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熱烈な求愛に心が解ける
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「こらぁ!ローゼス!!!お前酒飲んでるんだろう!シュドーにそんな明け透けな話をするんじゃない!お前らも止めろ!シュドーは清楚で可憐なんだぞ!この世界の人間みたいに性に奔放ではないんだ!」
向こうで殿下とイガイガやりあってたはずのナッツさんが飛んでくる。
助かったけど、清楚で可憐とはいったい?
「平気ですよ。確かに経験はないですけど、俺だって32歳のいいおじさんなんですから。知識くらいはありますよ。」
ちょっとエッチな話題くらいで顔を赤らめるようなネンネではないのだ。
「そぉですよぉ、団長?シュドーに男もいいよ、って教えてたんじゃないですかぁ。同性愛に対するハードルを下げておけば、団長のことだって考えてくれるかもしれないでしょー?」
こてんと首を傾げる美人は可愛い。
なるほどなぁ。これは男にモテる。男でもいい、って思わせる。そのくらい可愛い。
「ああ、もう。いいからハンス、グリーン。ローゼスを連れてってくれ。」
「承知しました。」
「ローゼス、休憩室いこ。好きでしょ。僕とハンスでローゼスをとろとろにさせてあげる♡」
たくましい二人の若者に抱き着きながら、ローゼスさんは奥の方に消えた。
いつのまにかプリ殿下も来ている。
「性に奔放って、ナッツさんや殿下もですか?」
「王族がそんなことしたら流石にだめでしょう。結婚までは純潔、結婚したら妃一筋ですよ。そこの騎士団長は男女問わずモテモテのようだが?」
「殿下!私は確かにモテますが、誰とも付き合ったことはありません!まっさらです!」
「ほんとー?その割には私からの誘いを断ったじゃない。『純潔じゃない』ってのは嘘だったわけだ。王族に嘘ついたんだー。」
「殿下。ご存じですか?嘘にはついていい嘘もあるんですよ。私は受じゃないですから、穏便に済ませられる断り文句じゃないですか。第一、騎士団長が妃になってどうするんですか。誰が私の代わりに国を守れるとでも?」
「ほー。そういう私にもハッキリものを言うところが私は気に入ってるんだけどねぇ。」
「実は、私には幼い頃から夢に時々現れる『運命の相手』がいるのです。シュドーを見たとき、ビビッと来たんです!彼こそ私が探し求めていた人だと!」
ふぇえ。逃げていいかなぁ…。
ワルツの曲がかかる。
周りが踊りだした。
「シュドー、踊ろう!」
「え」
ナッツさんが俺の手をとり、ワルツの輪に混じる。
「殿下をほっといていいんですか?」
「いいんだ。昔っから殿下と私はああなんだ。母親が王妹だからイトコなんだよ。母様はうちと宰相家の両方の妻なんだ。だから後で紹介するけど、この国の宰相は私の父親違いの弟なんだ。」
「宰相様ってNo2では?そういえば謁見の時にはいなかったですね。」
「執務全般の補佐だからな。国王が執務室にいないときは執務室にいる。今もそうだよ。不測の事態に備えるためには権限をある程度代行できる人間が備えておかなければならないから。」
ちゃんとしたワルツは初めてだけど、なんとなく体が覚えている。
昔、母さんと時々ダンスをしたなぁ。
母さんの形見のペンダントが回るたびに揺れる。
一曲終わり、ナッツさんを見る。
俺がすっぽり入るくらい高身長で鍛えているから肉付きもいい。
鍛えられた肉体はセクシーだ。
ふっと視線が交わり、なんだか恥ずかしくなる。
「バルコニーに行きましょう。夜の庭も綺麗ですよ。」
お互いにワインを持ってバルコニーに出てみれば、他にも客はいた。
みんなお相手と仲良くやってらっしゃるようだ。
