何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

話題のデキるお妃様

最近は体調が良い。

そして、嬉しい。

あんまりたくさん仕事はできないけれど、できる分だけ仕事をしている。

それは、困っている方へのいたわりの手紙だったり、慈善事業がほとんどなのだけど。
この国は他の国と比べて安定しているけれども、それでも、貧しい人たちはいる。

俺の実家が貧乏伯爵家だったけど、その貧乏とはわけが違う。
平民の貧乏は、本当に食べることが出来ない。

各地の協会や修道院に食料品や布や糸、針等を送っている。
お金を送ってはいけない。
安易にお金を送ってしまうと、ダメになる人間もいるから。

食糧や最低限の寝床があれば、人はなんとか生きていける。
病気は、定期的に国がお金を出して巡回医を派遣している。

きちんとした資格を持つ人で、できればその土地の町医者さんに医療費分のお金を国が負担するようにした。

そして、針と糸や布を送れば、自分で衣類を作ることもできるし、何か作って商売にすることもできる。

腕力がある人なら日雇いで力仕事も出来るし、冒険者にもなれる。
頭が良い人は商会で雇用する。
体力がない人や子育てなどであまり時間がない人には針仕事がおすすめだと思う。
あとは、やっぱり教育だなぁ。

貧乏から抜け出すのは大変なんだよ。

働く場所、受け皿も―――――。



「ジェニー。入るよ。休憩しよう。」

隣の部屋からフォールがノックをしてやってくる。


「ジェニーはお年寄りのための政策と子どものための政策、どちらが重要だと思う？」

「議会でもめてる？」

「どっちも大事だとは思うけど、お金は有限だからね。お年寄りになると働けないだろう？子どもや家族がいればいいけど、必ずしもあてにならないし。ある貴族は、今まで国に貢献してくれた人には国が生活を面倒見るべきだというんだ。」

「それってお年寄りに限った話じゃなくない？怪我をして働けなくなる人もいるし…。貴族は自分たちで財があるから気にしなくていいと思うし、何かしらの軽い仕事の提供と引き換えのお小遣いの方がいいと思うけどな。何にもしないと、人間腐っちゃうよ。趣味の延長線上でもいいからさ。指導者、でもいいと思うし…。子どもは国の宝だよ。国を支える人財が先細るのはよくないから、皆が安心して子どもを産んで育てられる社会が良いと思うな。ああ、でも困っているお年寄りもいるのかなぁ。みんながみんな働けるわけでも財があるわけでもないしねぇ。それに子どもがいない人や子どもが要らない人もいるからなぁ。難しいなあ。」

「色々な立場な人もいる、いろんな意見もある、皆を100％満足させることはできないさ。だいたい平均80点が理想だよ。ありがとう、参考になった。」

「ブレインに聞けばいいのに。」

「ブレインにも聞いた。ジェニーは頭が柔らかいから、柵なく発言してくれるだろう？それがいいんだ。」


頼りにしてもらえるの、嬉しいなあ。


「お待たせしました～。」

クロールが持ってきてくれたのはハーブティー。
赤ちゃんがお腹にいる人は、ノンカフェインじゃなきゃだめなんだって。


「いい香り。ありがとう。」

「今日のお茶請けはほうれん草を練りこんだマフィンです。どうぞ。」


「安定期に入ったら、国民に公表するから貴族を呼んでパーティをすることになっているんだが、体調を見て日取りは考えよう。ジェニーやお母さまは少しだけのお出ましで大丈夫だから。」

「ありがとう。なんかドキドキする。」


フォールはまた俺の色の真っ黒なスーツかな。
俺の衣装はまたフォールが選んでくれるのかな。

いまだにちょっと高い服を買うのは躊躇する。