あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~

竜鳴躍

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シュナイダーと逃避行

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ことこと…ことこと。

朝が明ける前に身支度をして。
僕とシュナイダーは朝市に行く一番の辻馬車に乗り込み、城を後にする。



「心配するかな…。」

陛下も王妃様もよくしてくださったのに。

「事情は報告しているから、大丈夫ですよ。」

「もう、お妃にはなれないね…。」


「ならなくていいですよ。」


「………頑張ったのになぁ。」


「アミュレット様だけが頑張る必要はないんです。それに大丈夫ですよ。一回くらい縁が切れたところで、長年の政略結婚で王族同士血はつながっている。そもそも繋がってるだけで戦争の抑止にはならないですよ。長い歴史の中には、そんなことお構いなしに戦争がしかけられたこともありますし。可能性が減るというだけです。」

「………うん。」


「アミュレット様の方が、ずっとずっと大事です。」



ふわっとシュナイダーのごつごつした手が頭に触れたかと思ったら、そっと自分の肩に寄せられた。


「これからのことですが、しばらくこの国を回りませんか?アミュレット様の暗殺が失敗した以上、敵もまた狙ってくるはず。城やクローバー王国への道は危険だと思います。それならば市民に溶け込んで暮らしたほうが良いと思います。大丈夫、必ず犯人は捕まえます。捕まりますから。」

「シュナイダーを信じてる…。一緒に、いて。」


色々あって疲れた。

彼の体温が心地いい。

触れたシャツから微かなたばこの匂い。

そっか、シュナイダーは煙草を吸うんだ。




微睡んで、微睡んで。


夢の中に沈む。









シュナイダーからの報告を受け、オオバコ王国の王と王妃の寝所では、国王夫妻が頭を抱えていた。

人払いをし、信頼できる影の警護の中、二人はアミュレットの当面のこれからについて話をしていた。


「…………この間に、やるしかないわ。」

「アミュレットとの婚約はなしだ。元々、もうするつもりはなかったが…。」

「あの子にも責任をとらせねばなりません。それからブレーキの教育を急がねば。」

「ブレーキの後ろ盾にクローバー王国とスズナ王国がなってくれるそうだ。王太子のハピネス様が繋いでくれたようだ。クローバーの陛下から封書が来た。」


「………一網打尽にするのは、アクセルの卒業式までに。」



今までのらりくらり正体をみせず、躱してきた奴ら。

だが、シュナイダーは昨日逃がした敵に罠をしかけていた。

この綻びから、必ずや一網打尽にしてみせる。
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