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怪しいやつ
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騎士団長カシュー=ナッツは、ナッツ侯爵家の次男である。
何があるか分からないため、騎士団には副団長のギルバートを残し、精鋭から3人引き連れて霊峰に入った。
清流は清々しく、山は静かだ。
「団長。本当に夕べ奇妙な発光があったんですか?」
小柄な体躯だがその分機動力があり、森の中では重宝する伯爵家の三男。
青い髪を短く刈り上げたハンス=クライスは訝し気にあたりを見回す。
「ああ…。」
「異常があるのであれば、動物たちが騒いでいるでしょうし。何かの自然現象だった可能性もありますね。」
均整の取れた体格の桃色の髪の男は、長い髪を三つ編みにしている。
男爵家のローゼス=フルーレは、剣の腕も立つが医学の心得があるため、いざという時重宝する。
「まあ、いいんじゃない?平和が一番!いつも頑張ってる僕らへのご褒美で、たのしーピクニックに来たってことで。」
最年少の緑頭はグリーン=モス子爵令息。猫毛で髪が跳ねている。
筋肉質で大柄な男だが、愛嬌があって可愛らしい。
「まったくもう、グリーンったら。しょうがないねぇ。もう少ししたらランチにしようかな。」
ローゼスが笑うと花が舞うようだ。
グリーンはローゼスを狙っている。
ハンスもローゼスを狙っているようで、また二人はいがみ合っていた。
いつからだろう。
この世界は男女の比率が物凄く偏っている。
女性があまり生まれず、ゆえに大切にされ、多くの夫を持ってなるべく多くの子を産まされる。
何年か前に異世界からやってきた夫婦がいた。
妻の方は元々この世界の人間で、確か今いるセチア王国とは遠く離れた海の国のマリーナ王国の行方不明になっていた王女だったが、希少な女性だ。
他の男をあてがわれそうになり、異世界でカガクシャだったらしい二人は、カガクの力で男同士でも子を持てる技術を開発した。
それ以降、ローゼスのようにどこか女性的で美しい男は『疑似女性』として、そういう対象になっている。
女性が意に反して複数の夫を持たされたり、産むことが使命のように扱われることはなくなって、それはよかったのだが…。
美しく生まれると大変だな、って最近ローゼスを見て思う。
かくいう私も、女性からも男性からも言い寄られるので正直うんざりだ…。
「あっ!なんか今変なのいた!」
グリーンが何かを見つけた。
指をさす方向に目を凝らしてみると……。
「………???なんだあれは。見たことがない。新種の魔物か…?」
「まずは捕まえてみよう!発光の原因はあいつかもしれないぞ!」
手に銀色の奇妙な形をした短い杖?を持ち、黄色の体のずんぐりむっくりした、目や鼻や口がどこについているかわからない生き物が、水辺でなにかもそもそしていた。
外はもしかしたら、地球人にとって有害な環境かもしれない。
嵐は、こんなときのために調達しておいた防護服に身を包み、植物や水を採取して調査を始めた。
「ん、大気の成分も地球と変わらない。水も植物も問題なさそうだな。周りに凶暴な生き物もいなそうだし、よかった~。」
水質を確認したので、水を汲んでおくとしよう。
水を引くための機材を調達しに離れに戻ろうとしたとき、こっちに近づいてくる人影が見えた。
ガチャっと扉を開く瞬間、声をかけられる。
「おっ、おい!!」
(うわぁ~!異世界人とコンタクトしちゃった!薄い金髪の人はふつーだけど、青桃緑って異世界って感じ!)
「言葉が分かるのか?お前は何者だ!」
(ん?この言葉…。母さんから習った言葉に似てるな??えっと…『オマエハダレ?』って聞いてる?)
