34 / 42
彼が消える日(前)
しおりを挟む
「私はルシェル=エル=スズナ!」
「私はシュナイダー=エム=スズナ!」
ミルクティー色と銀色の髪が風にはためく。
国境沿いに集合し、発射を今か今かとまるでエンターテインメントのように待ちわびる集団の視点は合っていない。
うわごとのように『オオバコ憎し』を口ずさむ。
「みんな正気に還れ!ほら、分かるか!私の弟のシュナイダーだ。我が王家もオオバコ王国と血縁関係にある。未来に禍根は持ち込ませないために、だ!」
人々は何も聞かない。
列が詰まり、ドミノ倒しのように人が倒れる。
「危ない!」
「……あっ。ありがと…」
子どもが下敷きになるところだった。
曇った目の子どもの焦点は、やがて視線が合うようになる。
――――ありがと、う、ございます。シュナイダー殿下。
「危ないから結界で動きを止めるよ、お兄様。」
「ありがとう。じゃあ僕はこれで…!」
銃の後ろに弾丸の代わりに特殊な水をセットしたものを出す。
これは、神葉樹のエキス。
これをかければ、みんな正気にもどってくれる、はずだ!
「思い出して。きっとあなたにはその方が辛い。でもっ!」
アミュレットの体が光る。
「くぅうううううううううううううう!!!!!!!」
アミュレットとモルヒネの間で魔力の渦が吹き荒れ、ハピネスは必死にアミュレットを結界で守る。
アヴァロンだったときの思念が、モルヒネに流れる。
『………みんな、死んでしまった。残された子たち。きっと、大事に育てよう。』
『アヴァロン…。』
アヴァロンは生き残りをまとめ、新しい妖精の国を建国する。
そして、妖精たちの墓とは別に、高台に生えた小さな神葉樹の苗木の前に立つ。
『モルヒネ。これ以上罪を重ねないで…、どこかでちゃんとご飯を食べられていますように…。』
「あぁああ。あぁあぁああっ」
知らなかった。
アヴァロンの愛が、モルヒネに降り注ぐ。
モルヒネは大人しくなり、自分の手を見つめている。
――――うまくいったのだろうか。
ピカッ。
ごおおおおおおおおおおおお!!
街の方から、すさまじい何かが破裂した音がする。
「あ、あ、あぁあ…。」
モルヒネは呆けている。
「シュナイダー!!!!!!!!!!!」
物凄い煙が、街の方から立ち上がっていた。
「私はシュナイダー=エム=スズナ!」
ミルクティー色と銀色の髪が風にはためく。
国境沿いに集合し、発射を今か今かとまるでエンターテインメントのように待ちわびる集団の視点は合っていない。
うわごとのように『オオバコ憎し』を口ずさむ。
「みんな正気に還れ!ほら、分かるか!私の弟のシュナイダーだ。我が王家もオオバコ王国と血縁関係にある。未来に禍根は持ち込ませないために、だ!」
人々は何も聞かない。
列が詰まり、ドミノ倒しのように人が倒れる。
「危ない!」
「……あっ。ありがと…」
子どもが下敷きになるところだった。
曇った目の子どもの焦点は、やがて視線が合うようになる。
――――ありがと、う、ございます。シュナイダー殿下。
「危ないから結界で動きを止めるよ、お兄様。」
「ありがとう。じゃあ僕はこれで…!」
銃の後ろに弾丸の代わりに特殊な水をセットしたものを出す。
これは、神葉樹のエキス。
これをかければ、みんな正気にもどってくれる、はずだ!
