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閑話 シュナイダー王子(シュナイダー視点)
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生まれたときからそうだったんだろう。
物心ついたころには、周囲の視線が厳しいのを感じていた。
僕だってそんなに馬鹿ではないと思うけれど、この国の知的レベルは高かった。
双子の兄のようには、勉強できない。
やっぱり下等な血の王子はこれだから、とみんなが蔑んでいるのを感じる。
父も母も、兄も僕を愛してくれるけれど、彼らが僕を庇う度、だんだん申し訳なくって仕方がなかった。
僕がこんな姿で生まれたせいで、僕が出来損ないなせいで、お父様やお母様、お兄様が悪く言われるのは嫌だよ。
剣を習ったら、僕には才能があったみたい。
僕はお兄様のスペアにもなれないから、剣の力で何かお役に立てればいいのだけど…。
とうとう、剣を教えてくれていた騎士団長にも「化け物が」って言われてしまった。
好かれていないことは知っていたんだけど……。
辛いな。
笑い方や泣き方を忘れた頃、お父様たちは僕をクローバー王国に留学させることにした。
向こうにはお母さまの妹にあたる叔母様と、従弟のハピネス殿下がいる。
向こうに行ったら、僕は笑えるかな?
たまに、会いに来てくれるって。
クローバー王国へは転移で行けるらしく、バイオレット叔母様が迎えに来てくれた。
「これからよろしくね、シュナイダー。」
「我が家だと思っていいからね。」
「シュナイダー、僕と一緒に勉強しよう!」
「まぁ、シュナイダーはいい子ね。でも、たまには自分の気持ちを言ってもいいのよ。我儘はよくないけれど、自分を押し殺しすぎるのもダメ。」
「王族は自分を殺さなければならない時も多いが、プライベートくらいは自由でいいさ。」
ほんと?
妖精みたいで綺麗なハピネスは、見た目とは違ってやんちゃなところもある。
一緒に泥だらけになって遊んだ。
たまに遊びに来たお兄様が目を剥いてびっくりしていた。
自然が豊かなクローバー王国で、僕の心は蘇った。
「うーん、うんっ。」
叔母様の苦しそうな声が聞こえる。
僕がクローバー王国に来た翌年、ハピネスに弟が生まれた。
「おぎゃあー、おぎゃあー」
この世界にようこそ、アミュレット。
なんて小さくてかわいいんだろう。
僕が守ってあげるからね。
僕がみんなから守ってもらったみたいに。
「ないらー。」
「ちゅないら!」
「しゅないだー!」
「シュナイダー。」
舌ったらずだった言葉はだんだんはっきりと、アミュレットは成長していく。
段々目が離せなくなる。
敵地に嫁ぐアミュレットが心配で、輿入れについていくことにした。
私なら自由に動けるから。
美しく成長していくアミュレット。
アミュレットがあの王子のものになるなんて……。
想像しただけで胸がちくりと痛む。
ハピネスに教えてもらったミントの香りに似た神葉樹の葉で作られた軽い煙草。
アミュレットのいないところで嗜む量が増える。
私は、そうか。
アミュレットを愛しているのだ。
それは、家族の情ではなく。
そう、気づいた。
物心ついたころには、周囲の視線が厳しいのを感じていた。
僕だってそんなに馬鹿ではないと思うけれど、この国の知的レベルは高かった。
双子の兄のようには、勉強できない。
やっぱり下等な血の王子はこれだから、とみんなが蔑んでいるのを感じる。
父も母も、兄も僕を愛してくれるけれど、彼らが僕を庇う度、だんだん申し訳なくって仕方がなかった。
僕がこんな姿で生まれたせいで、僕が出来損ないなせいで、お父様やお母様、お兄様が悪く言われるのは嫌だよ。
剣を習ったら、僕には才能があったみたい。
僕はお兄様のスペアにもなれないから、剣の力で何かお役に立てればいいのだけど…。
とうとう、剣を教えてくれていた騎士団長にも「化け物が」って言われてしまった。
好かれていないことは知っていたんだけど……。
辛いな。
笑い方や泣き方を忘れた頃、お父様たちは僕をクローバー王国に留学させることにした。
向こうにはお母さまの妹にあたる叔母様と、従弟のハピネス殿下がいる。
向こうに行ったら、僕は笑えるかな?
たまに、会いに来てくれるって。
クローバー王国へは転移で行けるらしく、バイオレット叔母様が迎えに来てくれた。
「これからよろしくね、シュナイダー。」
「我が家だと思っていいからね。」
「シュナイダー、僕と一緒に勉強しよう!」
「まぁ、シュナイダーはいい子ね。でも、たまには自分の気持ちを言ってもいいのよ。我儘はよくないけれど、自分を押し殺しすぎるのもダメ。」
「王族は自分を殺さなければならない時も多いが、プライベートくらいは自由でいいさ。」
ほんと?
妖精みたいで綺麗なハピネスは、見た目とは違ってやんちゃなところもある。
一緒に泥だらけになって遊んだ。
たまに遊びに来たお兄様が目を剥いてびっくりしていた。
自然が豊かなクローバー王国で、僕の心は蘇った。
「うーん、うんっ。」
叔母様の苦しそうな声が聞こえる。
僕がクローバー王国に来た翌年、ハピネスに弟が生まれた。
「おぎゃあー、おぎゃあー」
この世界にようこそ、アミュレット。
なんて小さくてかわいいんだろう。
僕が守ってあげるからね。
僕がみんなから守ってもらったみたいに。
「ないらー。」
「ちゅないら!」
「しゅないだー!」
「シュナイダー。」
舌ったらずだった言葉はだんだんはっきりと、アミュレットは成長していく。
段々目が離せなくなる。
敵地に嫁ぐアミュレットが心配で、輿入れについていくことにした。
私なら自由に動けるから。
美しく成長していくアミュレット。
アミュレットがあの王子のものになるなんて……。
想像しただけで胸がちくりと痛む。
ハピネスに教えてもらったミントの香りに似た神葉樹の葉で作られた軽い煙草。
アミュレットのいないところで嗜む量が増える。
私は、そうか。
アミュレットを愛しているのだ。
それは、家族の情ではなく。
そう、気づいた。
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