「俺は須藤嵐。怪しい者じゃないです。」
「シュドー=ラン???」
目の前の4人は緊張しているようだ。
ぎ~っとドアが緩んで開き、中の研究機材が動いて光る。
色とりどりの光を逆光に、俺はヘルメットを外した。
4人がぽかーんと口を開けている。
「夕べ、別の世界からこちらへ来ました。よろしくお願いします。」
何があるか分からないため、騎士団には副団長のギルバートを残し、精鋭から3人引き連れて霊峰に入った。
清流は清々しく、山は静かだ。
「団長。本当に夕べ奇妙な発光があったんですか?」
小柄な体躯だがその分機動力があり、森の中では重宝する伯爵家の三男。
青い髪を短く刈り上げたハンス=クライスは訝し気にあたりを見回す。
「ああ…。」
「異常があるのであれば、動物たちが騒いでいるでしょうし。何かの自然現象だった可能性もありますね。」
均整の取れた体格の桃色の髪の男は、長い髪を三つ編みにしている。
男爵家のローゼス=フルーレは、剣の腕も立つが医学の心得があるため、いざという時重宝する。
「まあ、いいんじゃない?平和が一番!いつも頑張ってる僕らへのご褒美で、たのしーピクニックに来たってことで。」
最年少の緑頭はグリーン=モス子爵令息。猫毛で髪が跳ねている。
筋肉質で大柄な男だが、愛嬌があって可愛らしい。
「まったくもう、グリーンったら。しょうがないねぇ。もう少ししたらランチにしようかな。」
ローゼスが笑うと花が舞うようだ。
グリーンはローゼスを狙っている。
ハンスもローゼスを狙っているようで、また二人はいがみ合っていた。
いつからだろう。
この世界は男女の比率が物凄く偏っている。
女性があまり生まれず、ゆえに大切にされ、多くの夫を持ってなるべく多くの子を産まされる。
何年か前に異世界からやってきた夫婦がいた。
妻の方は元々この世界の人間で、確か今いるセチア王国とは遠く離れた海の国のマリーナ王国の行方不明になっていた王女だったが、希少な女性だ。
他の男をあてがわれそうになり、異世界でカガクシャだったらしい二人は、カガクの力で男同士でも子を持てる技術を開発した。
それ以降、ローゼスのようにどこか女性的で美しい男は『疑似女性』として、そういう対象になっている。
女性が意に反して複数の夫を持たされたり、産むことが使命のように扱われることはなくなって、それはよかったのだが…。
美しく生まれると大変だな、って最近ローゼスを見て思う。
かくいう私も、女性からも男性からも言い寄られるので正直うんざりだ…。
「あっ!なんか今変なのいた!」
グリーンが何かを見つけた。
指をさす方向に目を凝らしてみると……。
「………???なんだあれは。見たことがない。新種の魔物か…?」
「まずは捕まえてみよう!発光の原因はあいつかもしれないぞ!」
手に銀色の奇妙な形をした短い杖?を持ち、黄色の体のずんぐりむっくりした、目や鼻や口がどこについているかわからない生き物が、水辺でなにかもそもそしていた。
外はもしかしたら、地球人にとって有害な環境かもしれない。
嵐は、こんなときのために調達しておいた防護服に身を包み、植物や水を採取して調査を始めた。
「ん、大気の成分も地球と変わらない。水も植物も問題なさそうだな。周りに凶暴な生き物もいなそうだし、よかった~。」
水質を確認したので、水を汲んでおくとしよう。
水を引くための機材を調達しに離れに戻ろうとしたとき、こっちに近づいてくる人影が見えた。
ガチャっと扉を開く瞬間、声をかけられる。
「おっ、おい!!」
(うわぁ~!異世界人とコンタクトしちゃった!薄い金髪の人はふつーだけど、青桃緑って異世界って感じ!)
「言葉が分かるのか?お前は何者だ!」
(ん?この言葉…。母さんから習った言葉に似てるな??えっと…『オマエハダレ?』って聞いてる?)
「俺は須藤嵐。怪しい者じゃないです。」
「シュドー=ラン???」
目の前の4人は緊張しているようだ。
ぎ~っとドアが緩んで開き、中の研究機材が動いて光る。
色とりどりの光を逆光に、俺はヘルメットを外した。
4人がぽかーんと口を開けている。
「夕べ、別の世界からこちらへ来ました。よろしくお願いします。」
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