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三王太子
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話は少しだけ遡る。
「久しぶりだね、ハピネス殿下。」
「ルシェル殿下も。」
同い年の王太子同士、気安く挨拶を交わす。
ハピネスは妖精の力を使って、スズナ王国の城へ出向いていた。
ブレーキを伴って。
時はアミュレットがシュナイダーとオオバコの城を脱出したその翌日のことである。
「…ブレーキ殿下は、初めまして、かな?」
「ブレーキ=クール=オオバコです。お初にお目にかかります。」
「僕らの弟にオオバコはよくもやってくれたよね…?」
人のよさそうな柔らかい笑みを浮かべながら、殺意を向けられ、ブレーキはたじろぎながらも、その意を受け止めた。
「……申し訳ございませんっ。」
「ハピネス、この子すごいね。まだ幼いのに僕の威圧に負けないよ。」
「そうでしょう?僕の愛し子だよ。」
「ところで、僕のところに来たってことは。用件があるのだろう?」
「はい!オオバコ王国の膿を斬りだすため、罪のない国民を救うため、力添えいただきたく…!」
まだ14歳と思えぬほどしっかりしたブレーキが、これからの策を提示し、協力を仰いだ。
「スズナ王国にもクローバー王国にも、協力に対する対価は今は差し出せません!ですが、必ず両国へ恩返しをすると誓います!」
「はははっ。気に入った。」
「そうでしょう、僕のブレーキは素晴らしいのです。」
「ふ~ん。なるほど、なるほどねぇ…。」
ルシェルはにっこり微笑み、自分の両親への面通しの許可と、自分が口添えすることを約束する。
そしてここに、三か国による共同作戦が秘密裏に始まるのだった。
「ハピネス、お前も罪だねぇ。ある意味ロマンだけどさぁ。待つんでしょ?あと4年。」
ブレーキを転移魔法で送ったその後姿を見ながら、ルシフェルは遠い目で呟く。
ブレーキはいったんクローバー王国へ飛び、そこからは早馬で国へ戻る。
転移魔法は便利だが、その術が使えるのはハピネスやその母のヴァイオレットくらいだし、あらかじめ合意の上で設置した起点同士でなければ繋ぐことができない。
クローバーとスズナは設定されているが、オオバコとは繋がっていない。
何度か繋ごうとしたが、なぜか不具合が生じて繋ぐことができなかったのだ。
おそらく、ゴウマン侯爵とやらのせいだったのだろう。
アミュレットが使えていれば、いつでもあの国から逃げ出せてよかったのかもしれないが、人には向き不向き得手不得手がある。
アミュレットはどちらかというと攻撃魔法や使役魔法が得意な部類だ。
「でもどうするの?あの子は王になるよ。それに、いささか年齢が開きすぎていない?」
「ふふふ、まあ、それはさておき。一刻も早く作業に入りましょう。」
「……了解。」
はぁ、僕も可愛いシュナイダーといちゃいちゃしたい。
お嫁さんも欲しい。
「久しぶりだね、ハピネス殿下。」
「ルシェル殿下も。」
同い年の王太子同士、気安く挨拶を交わす。
ハピネスは妖精の力を使って、スズナ王国の城へ出向いていた。
ブレーキを伴って。
時はアミュレットがシュナイダーとオオバコの城を脱出したその翌日のことである。
「…ブレーキ殿下は、初めまして、かな?」
「ブレーキ=クール=オオバコです。お初にお目にかかります。」
「僕らの弟にオオバコはよくもやってくれたよね…?」
人のよさそうな柔らかい笑みを浮かべながら、殺意を向けられ、ブレーキはたじろぎながらも、その意を受け止めた。
「……申し訳ございませんっ。」
「ハピネス、この子すごいね。まだ幼いのに僕の威圧に負けないよ。」
「そうでしょう?僕の愛し子だよ。」
「ところで、僕のところに来たってことは。用件があるのだろう?」
「はい!オオバコ王国の膿を斬りだすため、罪のない国民を救うため、力添えいただきたく…!」
まだ14歳と思えぬほどしっかりしたブレーキが、これからの策を提示し、協力を仰いだ。
「スズナ王国にもクローバー王国にも、協力に対する対価は今は差し出せません!ですが、必ず両国へ恩返しをすると誓います!」
「はははっ。気に入った。」
「そうでしょう、僕のブレーキは素晴らしいのです。」
「ふ~ん。なるほど、なるほどねぇ…。」
ルシェルはにっこり微笑み、自分の両親への面通しの許可と、自分が口添えすることを約束する。
そしてここに、三か国による共同作戦が秘密裏に始まるのだった。
「ハピネス、お前も罪だねぇ。ある意味ロマンだけどさぁ。待つんでしょ?あと4年。」
ブレーキを転移魔法で送ったその後姿を見ながら、ルシフェルは遠い目で呟く。
ブレーキはいったんクローバー王国へ飛び、そこからは早馬で国へ戻る。
転移魔法は便利だが、その術が使えるのはハピネスやその母のヴァイオレットくらいだし、あらかじめ合意の上で設置した起点同士でなければ繋ぐことができない。
クローバーとスズナは設定されているが、オオバコとは繋がっていない。
何度か繋ごうとしたが、なぜか不具合が生じて繋ぐことができなかったのだ。
おそらく、ゴウマン侯爵とやらのせいだったのだろう。
アミュレットが使えていれば、いつでもあの国から逃げ出せてよかったのかもしれないが、人には向き不向き得手不得手がある。
アミュレットはどちらかというと攻撃魔法や使役魔法が得意な部類だ。
「でもどうするの?あの子は王になるよ。それに、いささか年齢が開きすぎていない?」
「ふふふ、まあ、それはさておき。一刻も早く作業に入りましょう。」
「……了解。」
はぁ、僕も可愛いシュナイダーといちゃいちゃしたい。
お嫁さんも欲しい。
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