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彼が消える日(前)

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「私はルシェル=エル=スズナ!」
「私はシュナイダー=エム=スズナ!」


ミルクティー色と銀色の髪が風にはためく。

国境沿いに集合し、発射を今か今かとまるでエンターテインメントのように待ちわびる集団の視点は合っていない。
うわごとのように『オオバコ憎し』を口ずさむ。


「みんな正気に還れ!ほら、分かるか!私の弟のシュナイダーだ。我が王家もオオバコ王国と血縁関係にある。未来に禍根は持ち込ませないために、だ!」

人々は何も聞かない。

列が詰まり、ドミノ倒しのように人が倒れる。


「危ない!」


「……あっ。ありがと…」


子どもが下敷きになるところだった。


曇った目の子どもの焦点は、やがて視線が合うようになる。


――――ありがと、う、ございます。シュナイダー殿下。


「危ないから結界で動きを止めるよ、お兄様。」

「ありがとう。じゃあ僕はこれで…!」


銃の後ろに弾丸の代わりに特殊な水をセットしたものを出す。

これは、神葉樹のエキス。


これをかければ、みんな正気にもどってくれる、はずだ!











「思い出して。きっとあなたにはその方が辛い。でもっ!」

アミュレットの体が光る。


「くぅうううううううううううううう!!!!!!!」


アミュレットとモルヒネの間で魔力の渦が吹き荒れ、ハピネスは必死にアミュレットを結界で守る。



アヴァロンだったときの思念が、モルヒネに流れる。









『………みんな、死んでしまった。残された子たち。きっと、大事に育てよう。』

『アヴァロン…。』

アヴァロンは生き残りをまとめ、新しい妖精の国を建国する。

そして、妖精たちの墓とは別に、高台に生えた小さな神葉樹の苗木の前に立つ。

『モルヒネ。これ以上罪を重ねないで…、どこかでちゃんとご飯を食べられていますように…。』



「あぁああ。あぁあぁああっ」

知らなかった。

アヴァロンの愛が、モルヒネに降り注ぐ。





モルヒネは大人しくなり、自分の手を見つめている。

――――うまくいったのだろうか。





ピカッ。
ごおおおおおおおおおおおお!!



街の方から、すさまじい何かが破裂した音がする。


「あ、あ、あぁあ…。」


モルヒネは呆けている。


「シュナイダー!!!!!!!!!!!」


物凄い煙が、街の方から立ち上がっていた。
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