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あれはマリーナ王国の
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「全く世話が焼けるよ、カシューも。」
バルコニーに向かった二人を見て、殿下は肩をすくめた。
「しかし…。」
カシューは変だと思わなかったのだろうか。
異世界人にしては、彼はこの国の言葉を流暢に話す。
『天才』だとしても、この短期間ではありえないこと。
異世界では、貴族のマナーやワルツなんて覚えないはずだが、彼は多少周りを見様見真似しているとはいっても、基礎ができている。
胸元に光るペンダントを見て、合点がいった。
あれは、『マリーナ王国』の王家の紋章の入ったペンダント。
小さな宝石だし、気づきにくいかもしれないが、石を透かせば紋章が透けるように加工されたものだ。
あのサイズは元々は子ども用のイヤリングだろう。
昔、マリーナ王国の王女が異世界に飛んだ。
そして、16年前に夫を連れて帰って来た。
科学者夫婦だ。
彼らには異世界に残した息子がいたという。
王女は子どもの身で異世界に一人飛ばされ、苦労を重ね、そして素晴らしい伴侶を得た。
子どもと自分に石を分け、言葉やマナー、ダンスを教えたに違いない。
まさか帰れるとは思っていなかっただろうから、そうやって故郷を想う心を慰めていたのだろう。
この世界の王女だった自分を異世界に残すために、伝えたかったのかもしれない。
かの王女は今ではマリーナ王国の王妹として女公爵の立場にある。
つまり、シュドーはマリーナ王国の王族だ。
王族であればこの世界の高貴な血筋と結婚したとしても、なんの障害もあるまい。
「さて、マリーナ王国に一筆贈るか。」
親子は再会を果たすべきだ。
だが―――――――
シュドーは才能が有り、まだ若く美しい。
彼を娶りたいと多くの王族や高位貴族が手をあげるだろう。
彼が欲しいなら、さっさと心を得てしまえ。
私が当て馬にならないと意気地が出ないんだから、世話が焼ける。
そして、ちゃんと守れよ?カシュー。
バルコニーに向かった二人を見て、殿下は肩をすくめた。
「しかし…。」
カシューは変だと思わなかったのだろうか。
異世界人にしては、彼はこの国の言葉を流暢に話す。
『天才』だとしても、この短期間ではありえないこと。
異世界では、貴族のマナーやワルツなんて覚えないはずだが、彼は多少周りを見様見真似しているとはいっても、基礎ができている。
胸元に光るペンダントを見て、合点がいった。
あれは、『マリーナ王国』の王家の紋章の入ったペンダント。
小さな宝石だし、気づきにくいかもしれないが、石を透かせば紋章が透けるように加工されたものだ。
あのサイズは元々は子ども用のイヤリングだろう。
昔、マリーナ王国の王女が異世界に飛んだ。
そして、16年前に夫を連れて帰って来た。
科学者夫婦だ。
彼らには異世界に残した息子がいたという。
王女は子どもの身で異世界に一人飛ばされ、苦労を重ね、そして素晴らしい伴侶を得た。
子どもと自分に石を分け、言葉やマナー、ダンスを教えたに違いない。
まさか帰れるとは思っていなかっただろうから、そうやって故郷を想う心を慰めていたのだろう。
この世界の王女だった自分を異世界に残すために、伝えたかったのかもしれない。
かの王女は今ではマリーナ王国の王妹として女公爵の立場にある。
つまり、シュドーはマリーナ王国の王族だ。
王族であればこの世界の高貴な血筋と結婚したとしても、なんの障害もあるまい。
「さて、マリーナ王国に一筆贈るか。」
親子は再会を果たすべきだ。
だが―――――――
シュドーは才能が有り、まだ若く美しい。
彼を娶りたいと多くの王族や高位貴族が手をあげるだろう。
彼が欲しいなら、さっさと心を得てしまえ。
私が当て馬にならないと意気地が出ないんだから、世話が焼ける。
そして、ちゃんと守れよ?カシュー。
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