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嫌われなくてよかった

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「アクオス公爵を継いでいるの?」

「う、うん…。でも、公爵って言っても後継者教育も受けてこなかったし、何にもしてなくて恥ずかしいんだけど…。親戚はお母様が怖かったのか悪名が嫌なのか誰も成り手はいないし、ボクしかいないし。そんなかんじ?で拝命されただけだと思うし…。ぜんぜん、ボクなんて…。」

「前公爵はミルキィちゃんを王妃にしたがってたから、2人目とかを後継にするつもりだったのかしらね。ほら、ヘリウス公爵家がその予定じゃない?それで、その道が無理だったから今度は優秀な入り婿をとるつもりだったのね。かわいそうに、親の野望のために…。大変だったわね、ミルキィちゃん。家出して当たり前よ。でもどんなお母さんでも亡くなって残念だったわね…。」

うわぁぁあん、お義母さまあ!


「ちょっと待って。と、いうことはトニーがミルキィちゃんと結婚したら、アクオス公爵家と縁続きになれるってこと?」

ちゃっかりしてる長男が頭の中でそろばんを弾く。

「向こうも薬草の産地だよな。水も綺麗で、よく植物が育つ。向こうは森というより草原だけど。だいぶ被ってたんだよね。でも、これからはお互いに競合せずに土地にあったものを育てられる!競り合うんじゃなく、協力し合えるじゃないか!」

「そうか!俺とミルキィは愛し合ってるけど、それだけじゃなくてこんなメリットが!」


やったーやったーとトニー様が抱きしめてくれる。


「うわぁぁああぁん!」

「どうした、ミルキィ。おなかが痛いのか!それともアクオス公爵家の話をしちゃったからお母さんに虐められたのを思い出しちゃったのか!?」


「トニーさま、ちがうの。みんなが変わらず接してくれてうれしいの。ボクとトニー様とのこと、許してくれてるのが嬉しいのぉ…。」



―――――怪しい気配!



「不審者ぁ!!!!」

「ひぃ!」

お父様の槍とケニー様のナイフとトニー様の弓とボクのクナイが壁に突き刺さる。

普通の壁のように見えたそこが歪み、黒髪の怪しい美青年が現れた。



「や、やっと会えたミルキィさま。私はジパンクのジョー=ルリ公爵。貴方様のお父様、カブキ=エド=ジパンク様の従弟でジパンクの外交官を務めている者です。怪しい者ではありません。話だけでもどうか聞いていただきたい!」


「ボクの…おじさん…?」

なんだよ、今いいとこだったのに!


「貴方様をジパンクの王位継承者としてお迎えにあがりました。」


な、なんだって――――――――!!?
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