何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

竜鳴躍

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旅のご老公さま

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「俺………いやだ、ミルキィがジパンクに連れていかれちゃったら……!」

まだジパンクから来た人は諦めていないらしい。

「ジェニー…。」

「ミルキィたちが向こうに行かなくてもいいように、俺たちが後押ししてあげられることってないの!?力ずくで守ることはできるけど、それじゃあ意味がないでしょ?どうやったら国際問題にならずにしっかりお断りできるの?」


実はほんのちょっと……。

ジェニーとミルキィが仲良しすぎて、異国に行ってくれたらいいな、幸せではないかもしれないが不幸せにはならないだろうし…とか思ってしまっていた自分を恥じたい。

私はなんてクズ太子なんだ。


瞳を潤ませて友を思っている愛しい人が、私を頼りにしている!
うぉぉぉ、やってみよう!

煮え切らないお父様よりは、こういう時はお母様だ!


「お母様!」

ピクルスの教育をしている最中だが、部屋に入る。



「静かに!」

お母様は一睨みしたが、相談すると快く乗ってくれた。


「こういう時は大元との交渉が必要だ。そこで、社交歴がモノを言う。ジュース様、カーラ様。確か、お二人はジパンクの上皇夫妻と交流がありましたよね。」

「フェ?」

子どもたちの部屋で孫娘とお茶をしていた二人がお母様を見る。

「ええけどのぅ。時間もないし、ワシ、まだぎっくり腰よくなってないんよ。」

「大丈夫です、私だってそれほど鬼嫁じゃないですよ。ジェニー、フォール、あとヴァイオレットがいればどうにかなるか。」


お母様。カッコいいです。
………お願いだからジェニーのハートをこれ以上もっていかないでほしい…。








「と、いうわけで旅のご老公ですよ。」

突然現れた前王夫妻にビューテ侯爵家が恐縮するが、どこが抜けたような空気が漂う。


「あのねェ、ジョーくん。君ね、もう、カブキ君とミルキィ君連れてこなくていいって。」

「え、だ、だって上皇様の命令で…。」

「幸せに暮らしてるんだったらいいって~。よかったねェ、若いお二人さん。」

「ほらほら、その上皇さまのお手紙よぉ、本物だって、貴方なら分かるでしょ~?(全く国家機密のいざっていうときの虎の巻、転移門を起動させちゃうんだからねぇ。びっくりしちゃったわよ。)」

ぴらっと巻物を渡せば、さっと紐解く。


「えっ……肩身狭く不幸せな生活を送っていると思っていたので、連れ戻そうと思ったが、幸せならいい?たまには遊びに来てほしい?は????それじゃあ、だれが、だれが王位にっ??はぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!私ぃ!!!」


「ヨカッタジャン、ジョー。オウサマ、ガンバッテネ。」

カブキがジョーに親指を立てた。

「いや、ちょ、ちょ、まってください。私はそんな器では」


「それ言っちゃったらボクだって器じゃないし!」
トニーの腕の中だから、ミルキィは元気だ。


「確かにお前は抜けてるし、猪突猛進でシノビとしては三流もいいとこだし、だけど真贋を見極める目だけは持っているだろう?王様は完璧じゃなくてもいい。支えてくれる人を見つけ、厳しい意見も聞ければいいんだよ。」

カブキはにっこり笑って。


そして、ジョーは強制送還に近い形でアルティメット王国を出港することになる。


「あぁ、よかった♡トニー様だけだよ♡ボクが愛してるのは♡早くトニー様のものになりたい♡」
「結婚式はいつしようか。すぐしたいけど、やっぱり綺麗な花嫁姿がみたいから、すぐにはできないな♡」


ミルキィの春は咲き誇る。
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