「思い出して。きっとあなたにはその方が辛い。でもっ!」
アミュレットの体が光る。
「くぅうううううううううううううう!!!!!!!」
アミュレットとモルヒネの間で魔力の渦が吹き荒れ、ハピネスは必死にアミュレットを結界で守る。
アヴァロンだったときの思念が、モルヒネに流れる。
『………みんな、死んでしまった。残された子たち。きっと、大事に育てよう。』
『アヴァロン…。』
アヴァロンは生き残りをまとめ、新しい妖精の国を建国する。
そして、妖精たちの墓とは別に、高台に生えた小さな神葉樹の苗木の前に立つ。
『モルヒネ。これ以上罪を重ねないで…、どこかでちゃんとご飯を食べられていますように…。』
「あぁああ。あぁあぁああっ」
知らなかった。
アヴァロンの愛が、モルヒネに降り注ぐ。
モルヒネは大人しくなり、自分の手を見つめている。
――――うまくいったのだろうか。
ピカッ。
ごおおおおおおおおおおおお!!
街の方から、すさまじい何かが破裂した音がする。
「あ、あ、あぁあ…。」
モルヒネは呆けている。
「シュナイダー!!!!!!!!!!!」
物凄い煙が、街の方から立ち上がっていた。
6
お気に入りに追加
673
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】世界で一番愛しい人
ゆあ
BL
好きになった人と念願の番になり、幸せな日々を送っていたのに…
番の「運命の番」が現れ、僕の幸せな日は終わりを告げる
彼の二重生活に精神的にも、肉体的にも限界を迎えようとしている僕を
慰めてくれるのは、幼馴染の初恋の相手だった
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
一目惚れだけど、本気だから。~クールで無愛想な超絶イケメンモデルが健気な男の子に恋をする話
紗々
BL
中身も何も知らずに顔だけで一目惚れされることにウンザリしている、超絶イケメンファッションモデルの葵。あろうことか、自分が一目惚れで恋に落ちてしまう。相手は健気で無邪気で鈍感な可愛い男の子(会社員)。初対面の最悪な印象を払拭し、この恋を成就させることはできるのか…?!
【BL】婚約破棄された令息は強引で意地悪な辺境伯に愛される
ノルジャン
BL
第二王子に婚約破棄された男爵令息のアルブレヒト。落ち込んでいるところに隣国の辺境伯、ロヴィスが押しかけてきてアルブレヒトを口説き始める。昔はロヴィスに憧れていたが、今は大の苦手。けれど強引な中に見せる可愛らしい一面を見て、アルブレヒトは彼に惹かれ始めてしまう。ロヴィスに強引に迫られてその後二人は婚約したが、アルブレヒトのちょっとしたお願いのせいでロヴィスは急に冷たくなった。話し合おうと彼に会いに行くと、アルブレヒトの兄とロヴィスの話し声が聞こえてしまう。話の内容からアルブレヒトの婚約破棄にはロヴィスが関わっていたとわかり……?
強引な攻め×攻めに振り回される(振り回してる?)美形受け
「なんだ目をつぶって、唇を奪われるとでも思ったのか?」
「……っ!」
ムーンライトノベルズからの転載です。
【完結】全てが嫌いな不憫Ωの少年が初恋相手のスパダリαに愛される?ふざけんなお前のことなんか大っ嫌いだ!
にゃーつ
BL
お母さん、僕は今日結婚するよ。
あの初恋の子じゃなくて、お父様が決めた相手と。父様は僕のこと道具としてしか見ていない。義母様も息子の剛さんも、僕のこと道具として扱う。
結婚すれば殴られる日々から解放される。大丈夫。きっと大丈夫だよ。
いつか王子様が現れるってそんな御伽噺信じてないから、ずっと昔に誰か助けてくれるなんて希望捨て去ったから。
ずっと笑ってられるから大丈夫
幼馴染スパダリα×不憫受Ω
結婚して半年で大きな事件が起こる。
雨の降る夜に幼馴染と再会。幼馴染の南 れおんは恋焦がれていた増田 周の驚くべき真実を知る。
お前なんか嫌いだ。みんな嫌いだ。僕が助けて欲しい時に誰も助けてくれなかったくせに!今更なんなんだよ!偽善者!
オメガバース作品ですので男性妊娠、出産の内容が含まれますのでご注意ください。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる