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海より深い兄の愛

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「そろそろ頃合かな?」


月明かりの中、モルヒネは疲労の色が見えるシュナイダーを見下ろした。

その口には猿轡が噛まされている。

そんな姿でもシュナイダーは気高く、麗しい。
まるであの兄を奪った人間の男のようだ。

憎さ半分。

だがコレを乗っ取れば。


モルヒネの指が伸びた。







ぱぁぁああああっ!!!

突如、部屋中が強い光に包まれる。


シュナイダーも思わず目をつぶった。



「これは…!転移!?どうして!」


「助けに来たよ、シュナイダー!」

「アミュレット様!お兄様、ハピネス!」

「なぜここが…。しかも転移先をぴったりと…。」


モルヒネは口を歪める。


「大事な大事な弟だからね。シュナイダーに発信機をつけておいたのさ!」

これこそが海より深い兄の愛!見さらせ!

ルシェルは双子の兄に執着した成れの果てをじっと見据えた。



あれは自分だ。
もしかしたらなっていたかもしれない姿。


シュナイダーの縄を解き、弱っていた体をハピネスが回復させた、




「もうおしまいにしよう、モルヒネ。そんなことをしたって、もうアヴァロンはいないんだ。」


「うるさい、うるさい、うるさい!!!!!」





モルヒネはカーテンを破る。

外から聞こえる声が大きくなった。




「オオバコを許すな―!」

「なんで私たちがオオバコの民を助けなきゃいけないんだ!」

「オオバコは昔、スズナを侵略しようとしてクローバーの妖精たちともども狼藉を働いた悪魔だっ!」




「あれは?」



「ふふ、この国の王様たちは必死に止めようとしているけど無駄さ。暴動が起きて、戦争になるんだ。」





窓の外を見ると、老若男女が一列に…。


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