何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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追い詰められる

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(なによ………!何なの!?)

部屋を追い出され、ロザリー、いやシルキィは爪を噛もうとして止めた。

あの暴力聖女が無闇矢鱈に城の中や公爵領など浄化して歩くせいで、居心地が悪くて仕方がない。
侍女として働いているが、出入り出来ない場所が多くなり、仕事を命じられて近寄ると、自分が消される感覚がして具合が悪くなる。


何時ものようにランドリーに忍び込み、畳まれたフォールの衣類にサッと薄めた香水をかけ、何食わぬ顔で廊下に出る。



そこには、臨月になり腹の膨らんだオリーブとジャスティがいて、こちらを見ていた。

警戒する侍従や護衛を止め、腰に剣をぶら下げたローブ姿のオリーブが一歩前へ出る。

「シルキィ。」

オリーブの形のよい唇から、自分の名を呼ばれ、シルキィの胸が跳ねた。

「恐れながら申し上げます。私はシルキィではございません。それほど似ておりますでしょうか………。」
カーテンシーをして頭を下げる。

「私には分かる。その所作、完璧さ。ロザリーはそのように完璧な令嬢ではない。それに、ジャスティが判断した。その気配はシルキィだ。分かっているだろう。ジャスティの勘………いや、ジャスティには先祖返りか人の悪意や気配が分かる。だから、私たちの前を避けてきたのだろうから。」


ああ。私の振る舞いだけで。

それだけで貴方は私が分かるのね。


嬉しい。


「そうよ、オリーブ。ジャスティ。私はシルキィ。でもどうするの?この体はロザリーのものよ?私を殺して、また殺すの?」

「君はどうして………。ジャスティに執着しているわけじゃないだろう?そんなに王家に縁が欲しいのか?君の亡くなった両親は君に妃になることを強いてはいなかったし、公爵家もそこまで執着していなかったはずだ!」

「そうよ!ジャスティなんてどうでもよかった!欲しかったのは貴方よ。――――――オリーブ。」


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