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お城からお引越しします☆
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今日はお城からお引越し!
お父様も一緒でいいって言ってくれたけど、お父様はお城でお仕事があるから行くのはボクだけ…。
だけど、ビューテ侯爵家の領地は馬車とか馬で30分の距離でそんなに遠くないから、気軽。
学園にも実家から馬で通ってたらしいし…。
「えっと、これと、あれと…。」
「ミルキィ、これも持って行ってよ。ミルキィが気に入ってたクリームと化粧水。」
「え~、いいのぉ!」
「うん。トニーお兄様が化粧品事業を展開するなら、お城が使っているものも知ってた方が良いと思うし、そんなにすぐに完成しないと思うから。多めにいれとくね。」
「ありがとー。でも重くないかなぁ。」
「大丈夫だよ、トニーお兄様はああ見えて力持ちだし、うちの馬は軍馬に使うような馬だから。」
「やぁ、よく来てくれた。ミルキィはここだ。」
なんだか朗らかな殿下の声が聞こえる。トニーお兄様を連れてきたのだ。
クズ太子はミルキィが侯爵家に移り住むのが心底嬉しいらしい。
シルキィはとっくに毒杯を賜っていなくなり、公爵位をミルキィに与えたはいいものの、よほどいい思い出がないのかミルキィは領地に帰ろうとしなかったのだ。
なので、父親であるカブキは、当主代理として現在領地経営を見直しつつ、屋敷の改修をしているところなのである。
「迎えに来たよ、ミルキィ。」
「トニー様ぁ!」
(爵位が上のミルキィの方が様付けしているのは変な感じだなあ。トニーお兄様はミルキィが公爵位を継いでいることを知らないんだろうな…きっと。そして、今はまだミルキィも教えたくないんだろう。)
確かに、お兄様は委縮しちゃうだろうからなー…。
余計なことをいうなよ?と夕べのうちに殿下を脅しておいた。
「ははは、寂しくなるなぁ!」
「ふふふ、ご安心ください。遊びに来ますので!」
「トニー、ミルキィを、しっっっっっかり守ってやってくれ。都会よりそちらの方がミルキィも伸び伸びできるだろう!」
「そうですね。うちは王都の裏山ですけど、人より動物の方が多いくらいですので、悪い噂も伝わりません。それに、噂より目で見た者を信じる質なので、きっとすぐに領民とも打ち解けるでしょう。全く、こんなに素直で可愛らしい人を悪女よばわりするなんて、都会は怖いところですね。」
「トニー様っ。」
ミルキィは目を潤ませる。
連れ立って、ミルキィはお城を出て行った。
「カブキ。」
殿下の声で、しゅたっと天井からミルキィのお父様が降りてくる。
「これで、よかったんだな。」
「はい、丁度いいタイミングでした。助かりましたよ。ミルキィはあまり関わらせたくない…、せっかく幸せになれるところなのに。」
2人とも神妙な表情だ。
「一体何があったの?ミルキィは俺の友達だよ。聞いていいことなら、俺も知りたい。力になれるかもしれないし。」
「うちの国がカブキ様の身柄を保護していただろう?その関係で結婚式にジパンクからも参列者がいたんだ。」
「向こうの公爵で、私の従弟になります。昔は私の側近をしていた男で、名をジョー=ルリ。」
………カブキ様のところに、その男が訪れたらしい。
カブキ様は元々ジパンクの王太子だった。
婚約者がいながら不貞を犯したことで死罪となり、秘密裏でアクオス公爵家に種馬として買われ、アルティメット王国へ来た。
実はそれは冤罪だったが、そういう隙を作ってしまった自分の責任だと感じていたカブキ様は罪を受け入れていた。
王位には弟が継ぎ、婚約者だった女性は弟と結婚して妃になった。
ところが、その事は丸々、王位を得んとする弟とその弟とねんごろになっていた元婚約者が仕組んでいたことだったことが、ついに明らかとなり、カブキ様は王族籍に復帰することになったのだという。
「身の潔白が証明され、王族籍に復帰するのだから嬉しいだろうと勝手に考えたようです。あれから何年経っていると思っているのか…。向こうでは私が生きていたことを喜んでいるようです。しかも、他国の筆頭公爵家の女性の婿になり、息子がいるのですから。弟夫婦には子が出来なかったようですので。」
「それって…つまり…。」
「ええ、ジョー=ルリは私とミルキィを迎えに来たのです。」
「陛下たちにも話があった。そして、本人の意向を優先することにした。カブキ様は優秀な方だから、手放したくはないが、一方的に断るわけにもいかないだろう。」
「向こうの王族になれば、ミルキィは王太子です。せっかく、自分の意思で恋をしたのに…。トニー様と結ばれることができなくなります。私は、この話を断ります!」
「カブキ様はそれでいいのですか?」
「もちろんです。郷愁がないと言えば噓になりますが、死罪になった時に私は死んだのです。今更、王位に未練はありません。それに、弟が王位を継いだことで分かったのです。自分でなければ国を守れないというのは違います。民が国なのです。王様はただの旗振り役。民さえいれば国は成る。自分が王である必要はありません。」
薬草事業はいずれビューテ侯爵家の独壇場になるだろうから、今は少しずつ領地の新たな特産品開発を行っている。自分が直接、領地のことを考えられるのが楽しいのだと、カブキ様に未練はないようだ。
―――――――ミルキィ。
この話が伝わる前に、お兄様のハートをがっちりキャッチするんだよ!