暗黙の了解で、他の人と距離をとったところにナッツさんは誘導した。
「俺が運命の相手って…。俺、そういうのあんまり信用していません。ある意味衝撃的な出会いだったからじゃないですかね?つり橋効果っていって、別のドキドキを勘違いするのはよくあるこ――――
ナッツさんの海のように青い瞳が、俺を見つめる。
照れくさそうに、ナッツさんは前髪を指でくるくると弄った。
あ。その癖、どっかで見たな。
さりなの勧めで顧問弁護士にお願いした――――――そう、塚本製薬の。
両親が生きていた頃は家族ぐるみの付き合いだった。
そこの息子の塚本玲だ。
友人?といえる関係でもなかったけど、塚本玲は時々俺を助けてくれたっけ。
叔父に家を乗っ取られて、自由が利かなくなる俺にファンタジー文庫の新刊を貸してくれたり。
俺を軽んじるような噂からは守ってくれた。
さりなも塚本も、俺に恩着せがましいことはしなかった。
さりなは、表向きは叔父の娘として接するけど、乱に虐められそうになるとそれとなく話題を変えて止めてくれたし、服もプレゼントしてくれて。
塚本も同じで、自分が読みたいから買ったけど面白いから読んでみて?という体で本を貸してくれた。
懐かしいな。塚本。
塚本がいなかったら、俺は学校生活を乗り切れただろうか。
塚本は大学も大学院も一緒で。
気付いたらいつも側にいた。
「私の夢は前世の記憶なんじゃないかって思うんです。こことは違う、科学の発展した世界で。そう、貴方が見せてくれた映像みたいな。ずっと、好きな人がいて。その人はある日突然消えて。悲しくて、そして目が覚める。あなたを見ると、その夢を思い出す。朧気だった愛しい人の姿が、貴方になる。あなたがその思いを信じられないなら、信じてもらえるまで私は貴方に愛を捧げます。貴方が同性に抱かれるのは嫌だと仰るなら私が抱かれます。そもそも肉体関係が嫌だというのなら、一切接触はなくても構いません。他に好きな人が出来たなら諦めます。」
「え…。」
戸惑う。
高鳴る。
どうして?
なんで心拍数が上がる?
塚本と、ナッツさんが重なる。
「だからどうか、私のことを考えてみてもらえないでしょうか。」
向こうで殿下とイガイガやりあってたはずのナッツさんが飛んでくる。
助かったけど、清楚で可憐とはいったい?
「平気ですよ。確かに経験はないですけど、俺だって32歳のいいおじさんなんですから。知識くらいはありますよ。」
ちょっとエッチな話題くらいで顔を赤らめるようなネンネではないのだ。
「そぉですよぉ、団長?シュドーに男もいいよ、って教えてたんじゃないですかぁ。同性愛に対するハードルを下げておけば、団長のことだって考えてくれるかもしれないでしょー?」
こてんと首を傾げる美人は可愛い。
なるほどなぁ。これは男にモテる。男でもいい、って思わせる。そのくらい可愛い。
「ああ、もう。いいからハンス、グリーン。ローゼスを連れてってくれ。」
「承知しました。」
「ローゼス、休憩室いこ。好きでしょ。僕とハンスでローゼスをとろとろにさせてあげる♡」
たくましい二人の若者に抱き着きながら、ローゼスさんは奥の方に消えた。
いつのまにかプリ殿下も来ている。
「性に奔放って、ナッツさんや殿下もですか?」
「王族がそんなことしたら流石にだめでしょう。結婚までは純潔、結婚したら妃一筋ですよ。そこの騎士団長は男女問わずモテモテのようだが?」
「殿下!私は確かにモテますが、誰とも付き合ったことはありません!まっさらです!」
「ほんとー?その割には私からの誘いを断ったじゃない。『純潔じゃない』ってのは嘘だったわけだ。王族に嘘ついたんだー。」
「殿下。ご存じですか?嘘にはついていい嘘もあるんですよ。私は受じゃないですから、穏便に済ませられる断り文句じゃないですか。第一、騎士団長が妃になってどうするんですか。誰が私の代わりに国を守れるとでも?」
