも。なんとなくそれからは家に呼ばないようにしてたんだった。

「アルファって大変だな」

 まぁ…俺も家族以外は一樹と蓮、宇都宮と稜ちゃん以外は呼びたくないけどな。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

魔性の男は純愛がしたい

ふじの
BL
子爵家の私生児であるマクシミリアンは、その美貌と言動から魔性の男と呼ばれていた。しかし本人自体は至って真面目なつもりであり、純愛主義の男である。そんなある日、第三王子殿下のアレクセイから突然呼び出され、とある令嬢からの執拗なアプローチを避けるため、自分と偽装の恋人になって欲しいと言われ​─────。 アルファポリス先行公開(のちに改訂版をムーンライトノベルズにも掲載予定)

処理中です...