お父様も一緒でいいって言ってくれたけど、お父様はお城でお仕事があるから行くのはボクだけ…。
だけど、ビューテ侯爵家の領地は馬車とか馬で30分の距離でそんなに遠くないから、気軽。
学園にも実家から馬で通ってたらしいし…。
「えっと、これと、あれと…。」
「ミルキィ、これも持って行ってよ。ミルキィが気に入ってたクリームと化粧水。」
「え~、いいのぉ!」
「うん。トニーお兄様が化粧品事業を展開するなら、お城が使っているものも知ってた方が良いと思うし、そんなにすぐに完成しないと思うから。多めにいれとくね。」
「ありがとー。でも重くないかなぁ。」
「大丈夫だよ、トニーお兄様はああ見えて力持ちだし、うちの馬は軍馬に使うような馬だから。」
「やぁ、よく来てくれた。ミルキィはここだ。」
なんだか朗らかな殿下の声が聞こえる。トニーお兄様を連れてきたのだ。
クズ太子はミルキィが侯爵家に移り住むのが心底嬉しいらしい。
シルキィはとっくに毒杯を賜っていなくなり、公爵位をミルキィに与えたはいいものの、よほどいい思い出がないのかミルキィは領地に帰ろうとしなかったのだ。
なので、父親であるカブキは、当主代理として現在領地経営を見直しつつ、屋敷の改修をしているところなのである。
「迎えに来たよ、ミルキィ。」
「トニー様ぁ!」
(爵位が上のミルキィの方が様付けしているのは変な感じだなあ。トニーお兄様はミルキィが公爵位を継いでいることを知らないんだろうな…きっと。そして、今はまだミルキィも教えたくないんだろう。)
確かに、お兄様は委縮しちゃうだろうからなー…。
余計なことをいうなよ?と夕べのうちに殿下を脅しておいた。
「ははは、寂しくなるなぁ!」
「ふふふ、ご安心ください。遊びに来ますので!」
「トニー、ミルキィを、しっっっっっかり守ってやってくれ。都会よりそちらの方がミルキィも伸び伸びできるだろう!」
「そうですね。うちは王都の裏山ですけど、人より動物の方が多いくらいですので、悪い噂も伝わりません。それに、噂より目で見た者を信じる質なので、きっとすぐに領民とも打ち解けるでしょう。全く、こんなに素直で可愛らしい人を悪女よばわりするなんて、都会は怖いところですね。」
「トニー様っ。」
ミルキィは目を潤ませる。
連れ立って、ミルキィはお城を出て行った。
「カブキ。」
殿下の声で、しゅたっと天井からミルキィのお父様が降りてくる。
「これで、よかったんだな。」
「はい、丁度いいタイミングでした。助かりましたよ。ミルキィはあまり関わらせたくない…、せっかく幸せになれるところなのに。」
2人とも神妙な表情だ。
「一体何があったの?ミルキィは俺の友達だよ。聞いていいことなら、俺も知りたい。力になれるかもしれないし。」
「うちの国がカブキ様の身柄を保護していただろう?その関係で結婚式にジパンクからも参列者がいたんだ。」
「向こうの公爵で、私の従弟になります。昔は私の側近をしていた男で、名をジョー=ルリ。」
………カブキ様のところに、その男が訪れたらしい。
カブキ様は元々ジパンクの王太子だった。
婚約者がいながら不貞を犯したことで死罪となり、秘密裏でアクオス公爵家に種馬として買われ、アルティメット王国へ来た。
実はそれは冤罪だったが、そういう隙を作ってしまった自分の責任だと感じていたカブキ様は罪を受け入れていた。
王位には弟が継ぎ、婚約者だった女性は弟と結婚して妃になった。
ところが、その事は丸々、王位を得んとする弟とその弟とねんごろになっていた元婚約者が仕組んでいたことだったことが、ついに明らかとなり、カブキ様は王族籍に復帰することになったのだという。
「身の潔白が証明され、王族籍に復帰するのだから嬉しいだろうと勝手に考えたようです。あれから何年経っていると思っているのか…。向こうでは私が生きていたことを喜んでいるようです。しかも、他国の筆頭公爵家の女性の婿になり、息子がいるのですから。弟夫婦には子が出来なかったようですので。」
「それって…つまり…。」
「ええ、ジョー=ルリは私とミルキィを迎えに来たのです。」
「陛下たちにも話があった。そして、本人の意向を優先することにした。カブキ様は優秀な方だから、手放したくはないが、一方的に断るわけにもいかないだろう。」
「向こうの王族になれば、ミルキィは王太子です。せっかく、自分の意思で恋をしたのに…。トニー様と結ばれることができなくなります。私は、この話を断ります!」
「カブキ様はそれでいいのですか?」
「もちろんです。郷愁がないと言えば噓になりますが、死罪になった時に私は死んだのです。今更、王位に未練はありません。それに、弟が王位を継いだことで分かったのです。自分でなければ国を守れないというのは違います。民が国なのです。王様はただの旗振り役。民さえいれば国は成る。自分が王である必要はありません。」
薬草事業はいずれビューテ侯爵家の独壇場になるだろうから、今は少しずつ領地の新たな特産品開発を行っている。自分が直接、領地のことを考えられるのが楽しいのだと、カブキ様に未練はないようだ。
―――――――ミルキィ。
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