「ほー。そういう私にもハッキリものを言うところが私は気に入ってるんだけどねぇ。」
「実は、私には幼い頃から夢に時々現れる『運命の相手』がいるのです。シュドーを見たとき、ビビッと来たんです!彼こそ私が探し求めていた人だと!」
ふぇえ。逃げていいかなぁ…。
ワルツの曲がかかる。
周りが踊りだした。
「シュドー、踊ろう!」
「え」
ナッツさんが俺の手をとり、ワルツの輪に混じる。
「殿下をほっといていいんですか?」
「いいんだ。昔っから殿下と私はああなんだ。母親が王妹だからイトコなんだよ。母様はうちと宰相家の両方の妻なんだ。だから後で紹介するけど、この国の宰相は私の父親違いの弟なんだ。」
「宰相様ってNo2では?そういえば謁見の時にはいなかったですね。」
「執務全般の補佐だからな。国王が執務室にいないときは執務室にいる。今もそうだよ。不測の事態に備えるためには権限をある程度代行できる人間が備えておかなければならないから。」
ちゃんとしたワルツは初めてだけど、なんとなく体が覚えている。
昔、母さんと時々ダンスをしたなぁ。
母さんの形見のペンダントが回るたびに揺れる。
一曲終わり、ナッツさんを見る。
俺がすっぽり入るくらい高身長で鍛えているから肉付きもいい。
鍛えられた肉体はセクシーだ。
ふっと視線が交わり、なんだか恥ずかしくなる。
「バルコニーに行きましょう。夜の庭も綺麗ですよ。」
お互いにワインを持ってバルコニーに出てみれば、他にも客はいた。
みんなお相手と仲良くやってらっしゃるようだ。
暗黙の了解で、他の人と距離をとったところにナッツさんは誘導した。
「俺が運命の相手って…。俺、そういうのあんまり信用していません。ある意味衝撃的な出会いだったからじゃないですかね?つり橋効果っていって、別のドキドキを勘違いするのはよくあるこ――――
ナッツさんの海のように青い瞳が、俺を見つめる。
照れくさそうに、ナッツさんは前髪を指でくるくると弄った。
あ。その癖、どっかで見たな。
さりなの勧めで顧問弁護士にお願いした――――――そう、塚本製薬の。
両親が生きていた頃は家族ぐるみの付き合いだった。
そこの息子の塚本玲だ。
友人?といえる関係でもなかったけど、塚本玲は時々俺を助けてくれたっけ。
叔父に家を乗っ取られて、自由が利かなくなる俺にファンタジー文庫の新刊を貸してくれたり。
俺を軽んじるような噂からは守ってくれた。
さりなも塚本も、俺に恩着せがましいことはしなかった。
さりなは、表向きは叔父の娘として接するけど、乱に虐められそうになるとそれとなく話題を変えて止めてくれたし、服もプレゼントしてくれて。
塚本も同じで、自分が読みたいから買ったけど面白いから読んでみて?という体で本を貸してくれた。
懐かしいな。塚本。
塚本がいなかったら、俺は学校生活を乗り切れただろうか。
塚本は大学も大学院も一緒で。
気付いたらいつも側にいた。
「私の夢は前世の記憶なんじゃないかって思うんです。こことは違う、科学の発展した世界で。そう、貴方が見せてくれた映像みたいな。ずっと、好きな人がいて。その人はある日突然消えて。悲しくて、そして目が覚める。あなたを見ると、その夢を思い出す。朧気だった愛しい人の姿が、貴方になる。あなたがその思いを信じられないなら、信じてもらえるまで私は貴方に愛を捧げます。貴方が同性に抱かれるのは嫌だと仰るなら私が抱かれます。そもそも肉体関係が嫌だというのなら、一切接触はなくても構いません。他に好きな人が出来たなら諦めます。」
「え…。」
戸惑う。
高鳴る。
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