天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
4 / 90

怪しいやつ

しおりを挟む
騎士団長カシュー=ナッツは、ナッツ侯爵家の次男である。

何があるか分からないため、騎士団には副団長のギルバートを残し、精鋭から3人引き連れて霊峰に入った。

清流は清々しく、山は静かだ。


「団長。本当に夕べ奇妙な発光があったんですか?」

小柄な体躯だがその分機動力があり、森の中では重宝する伯爵家の三男。
青い髪を短く刈り上げたハンス=クライスは訝し気にあたりを見回す。


「ああ…。」


「異常があるのであれば、動物たちが騒いでいるでしょうし。何かの自然現象だった可能性もありますね。」

均整の取れた体格の桃色の髪の男は、長い髪を三つ編みにしている。
男爵家のローゼス=フルーレは、剣の腕も立つが医学の心得があるため、いざという時重宝する。


「まあ、いいんじゃない?平和が一番!いつも頑張ってる僕らへのご褒美で、たのしーピクニックに来たってことで。」

最年少の緑頭はグリーン=モス子爵令息。猫毛で髪が跳ねている。

筋肉質で大柄な男だが、愛嬌があって可愛らしい。


「まったくもう、グリーンったら。しょうがないねぇ。もう少ししたらランチにしようかな。」

ローゼスが笑うと花が舞うようだ。


グリーンはローゼスを狙っている。

ハンスもローゼスを狙っているようで、また二人はいがみ合っていた。



いつからだろう。

この世界は男女の比率が物凄く偏っている。

女性があまり生まれず、ゆえに大切にされ、多くの夫を持ってなるべく多くの子を産まされる。



何年か前に異世界からやってきた夫婦がいた。

妻の方は元々この世界の人間で、確か今いるセチア王国とは遠く離れた海の国のマリーナ王国の行方不明になっていた王女だったが、希少な女性だ。

他の男をあてがわれそうになり、異世界でカガクシャだったらしい二人は、カガクの力で男同士でも子を持てる技術を開発した。


それ以降、ローゼスのようにどこか女性的で美しい男は『疑似女性』として、になっている。


女性が意に反して複数の夫を持たされたり、産むことが使命のように扱われることはなくなって、それはよかったのだが…。
美しく生まれると大変だな、って最近ローゼスを見て思う。



かくいう私も、女性からも男性からも言い寄られるので正直うんざりだ…。


「あっ!なんか今変なのいた!」



グリーンが何かを見つけた。

指をさす方向に目を凝らしてみると……。




「………???なんだあれは。見たことがない。新種の魔物か…?」

「まずは捕まえてみよう!発光の原因はあいつかもしれないぞ!」


手に銀色の奇妙な形をした短い杖?を持ち、黄色の体のずんぐりむっくりした、目や鼻や口がどこについているかわからない生き物が、水辺でなにかもそもそしていた。









外はもしかしたら、地球人にとって有害な環境かもしれない。

嵐は、こんなときのために調達しておいた防護服に身を包み、植物や水を採取して調査を始めた。

「ん、大気の成分も地球と変わらない。水も植物も問題なさそうだな。周りに凶暴な生き物もいなそうだし、よかった~。」


水質を確認したので、水を汲んでおくとしよう。

水を引くための機材を調達しに離れに戻ろうとしたとき、こっちに近づいてくる人影が見えた。


ガチャっと扉を開く瞬間、声をかけられる。


「おっ、おい!!」



(うわぁ~!異世界人とコンタクトしちゃった!薄い金髪の人はふつーだけど、青桃緑って異世界って感じ!)



「言葉が分かるのか?お前は何者だ!」


(ん?この言葉…。母さんから習った言葉に似てるな??えっと…『オマエハダレ?』って聞いてる?)


「俺は須藤嵐。怪しい者じゃないです。」


「シュドー=ラン???」

目の前の4人は緊張しているようだ。


ぎ~っとドアが緩んで開き、中の研究機材が動いて光る。

色とりどりの光を逆光に、俺はヘルメットを外した。




4人がぽかーんと口を開けている。




「夕べ、別の世界からこちらへ来ました。よろしくお願いします。」





しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

神子ですか? いいえ、GMです。でも聖王に溺愛されるのは想定外です!

楢山幕府
BL
ゲーム会社で働く主人公は、新しくNPCの中の人として仕事することに。 全ステータスMAXのチート仕様で、宗教国家の神子になったのはいいものの、迎えてくれた聖王は無愛想な上、威圧的で!? なのに相手からの好感度はMAXって、どういうことですか!? 表示バグかと思ったら、バグでもないようで??? ――気づいたときには、ログアウトできなくなっていた。 聖王派と王兄派の対立。 神子を取り巻く環境は、必ずしも平穏とは言い難く……。 それでも神子として生きることを決めた主人公と、彼を溺愛する聖王のあまあまなお話。 第8回BL小説大賞にエントリーしました。受賞された方々、おめでとうございます!そしてみなさま、お疲れ様でした。

処理中です...