18 / 66
結婚式の準備
しおりを挟む
「………んっ。」
朝の白い光がさして、柔らかなカーテンが透ける。
遠くで小鳥の囀りが聞こえた気がして、瞼を開ければ、目の前にははちみつ色の髪の夫が菫色の瞳でこちらを見ている。
毎朝のことで、もう驚きはしないけれど。
成り行きではあるけれど体の関係が先で、『妃』になったのはあっという間。
陛下も王妃も嫁として扱ってくださっているし、城の人たちも周りの貴族もそうだけれど、きちんとした儀式は終わっていないのだから、自分の立場というものにふわふわと気持ち悪さは感じる。
視線が合うと、ふにゃりと彼は笑った。
「おはよう、ジェニー。」
そういって彼は自分を軽く抱き寄せると、ちゅっと口づける。
「殿下、いい加減にしてください。さあ、今日は出入りの業者が来るんですから!式の準備ですよ!」
起こしに来たクロールにぽいっと殿下は追い出されて、湯あみをし、着心地の良いシャツにトラウザーズを履いて支度をすれば、向こうも同じような姿に整えられていた。
朝食はエッグベネディクトにマフィン、サラダ、スープ。
朝からこんなふうに手の込んだ美味しい料理が食べられるなんて感謝しかない。
しかもデザートに果物まである。
侯爵に上がったけれど、自分がいたときのビューテ伯爵家はとても貧乏だったから、使用人も必要最小限しか雇えなくて、昔からいる家令の家族が面倒を見てくれていた。
だから、自分の身の回りのことはもちろん、庭の手入れや馬の世話、時には料理だって自分でやることもあった。
今頃どうしてるのかなあ。
もう貧乏じゃなくなったみたいだから、使用人も増えたのかな。
跡継ぎのケニーお兄様でさえお嫁さんがなかなか決まらなかったけど、決まったのだろうか。
これも俺が妃になったからだと考えれば、家のために役に立てたということ。
「また、何か考えている?」
殿下に言われて、はっとなった。
「今日は執務はお休みだよ。昨日でいっぱい終わらせちゃったからね。業者が来るまで時間があるから、もしよかったら朝食の後、軽く散歩でもしない?」
散歩の先はお城のお庭。
王族しか入れないプライベートガーデン。
遠くからマックス達が見守ってくれている。
手を繋いで。
指先を繋いで。
しっかり結ぶ。
「あのね、ジェニー。私は本当に君を愛しているんだよ。君じゃなかったら要らないくらい。ジェニーはとっても凄い。素晴らしい人だ。私には本当は勿体ないくらい。」
俺の好きな小ぶりの薔薇を棘をとって渡される。
応接間に向かうと、丁度業者が来ていて、それはもう色んなデザイン画や宝石の見本が広げられた。
「どういうのが着てみたい?」
うーん。よくわからない。
お任せします、と。ただそれだけ答えたけれど、殿下は寂しそうだった。
朝の白い光がさして、柔らかなカーテンが透ける。
遠くで小鳥の囀りが聞こえた気がして、瞼を開ければ、目の前にははちみつ色の髪の夫が菫色の瞳でこちらを見ている。
毎朝のことで、もう驚きはしないけれど。
成り行きではあるけれど体の関係が先で、『妃』になったのはあっという間。
陛下も王妃も嫁として扱ってくださっているし、城の人たちも周りの貴族もそうだけれど、きちんとした儀式は終わっていないのだから、自分の立場というものにふわふわと気持ち悪さは感じる。
視線が合うと、ふにゃりと彼は笑った。
「おはよう、ジェニー。」
そういって彼は自分を軽く抱き寄せると、ちゅっと口づける。
「殿下、いい加減にしてください。さあ、今日は出入りの業者が来るんですから!式の準備ですよ!」
起こしに来たクロールにぽいっと殿下は追い出されて、湯あみをし、着心地の良いシャツにトラウザーズを履いて支度をすれば、向こうも同じような姿に整えられていた。
朝食はエッグベネディクトにマフィン、サラダ、スープ。
朝からこんなふうに手の込んだ美味しい料理が食べられるなんて感謝しかない。
しかもデザートに果物まである。
侯爵に上がったけれど、自分がいたときのビューテ伯爵家はとても貧乏だったから、使用人も必要最小限しか雇えなくて、昔からいる家令の家族が面倒を見てくれていた。
だから、自分の身の回りのことはもちろん、庭の手入れや馬の世話、時には料理だって自分でやることもあった。
今頃どうしてるのかなあ。
もう貧乏じゃなくなったみたいだから、使用人も増えたのかな。
跡継ぎのケニーお兄様でさえお嫁さんがなかなか決まらなかったけど、決まったのだろうか。
これも俺が妃になったからだと考えれば、家のために役に立てたということ。
「また、何か考えている?」
殿下に言われて、はっとなった。
「今日は執務はお休みだよ。昨日でいっぱい終わらせちゃったからね。業者が来るまで時間があるから、もしよかったら朝食の後、軽く散歩でもしない?」
散歩の先はお城のお庭。
王族しか入れないプライベートガーデン。
遠くからマックス達が見守ってくれている。
手を繋いで。
指先を繋いで。
しっかり結ぶ。
「あのね、ジェニー。私は本当に君を愛しているんだよ。君じゃなかったら要らないくらい。ジェニーはとっても凄い。素晴らしい人だ。私には本当は勿体ないくらい。」
俺の好きな小ぶりの薔薇を棘をとって渡される。
応接間に向かうと、丁度業者が来ていて、それはもう色んなデザイン画や宝石の見本が広げられた。
「どういうのが着てみたい?」
うーん。よくわからない。
お任せします、と。ただそれだけ答えたけれど、殿下は寂しそうだった。
56
お気に入りに追加
2,021
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる