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新しくお城に行儀見習いに来た侍女
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ロザリー=ルクス伯爵令嬢。
王太子や王太子妃と同期にあたる伯爵令嬢。
実家は貧しくもなく、豊かというわけではない。
と、いっても、あくまでも貴族社会の中の評価で、平民と比べれば充分金持ちである。
学校の成績は上の下。
容貌は艶のある栗毛が巻かれ、瞳はパッチリしており、黙っていれば美少女の部類。
いきおくれの原因は、彼女の気の強さと暴言癖にあった。
「お父様、お母様。私は心を入れ替えます。自分を磨くためにお城に侍女として行儀見習いに行きたいのですが…。」
いよいよ、いや、ようやく分かってくれたのか。
両親は喜び、各所に頭を下げながら娘を城に送る。
面接官も彼女の人となりは調べていたが、生まれ変わったように大人しくなり、見違えるように品が良くなった彼女を採用することに決めた。
彼女は優秀だった。
そして、人当たりもよく、城に上がったばかりの令嬢にありがちな、爵位でもって対応を変えるようなこともない。
新しく行儀見習いのため侍女として働き始めた令嬢は、すっかり人気者になった。
かつての姿を知る者が見ると、同一人物であるとは誰も分からない。
そのくらい彼女は変貌していた。
先輩侍女が気を許した頃、彼女は柱の隙間から、仲良くよりそう陛下とオリーブ王妃に姿を見た。
「……どうしたの?ロザリー。」
「いえ、仲睦まじいな…と。」
「陛下とオリーブ様といい、王太子夫妻といい、仲が良いのはいいことだけれど、甘々すぎて目の毒よね。」
日の当たる中庭で、長女と次男に囲まれて、夫である陛下は妻であるオリーブを壊れもののように扱い、微笑を交わす。
大事そうにお腹を撫でて、幸せいっぱいな様子で。
手元にあるバスケットは編み物?
生まれてくる我が子のために新しくお包みでも作っているのだろうか。
「――――あんな顔、私にしてくれたことはなかったのに…。」
「え?ロザリー。何か言った?」
「いいえ、何も。」
陛下に近寄ろうにも、陛下にはなにか特別な力があるのか、ある一定距離まで近寄った瞬間、気配を察知され、拒絶される。
それは、『シルキィ』がまだカブキと結婚する前もそうだった。
どうしてそれほど王妃になりたいのか。
自分の血を王族に入れたいのか。
今となっては理由が分からない。
ライバル視していたヘリオス公爵家を出し抜きたかったのか。
たぶん違う。
王太子や王太子妃と同期にあたる伯爵令嬢。
実家は貧しくもなく、豊かというわけではない。
と、いっても、あくまでも貴族社会の中の評価で、平民と比べれば充分金持ちである。
学校の成績は上の下。
容貌は艶のある栗毛が巻かれ、瞳はパッチリしており、黙っていれば美少女の部類。
いきおくれの原因は、彼女の気の強さと暴言癖にあった。
「お父様、お母様。私は心を入れ替えます。自分を磨くためにお城に侍女として行儀見習いに行きたいのですが…。」
いよいよ、いや、ようやく分かってくれたのか。
両親は喜び、各所に頭を下げながら娘を城に送る。
面接官も彼女の人となりは調べていたが、生まれ変わったように大人しくなり、見違えるように品が良くなった彼女を採用することに決めた。
彼女は優秀だった。
そして、人当たりもよく、城に上がったばかりの令嬢にありがちな、爵位でもって対応を変えるようなこともない。
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かつての姿を知る者が見ると、同一人物であるとは誰も分からない。
そのくらい彼女は変貌していた。
先輩侍女が気を許した頃、彼女は柱の隙間から、仲良くよりそう陛下とオリーブ王妃に姿を見た。
「……どうしたの?ロザリー。」
「いえ、仲睦まじいな…と。」
「陛下とオリーブ様といい、王太子夫妻といい、仲が良いのはいいことだけれど、甘々すぎて目の毒よね。」
日の当たる中庭で、長女と次男に囲まれて、夫である陛下は妻であるオリーブを壊れもののように扱い、微笑を交わす。
大事そうにお腹を撫でて、幸せいっぱいな様子で。
手元にあるバスケットは編み物?
生まれてくる我が子のために新しくお包みでも作っているのだろうか。
「――――あんな顔、私にしてくれたことはなかったのに…。」
「え?ロザリー。何か言った?」
「いいえ、何も。」
陛下に近寄ろうにも、陛下にはなにか特別な力があるのか、ある一定距離まで近寄った瞬間、気配を察知され、拒絶される。
それは、『シルキィ』がまだカブキと結婚する前もそうだった。
どうしてそれほど王妃になりたいのか。
自分の血を王族に入れたいのか。
今となっては理由が分からない。
ライバル視していたヘリオス公爵家を出し抜きたかったのか。
たぶん違う。
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