何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

若奥さま

結婚式が終わった。

先日のうちに私の荷物はビューテ侯爵家に届けていて。
私は今日から、リリー=ビューテ。

次期侯爵夫人！


「私、これから若奥さまとして頑張るわ！お茶会も開くし、社交も頑張るから！」

あ、鼻から息がでちゃった！

はしたないかしら！

全く式ではお父様もお母様も泣きっぱなしで。
ケニー様に愛想を尽かされないように、尽くしなさい！と言われちゃった。

この家はお薬を作っているんだから、私の聖女としてのコネは活きると思うのよ！

「ありがとう。でも、無理はしないで大丈夫だからね。」


お義母様もそういえば社交していなかったわ。
こうしなきゃ、って思わなくていいんだわ。
私は私らしく、自分なりの若奥さまになれたら良いのね。

「それはそうと………」


ケニー様が私の隣に座る。

ふわふわの大きなベッドの上。


私の白銀の髪に触れる。


「いつまで我慢したらいいかな？式の間も君が美し過ぎて、どうにかなりそうだった。ドレス姿も綺麗だったけど………今の姿は、目のやり場に困る。全く王都の男どもは見る目がない。」


「え？」


確かに初夜だからって張り切ったわね。
自覚はある。
大好きなケニー様に欲情してもらいたかったもの。

他の相手ならこんな格好しないわよ。
胸の谷間がチラチラ、太股の先まで透けて見えそうなピンクのベビードール。

ジェニーやミルキィに相談して買っておいたのだから！




『トニー兄さんはイケイケだし、勝手にリードしてくれるはずだから、ミルキィはむしろ純情そうに構えて全てお任せするといいよ。ケニー兄さんはムッツリだから好きな子にエッチな格好で誘惑されたら嬉しいはず！』

『じゃあボクはちょっと子どもっぽいくらいのシンプルなパジャマにしよう。熊耳がついた可愛い奴にしようかな。合法ショタ路線で。リリーは………こんなのはどう？』

『あ！兄さん喜びそう！』



「ケニー様、私、ケニー様のために頑張ったの。私に誘惑されたなら嬉しい！さあ、早く私を食べて。」

「リリー！愛してる！」



キスの雨、アラレ。

ケニー様によく似た赤ちゃんが欲しいわ！







でも………今日気になることがあったのよね。

一瞬だけ、何か感じたの。


暫くお城周りを浄化した方がいいわね。


誰かに取り憑いていたとしたら、厄介だわ。