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閑話 シュナイダー王子(ルシェル視点)

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「本当にルシェル殿下は素晴らしい!この年で素晴らしいチェスの腕前だわ!」

「……疲れた。下がれ。」


(それに比べてシュナイダー殿下は…。)
(剣術がお上手だそうよ。まだ幼いのに騎士団長の膝をつかせたらしい。)
(おお怖い。野蛮なオオバコの血が濃いだけある。)
(我が国は機械大国。智の国。野蛮で下劣なオオバコの王子など…。)


部屋を出て、使用人たちは好き放題に話をする。
声を潜めても、陰口というものは、存外聞こえるものだと理解していない。


ルシェルは自分に纏わりつく者らに辟易し、そっと窓の外を見る。

窓の外から見えた庭には、弟であるシュナイダーが剣の素振りをしている。


双子で生まれた弟は、この国の国民が嫌うオオバコ王国の王族の血を濃く受け継いで生まれてしまった。

技術力に乏しく、貧しいオオバコ王国は、かつて、長い間、豊かさを外から奪うことでやり過ごしてきた国。
それではいけないとオオバコも近代化に努め、クローバー王国を間に挟んで婚姻を結ぶことで友好国家になろうとしている。

だが、長い歴史の中で『奪う国』だったオオバコ王国は、『悪の国』としてスズナ王国ではことさらに嫌われている。



「強制したところで、人の気持ちはなかなか変えられるものじゃない。お父様とお母様はシュナイダーをクローバーに預けるって言ってたな…。」




「ふん!ふんっ!」

「すごいな、シュナイダー。」


「お兄様…!」

庭まで下りて声をかけると、可愛い弟はこちらを見た。
銀髪がきらきらと光り輝いて、天使のようにカワイイ弟。


その顔に笑顔はない。

いつからだろう。両親にも僕にもシュナイダーは遠慮をするようになった。
触れることをためらうようになった。

僕たちはシュナイダーを愛しているのに。




「おやつの時間だよ。少しの休憩くらい、一緒に良いだろう?―――明日には、クローバー王国に行っちゃうんだから…。」

抱きしめたいのをこらえて、手をとる。

剣だこの潰れた、固い手。
まだ9歳なのに。




「………にぃさまっ。」



離したくない。

シュナイダーは僕の弟なんだ。

でも、このままこの国にいたらシュナイダーは健やかに成長できない…。



お腹の中でずっと一緒だった。
僕の半身。

いつでも魂はつながっているから。
僕の宝物。

お願い。どうか、シュナイダー。


僕たちの愛だけは忘れないで。





いつかぎゅっと抱きしめさせて。
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