上 下
18 / 42

三王太子

しおりを挟む
話は少しだけ遡る。


「久しぶりだね、ハピネス殿下。」

「ルシェル殿下も。」

同い年の王太子同士、気安く挨拶を交わす。


ハピネスは妖精の力を使って、スズナ王国の城へ出向いていた。
ブレーキを伴って。
時はアミュレットがシュナイダーとオオバコの城を脱出したその翌日のことである。


「…ブレーキ殿下は、初めまして、かな?」

「ブレーキ=クール=オオバコです。お初にお目にかかります。」


「僕らの弟にオオバコはよくもやってくれたよね…?」


人のよさそうな柔らかい笑みを浮かべながら、殺意を向けられ、ブレーキはたじろぎながらも、その意を受け止めた。


「……申し訳ございませんっ。」


「ハピネス、この子すごいね。まだ幼いのに僕の威圧に負けないよ。」

「そうでしょう?僕の愛し子だよ。」

「ところで、僕のところに来たってことは。用件があるのだろう?」


「はい!オオバコ王国の膿を斬りだすため、罪のない国民を救うため、力添えいただきたく…!」

まだ14歳と思えぬほどしっかりしたブレーキが、これからの策を提示し、協力を仰いだ。

「スズナ王国にもクローバー王国にも、協力に対する対価は今は差し出せません!ですが、必ず両国へ恩返しをすると誓います!」


「はははっ。気に入った。」

「そうでしょう、僕のブレーキは素晴らしいのです。」

「ふ~ん。なるほど、なるほどねぇ…。」

ルシェルはにっこり微笑み、自分の両親への面通しの許可と、自分が口添えすることを約束する。


そしてここに、三か国による共同作戦が秘密裏に始まるのだった。









「ハピネス、お前も罪だねぇ。ある意味ロマンだけどさぁ。待つんでしょ?あと4年。」

ブレーキを転移魔法で送ったその後姿を見ながら、ルシフェルは遠い目で呟く。
ブレーキはいったんクローバー王国へ飛び、そこからは早馬で国へ戻る。

転移魔法は便利だが、その術が使えるのはハピネスやその母のヴァイオレットくらいだし、あらかじめ合意の上で設置した起点同士でなければ繋ぐことができない。
クローバーとスズナは設定されているが、オオバコとは繋がっていない。
何度か繋ごうとしたが、なぜか不具合が生じて繋ぐことができなかったのだ。

おそらく、ゴウマン侯爵とやらのせいだったのだろう。

アミュレットが使えていれば、いつでもあの国から逃げ出せてよかったのかもしれないが、人には向き不向き得手不得手がある。
アミュレットはどちらかというと攻撃魔法や使役魔法が得意な部類だ。


「でもどうするの?あの子は王になるよ。それに、いささか年齢が開きすぎていない?」

「ふふふ、まあ、それはさておき。一刻も早く作業に入りましょう。」

「……了解。」


はぁ、僕も可愛いシュナイダーといちゃいちゃしたい。

お嫁さんも欲しい。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ
BL
好きになった人と念願の番になり、幸せな日々を送っていたのに… 番の「運命の番」が現れ、僕の幸せな日は終わりを告げる 彼の二重生活に精神的にも、肉体的にも限界を迎えようとしている僕を 慰めてくれるのは、幼馴染の初恋の相手だった

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

【BL】婚約破棄された令息は強引で意地悪な辺境伯に愛される

ノルジャン
BL
第二王子に婚約破棄された男爵令息のアルブレヒト。落ち込んでいるところに隣国の辺境伯、ロヴィスが押しかけてきてアルブレヒトを口説き始める。昔はロヴィスに憧れていたが、今は大の苦手。けれど強引な中に見せる可愛らしい一面を見て、アルブレヒトは彼に惹かれ始めてしまう。ロヴィスに強引に迫られてその後二人は婚約したが、アルブレヒトのちょっとしたお願いのせいでロヴィスは急に冷たくなった。話し合おうと彼に会いに行くと、アルブレヒトの兄とロヴィスの話し声が聞こえてしまう。話の内容からアルブレヒトの婚約破棄にはロヴィスが関わっていたとわかり……? 強引な攻め×攻めに振り回される(振り回してる?)美形受け 「なんだ目をつぶって、唇を奪われるとでも思ったのか?」 「……っ!」 ムーンライトノベルズからの転載です。

一目惚れだけど、本気だから。~クールで無愛想な超絶イケメンモデルが健気な男の子に恋をする話

紗々
BL
中身も何も知らずに顔だけで一目惚れされることにウンザリしている、超絶イケメンファッションモデルの葵。あろうことか、自分が一目惚れで恋に落ちてしまう。相手は健気で無邪気で鈍感な可愛い男の子(会社員)。初対面の最悪な印象を払拭し、この恋を成就させることはできるのか…?!

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

僕の策略は婚約者に通じるか

BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。 フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン ※他サイト投稿済です ※攻視点があります

婚約破棄から始まる人生

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
第二王子との婚約が破棄された。なんでも王子殿下と親しくしていた女性が懐妊したので責任を取りたいからだという。もともと気持ちを伴う婚約ではなかったから、怒りや悲しみといったものはない。そんなわたしに詫びたいと現れたのは、元婚約者の兄である王太子殿下だった。※他サイトにも掲載 [王太子殿下 × 貧乏貴族の子息 / BL / R18]

処理中です...