何者かになりたかった、だが王子の嫁になりたかったわけじゃない。

トニーお兄様とミルキィ

「あ、あの。トニー様って、あのトニー様ですよね。僕が１年の時の３年で、３年間ずっと全教科学年１位だった、文武両道の！」

「ジェニーと仲良くしてくれてありがとうございます。」


うはぁぁ！

殿下の婚約者にならなきゃって思ってたから、他の男なんて全然見てなかったけど、それでもちょっと気になってたトニー様だぁ！


「い、今はどうしてるんですか！」

「実家で新しい薬の開発をしているんですよ。最近は化粧品も作ってみようかなぁって。」


「化粧品！」


「モニターになってくれますか？」



「い、いいけど！」






この子、悪女みたいに言われているけど、表情がくるくる変わって可愛らしい子だなあ。

根が素直なんだな。

トニーは微笑ましくなった。


だからつい、頭を。ぽんぽん、してしまった。


そうしたら。


顔をかあああああっと真っ赤に染めた彼が可愛らしくて。


確か家を出たと聞いた。

公爵家だと遠慮しちゃうけど、家を出て平民になったのなら、俺が声をかけてもいいのだろうか。

俺は次男だし、仕事はあるけど平民も同じだし。

ああ、でもお父様が侯爵位を貰ったから、元の伯爵位はもらえるのかな？


「今、家出してお城に住んでるんでしたっけ。」


「え、あ、はい。」

「あの、公爵家と比べたら手狭ですけど…。よろしかったらうちにきませんか。」


「え！は、はい！喜んで！！」